- 原題
- Gulliver’s Travels
- 発表
- 1726年(完全版は1735年)
- 初出
- 1726年にロンドンで匿名出版、1735年にアイルランドで完全版が刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- ヨーロッパの文学
船医ガリヴァーが、小人の国、巨人の国、空飛ぶ島、馬の治める国へと4度の航海で不思議な国々を訪れます。どの国も、実は当時のイギリス社会や人間そのものを映す鏡になっています。子ども向けの冒険物語として知られる、スウィフトの風刺小説です。
こんな人に
- ありえない世界の旅を通して、自分の社会を眺め直したい人に
- 皮肉やブラックユーモアのきいた話が好きな人に
- 子どものころに読んだ小人の国の話の続きを知りたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
物語は、レミュエル・ガリヴァー本人が、航海に出る前の自分の経歴を手短に語るところから始まります。船医として船に乗ったガリヴァーは、1699年5月の航海で難破し、ひとり浜に打ち上げられます。
目を覚ますと、体は地面に縛りつけられていました。彼を捕らえたのは、身長が6インチにも満たない小人たちの国リリパットの軍隊でした。おとなしくしていると約束したガリヴァーは住まいを与えられ、宮廷のお気に入りになります。ところがこの国は、隣国ブレフスキュと長年戦争を続けており、その原因は卵を大きいほうから割るか、小さいほうから割るかという意見の違いでした。
旅はこれで終わりません。ガリヴァーはこのあとも航海に出て、すべてが巨大な国、空に浮かぶ島、言葉を話す馬たちの国へと、次々にたどり着くことになります。
主な登場人物
- レミュエル・ガリヴァー
- 語り手。船医から、のちに船長となったイギリス人。四つの国への旅を記録する。
- リリパット国の皇帝
- 第一篇に登場する小人の国の皇帝。巨人のガリヴァーを国のために使おうとする。
- グラムダルクリッチ
- 第二篇の巨人の国で、ガリヴァーを見つけた農夫の娘。小さな彼の世話をする。
- ブロブディンナグ国の国王
- 第二篇の巨人の国の王。イギリスの政治や社会についてガリヴァーに質問を重ねる。
- ラピュータの人々
- 第三篇の空飛ぶ島の住人。全員が科学者で、考えごとに没頭している。
- フウイヌムとヤフー
- 第四篇の国の住人。フウイヌムは理性的な馬の種族、ヤフーは毛深く野蛮な生き物。
見どころ・おもしろいところ
卵の割り方で起きた戦争
リリパット国の二つの政党はイギリスのトーリー党とホイッグ党を、隣国ブレフスキュはフランスを表しています。卵をどちらの端から割るかで争う話は、教会の対立を皮肉ったものとされます。この卵の話は、のちにコンピューターの用語「エンディアン」の由来にもなりました。
巨人の王に問われる祖国
第二篇では立場が逆転し、ガリヴァーは巨人の国で小人として扱われます。国王に祖国の戦争や司法、金融について問われるうち、自慢のはずのイギリスの姿がだんだんあやしく見えてきます。王を前にガリヴァーが披露しようとするある技術は、王をひどく戦慄させます。
空飛ぶ島と江戸の将軍
第三篇には、天然の磁石で空中を動く島ラピュータが登場し、学問のための学問に夢中な科学者たちが風刺されます。この篇でガリヴァーは日本を訪れ、江戸で「皇帝」に拝謁し、長崎からオランダ船で帰国します。ラピュータの名は、宮崎駿監督のアニメ映画の題にも使われました。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
子ども向けは前半だけのことが多い
子ども向けの版には、小人の国と巨人の国の最初の2篇だけが収められていることがよくあります。原作は全4篇で、後半ほど風刺が鋭くなるので、前半を知っている人も第三篇・第四篇まで読むと印象が変わります。
各篇は一つの旅で完結する
四つの篇はそれぞれ出航から帰国までの一つの旅として書かれ、篇ごとに航海の日付が示されています。どの篇も単独の話として読めるので、長さに構えず、一篇ずつ区切って読み進めてかまいません。
風刺の対象を少し知っておく
小人の国の政争や空飛ぶ島の圧政には、当時のイギリスの政党やアイルランドの状況が重ねられています。スウィフトがアイルランド出身で、イギリスの政策に批判的だったことを頭に置いておくと、笑いどころが見えてきます。
改変されて世に出た初版
スウィフトは、1713年ごろにポープらと流行の文学を風刺する集まりを作っていました。手紙によれば、第一篇と第二篇が1720年に、第四篇が1723年に、第三篇が1724年に書き上げられています。数年前に大評判をとったデフォーの『ロビンソン・クルーソー』の流れを受け継ぐ作品でもありました。
スウィフトは、イギリス製品の不買をアイルランドの人々に呼びかけるなど、政府から危険視される存在でした。そのため出版社は大衆の怒りを恐れ、1726年の初版は内容に大きな手を加えたうえで匿名で出されました。改変のない形が出たのは、1735年にアイルランドの出版業者フォークナーが出した版が最初です。
子ども部屋から国の中枢まで
出版直後から大評判となり、詩人ジョン・ゲイは、内閣から子ども部屋まであらゆる場所で読まれているとスウィフトに書き送りました。20世紀には子ども向けの物語として読まれることが多く、1939年のアニメ映画をはじめ、何度も映像化されています。
作品から生まれた言葉も少なくありません。第三篇では科学者が火星に二つの衛星があると語りますが、これは実際の衛星の発見より前の記述でした。そのため、火星の衛星のクレーターには作中の人物やスウィフトの名がつけられています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
4度目の航海でガリヴァーは船員の反乱にあい、フウイヌムの国に置き去りにされます。理性的で争いのない馬の種族に感服した彼は、野蛮なヤフーこそ人間の本当の姿だと考えるようになり、自分もヤフーの一人だと信じて苦しみます。やがてフウイヌムの議会は、少しばかり理性を持ったヤフーにすぎない彼を危険とみなし、国を出るよう命じます。
ガリヴァーは、親切なポルトガル船の船長ペドロ・デ・メンデスに救われますが、その船長さえヤフーとしか思えません。イギリスの家に帰ったあとも人間と暮らすことになじめず、妻や家族を避け、厩舎の馬たちとフウイヌムの言葉で話すときだけ心が落ち着くのでした。
よくある疑問
- 『ガリヴァー旅行記』はどんな話?
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船医ガリヴァーが、小人の国、巨人の国、空飛ぶ島などの国々、馬の国を旅する風刺小説です。旅先の国々を通して、当時のイギリス社会や人間の愚かさが皮肉られています。
- 日本が出てくるって本当?
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本当です。第三篇でガリヴァーは日本の港に着き、江戸で「日本の皇帝」に会ったあと、長崎からオランダ船で帰国します。ここでいう皇帝は徳川将軍のことだと考えられています。
- 正式な題名は?
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正式な題は「船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇」です。ガリヴァー本人が書いた旅行記の形をとっています。
- 「ヤフー」という名前と関係ある?
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あります。ポータルサイトの「ヤフー」の名は、開発者たちが第四篇に出てくる種族にちなんで自分たちをヤフーと呼んだことに由来しています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
