- 原題
- Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde
- 発表
- 1886年
- 初出
- 1886年1月、ロンドンのロングマンズ社から刊行
- 形式・長さ
- 小説・中編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- ヨーロッパの文学
ロンドンの弁護士アターソンが、友人ジキル博士と、彼の遺産をすべて受け継ぐことになっている不気味な男ハイドの関係を探っていく話です。なぜ立派な紳士が、人に嫌悪をいだかせる男をかばうのか。謎は最後に残された二通の手記で明かされます。
こんな人に
- 人に見せている顔と本当の自分のずれが気になる人に
- 少しずつ謎が深まっていく短めの怪奇小説を読みたい人に
- 題名だけ知っていて、中身をきちんと確かめたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
19世紀のロンドン。弁護士アターソンは、親戚のエンフィールドと日曜の散歩をしている途中、裏通りの古びた建物の前で奇妙な話を聞かされます。数か月前、ハイドという醜悪な男が、ぶつかって転んだ少女を平然と踏みつけて立ち去ろうとしたというのです。詰め寄られたハイドはその建物に入り、償いの小切手を持って出てきました。署名は、名の知れた紳士ヘンリー・ジキル博士のものでした。
アターソンは以前からジキルに頼まれ、ある遺言状を預かっていました。ジキルが死ぬか失踪したときは、全財産をハイドに譲るという内容です。ジキルは脅されているのではないか。そう疑ったアターソンはハイドを待ち伏せしますが、ジキル本人は心配はいらないと言うばかりです。
それから1年ほどたったある夜、ハイドが老紳士を杖で殴り殺すところを、窓から外を見ていたメイドが目撃します。現場に残された折れた杖は、アターソンがかつてジキルに贈ったものでした。
主な登場人物
- アターソン
- ガブリエル・ジョン・アターソン。ジキルの古い友人で弁護士。物語はほぼ彼の目で進む。
- ジキル博士
- ヘンリー・ジキル。50歳ほどの大柄な紳士で、友人も多い。なぜかハイドをかばい続ける。
- ハイド
- エドワード・ハイド。青白く小柄な若い男。会った人は誰もが理由のわからない嫌悪を覚える。
- エンフィールド
- リチャード・エンフィールド。アターソンの親戚。冒頭でハイドの事件を語る。
- ラニョン博士
- ヘイスティー・ラニョン。ジキルとアターソンの古い友人の医師。ジキルの研究を空想的だと退けている。
- プール
- ジキルに長く仕える執事。主人の変わりようを心配し、アターソンを頼る。
- カルー卿
- ダンヴァーズ・カルー卿。年老いた国会議員で、アターソンの依頼人でもある。
見どころ・おもしろいところ
誰も描写できない男
ハイドに会った人は、みな彼を醜いと感じます。ところがエンフィールドは、どこがどう醜いのかを聞かれると言葉に詰まってしまいます。はっきりした姿を見せないまま嫌悪だけを残す男が、読者の想像をかき立てます。
表と裏に入口がある屋敷
冒頭で話題になる裏通りの古びた建物は、ジキルの立派な屋敷の奥にある実験室につながっています。紳士の住む表の顔と、人目につかない裏通りの扉という家の造りが、物語の主題と重なっています。どの扉を誰が使うのかに注意して読むと楽しめます。
開けてはならない手紙
物語の途中で、アターソンはある人物から手紙を託されます。そこにはジキルが死ぬか失踪するまで開けるなという言葉が添えられていました。遺言状と封をされた手紙が、少しずつ緊張を高めていきます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
中心にいるのは弁護士
題名に名前のある二人は、実はあまり表に出てきません。物語は弁護士アターソンの視点で進み、読者も彼と同じだけのことしか知らされません。探偵役の話として読むと、場面のつながりがつかみやすくなります。
最後の二章は手記
終わり近くで、それまでの語りから、ある人物たちが書き残した文書へと切り替わります。アターソンと同じく、ラニョンの手紙、ジキルの手記の順に読むことで、謎が一つずつほどけるように作られています。
夢から生まれ、三日で書き直された
この作品は1885年、スティーヴンソンが療養のために移り住んだイングランド南部の海辺の町ボーンマスで書かれました。本人の随筆によると、筋書きに何日も悩んだあと、物語の場面を夢で見たといいます。妻ファニーは、夜中にうなされる夫を起こしたら「せっかくいい怪談を見ていたのに」と怒られたと伝えています。
最初の原稿は妻に批判され、スティーヴンソンはそれを燃やして三日ほどで書き直したとされています。原稿を本当に燃やしたかどうかは、研究者の間でも議論があります。刊行は1886年1月で、イギリスでは1シリングの安い本として売り出されました。
「ジキルとハイド」という言葉
刊行直後は書店に並ばなかったものの、タイムズ紙の好意的な書評をきっかけに、半年で4万部近くが売れました。ふだん小説を読まない人にも読まれ、教会の説教で引用されることもありました。翌1887年にはボストンで舞台化され、照明と化粧を工夫した演出が観客を驚かせました。
舞台はロンドンでも上演されましたが、切り裂きジャックの事件が騒がれるなかで、殺人者を演じた主演俳優まで疑われ、上演は打ち切られました。映画化も数多く、1931年の映画では主演のフレドリック・マーチがアカデミー主演男優賞を受けています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
ジキルが実験室に何週間も閉じこもったままだと聞き、アターソンとプールは扉を斧で破ります。中には、ジキルの大きすぎる服を着たハイドが自ら命を絶って倒れていて、ジキルの姿はどこにもありませんでした。残された文書によると、ラニョンはハイドが薬を飲んでジキルに戻るのを目の前で見て、その衝撃で死んだのでした。
ジキルの手記には、人の中の善と悪を切り離す薬を作り、自分がハイドに変身して欲望を満たしていたことが記されていました。やがて薬なしでも変身が起きるようになり、カルー卿を殺したのもハイドでした。元に戻る薬の材料が尽き、ジキルはもう二度と戻れないと悟ったまま、手記を書き終えます。
よくある疑問
- 『ジキル博士とハイド氏』はどんな話?
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弁護士アターソンが、友人ジキル博士と謎の男ハイドの関係を探る怪奇小説です。人間の中にある善と悪をめぐる物語として知られています。
- 「ハイド」という名前の意味は?
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英語の「隠れる(hide)」に掛けた名前です。人目を避けて行動する人物にふさわしい名前になっています。
- モデルになった人物はいる?
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18世紀のエディンバラの市議会議員で、夜は盗賊として盗みを重ねたウィリアム・ブロディーがモデルとされています。スティーヴンソンはこの事件をもとにした戯曲も書いています。
- どのくらいの長さ?
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中編小説です。弁護士アターソンの側から語られる部分と、終盤の手記の部分からなっています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
