- 原題
- Die Leiden des jungen Werthers
- 発表
- 1774年(1787年に改訂版)
- 初出
- 1774年9月に刊行。初版は作者名を伏せて出された
- 形式・長さ
- 小説・中編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- ヨーロッパの文学
感じやすい青年ウェルテルが、婚約者のいる女性シャルロッテに恋をし、かなわない思いに苦しんでいきます。物語は、ほとんどがウェルテルから友人に宛てた手紙だけでできています。刊行と同時にヨーロッパ中で読まれ、若者たちが主人公の服装をまねるほどの騒ぎを起こしました。
こんな人に
- 報われない恋の苦しさを知っている人に
- 誰かの日記や手紙をのぞき見るような小説が好きな人に
- 人の気持ちが少しずつ追い詰められていく心理劇を読みたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
物語は、青年ウェルテルが友人ヴィルヘルムに宛てた手紙で進みます。新しい土地にやってきたウェルテルは、美しい風景や素朴な村人たちに心を奪われ、気に入った料亭でホメロスを読みふける日々を送っています。
ある日、郊外の舞踏会に出かけたウェルテルは、老法官の娘シャルロッテと出会います。母を亡くした彼女は、幼い弟や妹たちの母親代わりをしています。ウェルテルは、彼女に婚約者がいると知りながら、その美しさと豊かな感性に我を忘れるほど惹かれていきます。
それからウェルテルはたびたびシャルロッテのもとを訪れ、子どもたちにもなつかれます。けれども、婚約者アルベルトが町に戻ってくると、幸せな日々にかげりが差し始めます。ウェルテルはアルベルトとも親しく付き合おうとしますが、そのぶん苦しみは深まっていきます。
主な登場人物
- ウェルテル
- 感受性の強い青年。手紙の書き手で、物語はほぼすべて彼の目を通して語られる。
- シャルロッテ
- 老法官の娘。亡き母に代わって弟や妹の面倒を見ている。婚約者がいる。
- アルベルト
- シャルロッテの婚約者。彼女より11歳年上で、落ち着いた人物。
- ヴィルヘルム
- ウェルテルの友人で、手紙の宛先。作中に返事は出てこない。
- 老法官
- シャルロッテの父。妻を亡くし、大勢の子どもたちと暮らしている。
見どころ・おもしろいところ
手紙だけで描かれる心
読者が読むのは、ウェルテルが友人に書いた手紙です。相手の返事は載っていないので、読者は彼の言葉だけを頼りに出来事を追うことになります。喜びも苛立ちも書いたそのままの調子で届き、彼の心の揺れがじかに伝わってきます。
途中から現れる編集者
第2部の半ばからは、手紙を集めた「編集者」による説明が差し挟まれます。ウェルテルの目の届かない場面、たとえばシャルロッテやまわりの人々の様子が、ここで初めて語られます。語り方が変わること自体が、物語の転換を告げています。
自然と書物に重ねる気持ち
ウェルテルは手紙の中で、土地の風景のすばらしさや村人たちの素朴さを熱心に書きつけ、愛読するホメロスの世界にも浸ります。前半の明るい手紙と後半の手紙の調子を比べると、彼の内面の変化がはっきり見えてきます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
二部構成を頭に入れる
第1部はシャルロッテと出会ってから町を去るまで、第2部は新しい土地での暮らしと、その後の出来事です。第1部と第2部でウェルテルの居場所が変わることを意識しておくと、話の流れを見失いません。
主人公に共感できなくてもいい
ウェルテルは感情の起伏が激しく、手紙には悲観的な言葉や思い込みの強い言葉も並びます。共感しきれなくても、一人の青年の手紙を外から読むつもりで距離を置くと、かえって作品の仕組みが見えてきます。
失恋から生まれた小説
1772年、法律を学ぶためにヴェッツラーへ移ったゲーテは、舞踏会でシャルロッテ・ブッフと出会い、恋に落ちました。しかし彼女は友人ケストナーの婚約者で、ゲーテは思いを遂げられないまま、誰にも告げずに故郷のフランクフルトへ戻ります。
故郷に戻ってからも、ゲーテは彼女のことを忘れられずに苦しみました。そこへヴェッツラーの友人イェルーザレムをめぐる知らせが届き、ゲーテは友人の身に起きたことと自分の失恋を組み合わせた小説を思いつきます。24歳のゲーテは、この作品を書くことで自らの危機を抜け出したといいます。
ヨーロッパ中の「ウェルテル熱」
作品はすぐに英語やフランス語、イタリア語に訳され、文学史上初の国際的なベストセラーともいわれています。ヨーロッパ中の若者が、作中でウェルテルが着ている青い燕尾服に黄色いチョッキという服装をまね、版画や陶磁器、香水まで作られました。
社会への影響の大きさから、ライプツィヒでは1775年に小説も服装も禁止されています。ナポレオンはこの本をエジプト遠征に持って行き、7度読んだと自ら語りました。マスネのオペラ『ウェルテル』をはじめ、多くの作品がこの小説から生まれています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
苦しさに耐えられなくなったウェルテルは、その土地を去って官職に就きます。しかし同僚たちの形式ばかりの態度になじめず、貴族の集まりで身分の低さを理由に侮辱されたのをきっかけに職を辞めます。各地をさまよったすえにもとの土地へ戻ると、シャルロッテはすでにアルベルトと結婚しており、二人は以前より冷たく彼に接します。
知り合いの作男が、仕えていた未亡人への思いから殺人を犯すと、ウェルテルは自分の姿を重ねて弁護しようとしますが、受け入れられません。シャルロッテに訪問を控えるよう言われたウェルテルは、最後に彼女を訪ねたあと、旅に出るという口実でアルベルトにピストルを借ります。事情を察しながらも、シャルロッテは使いの者にピストルを渡します。その夜、ウェルテルは自ら命を絶ちます。
よくある疑問
- 『若きウェルテルの悩み』はどんな話?
-
婚約者のいる女性シャルロッテに恋をした青年ウェルテルが、かなわない思いに苦しむ話です。ほぼ全編が、彼が友人に宛てた手紙でつづられています。
- 実話がもとになっている?
-
ゲーテ自身の体験がもとになっています。婚約者のいるシャルロッテ・ブッフに恋をした経験と、友人カール・イェルーザレムの身に起きた出来事を組み合わせて書かれました。
- どのくらいの長さ?
-
二部構成の中編小説です。ゲーテは1774年の初めに、1か月あまりで一気に書き上げたとされています。
- 「ウェルテル」と「ヴェルター」は違う作品?
-
同じ作品です。明治時代に紹介されたときの発音にならって「ウェルテル」と書かれてきましたが、現代のドイツ語の発音では「ヴェルター」が近く、訳によって表記が異なります。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
