- 原題
- Macbeth
- 発表
- 1606年頃
- 初出
- 1623年の第1二折版(ファースト・フォリオ)に初めて収録
- 形式・長さ
- 戯曲・中編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- ヨーロッパの文学
戦に勝って帰る途中の将軍マクベスが、荒野で3人の魔女からいずれ王になると予言されます。野心をかき立てられた彼は、妻にけしかけられて主君である王を手にかけます。罪を重ねるほど眠れなくなっていく夫婦を描いた、四大悲劇でいちばん短い作品です。
こんな人に
- 一度踏み外した人が後戻りできなくなる話に引き込まれる人に
- 魔女や亡霊が出てくる、暗く不穏な物語が好きな人に
- 長い戯曲は苦手で、一気に読める悲劇から始めたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
スコットランドは反乱軍とノルウェー軍を相手に戦い、大勝利を収めます。戦功を挙げた将軍マクベスは、友人の将軍バンクォーとともに陣営へ戻る途中、荒野で3人の魔女に出会います。
魔女たちはマクベスを、まだ与えられていないコーダーの領主の名で呼び、いずれ王になる人だとたたえます。バンクォーには、王にはなれないが子孫が王になると告げて姿を消します。直後に王の使者が現れ、マクベスが新たにコーダーの領主に任じられたと伝えます。
予言の一つが本当になったことで、マクベスの胸に王位への野心が芽生えます。ところがダンカン王は、自分の長男マルカムを王位の継承者に定めます。夫からの手紙で予言を知ったマクベス夫人は、夫を王にするための計画を練り始めます。その夜、何も知らないダンカン王の一行が、マクベスの城を訪れます。
主な登場人物
- マクベス
- グラミスの領主で、スコットランドの将軍。勇猛だが小心な一面もある。
- マクベス夫人
- マクベスの妻。夫以上の野心と実行力を持ち、ためらう夫を叱りつける。
- ダンカン
- スコットランド王。戦功を挙げたマクベスを重く用いている。
- バンクォー
- マクベスの友人の将軍。魔女から、子孫が王になると予言される。
- マクダフ
- ファイフの領主で、スコットランドの有力な貴族。物語の後半で重要になる。
- マルカム
- ダンカン王の長男。王位の継承者に定められる。
- 3人の魔女
- 荒野に現れ、マクベスとバンクォーの将来について謎めいた予言をする。
見どころ・おもしろいところ
魔女の乱舞で幕が開く
劇は、3人の魔女が踊る場面から始まります。魔女たちが口にするきれいと汚いが入れ替わるような言葉は、この劇の展開を暗示しています。何が本当で何が見せかけなのかという問いが、最後まで続きます。
夫を動かすマクベス夫人
王を殺すと決めながら、マクベスは罪の意識に何度もためらいます。そのたびに夫を叱りつけ、奮い立たせるのが妻です。夫よりも強い野心を持つ妻という人物像は、この劇でいちばん強い印象を残す存在の一つです。
目に見えるはずのないもの
決行の夜、マクベスは宙に浮かぶ血まみれの短剣を見ます。こうした幻や亡霊がたびたび現れ、追い詰められていく人物の心の中が、舞台の上の光景として描かれます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
貴族の名前は表で確かめる
戯曲はせりふだけで進むうえ、レノックス、ロス、アンガスなど似た立場のスコットランド貴族が何人も出てきます。登場人物表を手元に置き、王家・マクベス夫妻・バンクォー親子・マクダフの家の四つを押さえておけば十分です。
場面は速く切り替わる
全体は2,477行と短く、場面が次々に移ります。説明が省かれているように感じる箇所もありますが、それは作品の性質で、読み手の理解不足ではありません。迷ったら幕の頭に戻って、誰がどこにいるかを確かめてください。
予言の言葉をよく読む
第4幕で魔女たちは、マクベスにさらにいくつかの予言を与えます。どれも一見はっきりしているようで、言い回しにひっかかりがあるものばかりです。予言の言葉をメモしておくと、終盤の展開を自分で確かめながら読めます。
新しい国王のための悲劇
『マクベス』は1606年ごろに書かれたと考えられています。1603年にスコットランド王ジェームズ6世がイングランド王位を継いだことが、作品に大きく影響しています。ステュアート家はバンクォーを祖先と考えていたため、バンクォーの子孫が王になるという予言には、時の王への目配りが込められています。
筋の多くは、ホリンシェッドの『年代記』から取られました。ダンカン殺しの場面は、野心家の妻にそそのかされて王を殺した男の別の逸話をもとにしているなど、史実から自由に作り変えられています。
改作の時代から原作の上演へ
現存する最古の上演記録は、1611年にグローブ座で観劇した占星術師サイモン・フォアマンによるものです。17世紀にはダヴェナントが歌と踊りを取り入れた改作を上演し、日記作家ピープスはそれを、これまで見た中で最高の舞台だと書き残しました。
18世紀のギャリックも原作の復活を掲げながら、歌や踊りを交えて上演しています。シェイクスピアの書いた形のまま上演されるようになったのは19世紀以降のことです。のちにはヴェルディのオペラなど、さまざまな形に翻案されています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
マクベスはダンカン王を殺し、従者に罪を着せて王位に就きます。予言を恐れてバンクォーを暗殺させますが、息子フリーアンスは逃げ延び、宴の席にはバンクォーの亡霊が現れます。魔女たちから、女から生まれた者には倒されず、バーナムの森が攻めて来ないかぎり安泰だと告げられたマクベスは安心しますが、イングランドへ逃れたマクダフの妻子を殺させ、暴政で国を荒らしていきます。
マクベス夫人は夢遊病にかかり、手を洗うしぐさを繰り返したすえに亡くなります。木の枝を隠れみのにしたイングランド軍が近づくと、森が動いているように見えました。最後の戦いに出たマクベスは、月足らずで母の腹を裂いて取り出されたと明かすマクダフに討たれ、マルカムが王となります。
よくある疑問
- 『マクベス』はどんな話?
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魔女の予言に野心をかき立てられた将軍マクベスが、妻と共謀して王を殺して王位を奪い、罪の重さに追い詰められていく話です。四大悲劇の一つです。
- マクベスは実在の人物?
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11世紀のスコットランド王マクベスがモデルです。実際のマクベスは17年間王位にあり、劇に描かれたような暴君ではなかったとされています。
- どのくらいの長さ?
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全5幕で2,477行の戯曲です。シェイクスピアの作品の中でも3番目に短く、およそ4000行ある『ハムレット』と比べると、その短さがよくわかります。
- シェイクスピア以外の人も書いている?
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魔女たちを支配する女神ヘカテが出てくる場面は、劇作家トマス・ミドルトンらによる加筆だとする見方が定説になっています。第3幕第5場の全部と、第4幕第1場の10行ほどがそれにあたるとされています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
