ハックルベリー・フィンの冒険

ハックルベリー・フィンの冒険マーク・トウェイン
原題
Adventures of Huckleberry Finn
発表
1885年(イギリスでは1884年12月)
初出
1884年12月にイギリスとカナダで、1885年2月にアメリカで刊行
形式・長さ
小説・長編
手ごわさ
ふつう

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ひとことで言うと

暴力をふるう父から逃げ出した13歳の少年ハックが、売られそうになって逃げてきた奴隷のジムと、いかだでミシシッピ川を下っていきます。旅の途中で出会う人々と騒動を、ハック自身が方言まじりの口語で語る、『トム・ソーヤーの冒険』の続編です。

こんな人に

  • 大人のつくった決まりに、どこか納得できなかった子ども時代がある人に
  • 川や旅を舞台にした、行く先々で事件が起きる冒険物語が好きな人に
  • 世の中の常識と自分の良心が食い違ったときに悩んだことがある人に

あらすじ(ネタバレなし)

1840年代、ミズーリ州の町セント・ピーターズバーグ。前作で大金を手にしたハックルベリー・フィンは、ダグラス夫人に引き取られ、学校に通い、夫人の妹ミス・ワトソンから礼儀作法をたたき込まれる毎日を送っています。窮屈さを感じながらも、ハックはトム・ソーヤーとの付き合いを楽しみに、少しずつ暮らしに慣れていきます。

ところが、ハックの大金を聞きつけた酒浸りの父親パップが町に現れ、ハックを人里離れた小屋に閉じ込めてしまいます。ハックは自分が殺されたように見せかけて逃げ出し、川の中の島に身を隠します。そこで出会ったのが、ミス・ワトソンの奴隷ジムでした。ジムは、南部に売られそうになっていることを立ち聞きして逃げてきたのです。

二人は、奴隷制のない自由州を目指して、いかだでミシシッピ川を下りはじめます。当時、逃亡した奴隷を助けることは犯罪とされていました。ハックは世の中の決まりと自分の気持ちの間で揺れながら、川沿いの町々でさまざまな人に出会っていきます。

主な登場人物

ハック
ハックルベリー・フィン。語り手で13歳ほどの少年。父は町の酔っ払いで、自分の知恵で生きてきた。
ジム
ミス・ワトソンの奴隷。体は大きいが穏やか。迷信深いが賢く、ハックと旅をする。
トム・ソーヤー
ハックの親友で、前作『トム・ソーヤーの冒険』の主人公。冒険小説を真似た計画が好き。
パップ
ハックの父親。酒浸りの乱暴者で、ハックの金を手に入れようとする。
ダグラス夫人
ハックを引き取った未亡人。ハックを「文明化」するのが自分の務めだと考えている。
ミス・ワトソン
ダグラス夫人の妹。ハックに厳しく、ジムの持ち主でもある。
王様と公爵
旅の途中でいかだに乗り込む二人組の詐欺師。フランスの王位継承者と公爵を名乗る。

見どころ・おもしろいところ

  1. 少年自身が語る物語

    物語は最初から最後まで、学校に通い始めたばかりのハックの口ぶりで語られます。アメリカの主な文学で、全編を話し言葉で書いた最初期の作品の一つとされています。大人の目では見落とすようなことを、ハックがまっすぐな言葉で伝えてくれます。

  2. 川沿いの町で出会う人々

    ハックとジムは川を下りながら、殺人者や泥棒、詐欺師、善人や偽善者に次々と出会います。悪漢小説のように、旅の先々で一話ずつ事件が起きる構成です。長年いがみ合う二つの名家や、詐欺師の興行など、場面ごとに違う顔の南部が描かれます。

  3. 良心と友情のぶつかり合い

    ハックは、奴隷の逃亡を助けるのは悪いことだと教えられて育ちました。トウェインはこの作品を、健全な心とねじ曲げられた良心が衝突する本だと説明しています。ハックが何を正しいと感じて行動するのかを追うと、物語の芯が見えてきます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

前作を読んでいなくてもよい

これは『トム・ソーヤーの冒険』の続編で、冒頭は前作の結末を受けて始まります。ただ、必要なこと(ハックが大金を手にした経緯など)は最初に説明されるので、前作を読まずに読み始めても困りません。

方言の語りに慣れる

原文は方言・口語体で書かれた、くだけた語りです。日本語訳でも、言葉づかいが乱暴だったり文法が崩れていたりするのは、ハックという語り手の声を伝えるためです。そういう語り手だと知っておくと、違和感なく読めます。

終盤は雰囲気が変わる

物語の終わり近くでトム・ソーヤーが再び登場すると、話はトムの芝居がかった計画を中心にした喜劇の色合いを強めます。この部分の評価は批評家の間でも分かれています。調子が変わることを知っておけば、戸惑わずに最後まで読めます。

前作の続きとして書き始めた

トウェインは当初、ハックが大人になるまでを追う『トム・ソーヤーの冒険』の続編を構想し、『ハックルベリー・フィン自伝』という題で書き始めました。原稿は1876年から1883年にかけて、途中で何年も中断しながら書き継がれています。原稿を調べた専門家は、純粋な文語から方言の語りへ移ろうとする作者の試みが見えると述べています。

物語の舞台は南北戦争前の南部で、刊行の時点ですでに20年以上前に消えた社会でした。刊行は1884年12月のイギリスとカナダが先で、アメリカでは1885年2月です。挿絵は、トウェイン自身が選んだ若い画家E・W・ケンブルが描きました。

称賛と禁書のあいだで

アメリカで刊行されると、マサチューセッツ州コンコードの図書館は、粗野で品がないとして本書を蔵書から締め出しました。作家ルイザ・メイ・オルコットも、子どもに読ませる本ではないと批判しています。その後も、差別語の多さをめぐって学校の推薦図書から外されるなど、論争は続いてきました。

一方でヘミングウェイは、現代のアメリカ文学はすべてこの本から来ていると称えました。作家ラルフ・エリスンは、ヘミングウェイが批判した終盤の章にこそ作品の意味があると反論しています。「偉大なアメリカ小説」の一つに数えられ、日本でもアニメになるなど、広く親しまれています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

詐欺師の二人組は、ハックたちを巻き込んで町々で詐欺を重ねたあげく、ジムをフェルプス家に売り払ってしまいます。地獄に落ちてもかまわないと覚悟して、ハックはジムを救い出すことを決めます。フェルプス家にはハックをトムと取り違えられ、そこへやってきた本物のトムは弟シッドのふりをして、大げさな救出計画を立てます。

逃亡の途中でトムが撃たれて傷を負い、ジムは逃げずにトムの手当てをして捕まります。そこへトムのポリーおばさんが現れ、ミス・ワトソンがすでに亡くなり、遺言でジムを自由にしていたことを明かします。トムはそれを知っていたのでした。ジムは、流れてきた家の中で見た死体がハックの父だったと告げます。ハックは、また誰かに「文明化」されるのはごめんだと、西の土地へ逃げ出すつもりだと語って物語を終えます。

よくある疑問

『ハックルベリー・フィンの冒険』はどんな話?

父から逃げた少年ハックと逃亡奴隷のジムが、いかだでミシシッピ川を下る冒険物語です。旅の中で、ハックが自分の良心と向き合っていく話でもあります。

『トム・ソーヤーの冒険』の続き?

続編です。前作の結末で大金を手にしたハックのその後から始まります。トム・ソーヤーも、物語の初めと終わりに登場します。

禁書になったのはなぜ?

刊行直後には、言葉づかいが粗野で下品だという理由で図書館から締め出されました。20世紀以降は、黒人を指す差別語が多く使われていることが問題にされ、学校の推薦図書から外されるなどの論争が続いています。

ヘミングウェイが絶賛したって本当?

本当です。ヘミングウェイは、現代のアメリカ文学はすべてこの一冊から来ていると書いています。一方で、終盤の章については厳しい見方も示しました。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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