- 原題
- A Farewell to Arms
- 発表
- 1929年
- 初出
- 雑誌『スクリブナーズ・マガジン』に連載(1929年5月〜10月)。同年9月にスクリブナー社から単行本
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- ふつう
第一次世界大戦のイタリア戦線で、救急車部隊を率いるアメリカ人の中尉と、イギリス人の看護師が恋に落ちる物語です。戦場の現実と二人の恋が、主人公の一人称で淡々と語られます。ヘミングウェイの最初のベストセラーになった長編です。
こんな人に
- 飾らない短い文で書かれた小説を読んでみたい人に
- 戦争の大義より、そこにいる一人の目線を知りたい人に
- 先の見えない状況の中の恋の物語に惹かれる人に
あらすじ(ネタバレなし)
第一次世界大戦のさなか、アメリカ人のフレデリック・ヘンリーは、イタリア軍の救急車部隊で中尉を務めています。イタリア語を話す彼は、前線に近い町を拠点に、運転手たちを率いて負傷兵を運んでいます。冬の始まりにはコレラが流行し、何千人もの兵士が命を落としました。
ある日、友人の軍医リナルディに連れられて行ったイギリス軍の病院で、フレデリックは看護師のキャサリン・バークレーを紹介されます。キャサリンは戦闘で婚約者を亡くしていました。最初の出会いはぎこちないものでしたが、二人は少しずつ惹かれ合っていきます。
やがてフレデリックは救急車で前線へ向かい、迫撃砲の攻撃で膝に重傷を負います。彼は治療のためミラノのアメリカン病院へ移されることになり、そこへキャサリンも看護師としてやって来ます。戦争はまだ終わる気配がありません。
主な登場人物
- フレデリック・ヘンリー
- 語り手。イタリア軍で救急車の運転手たちを指揮するアメリカ人の中尉。
- キャサリン・バークレー
- イギリス人の看護師。戦闘で婚約者を亡くしている。
- リナルディ
- 前線近くで勤める軍医。美しい女性が好きで、フレデリックを兄弟のように気にかける。
- 司祭
- 陸軍の従軍司祭。フレデリックと神や戦争についてよく語り合う。名前は出てこない。
- ヘレン・ファーガソン
- キャサリンの友人で、同じ病院で働く看護師。
- ミス・ヴァン・カンペン
- ミラノのアメリカン病院の看護師長。フレデリックとは会ってすぐに嫌い合う。
見どころ・おもしろいところ
削ぎ落とした文体
作家ゴア・ヴィダルは、この作品にヘミングウェイ独特の慎重で巧みな口調の始まりを見ています。性の場面なども細かく書かず、省略を文学の技法として使っています。書かれていないことを想像しながら読むと、短い文の奥行きが見えてきます。
一人称で語られる戦争
物語はすべてフレデリック自身の言葉で語られます。英雄的な行為を褒められても否定し、司祭とは戦争について語り合う彼の言葉から、戦争に対する考えの移り変わりが見えてきます。
大撤退の場面
第3巻では、史実のカポレットの戦いでのイタリア軍の撤退が描かれます。道路は混乱し、車は泥にはまり、兵士の士気は落ちていきます。のちにファシスト政権が、軍の名誉を傷つけるとして嫌った場面でもあります。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
五つの巻で舞台が変わる
小説は五つの「巻」に分かれています。第1巻は前線、第2巻はミラノの病院と、巻ごとに舞台が大きく変わるので、一巻ずつ区切って読むと流れを見失いません。
冒頭は戦場の様子から
最初の章は、恋の話ではなく前線の町や兵士たちの様子から始まり、キャサリンが出てくるのはその後です。戦争がどんな日常だったかを知る導入と考えて読むと、後の場面が効いてきます。
脇役の名前は軽く追う
前線の場面では、運転手のパッシーニやピアニ、アイモ、ボネロなど多くの人物が短く出入りします。フレデリックとキャサリン、リナルディと司祭の四人を軸に押さえれば、ほかの名前は出てきたときに追えば十分です。
イタリア戦線の記憶から
ヘミングウェイ自身も第一次世界大戦中、イタリア戦線にいました。キャサリンのモデルは、ミラノの病院で負傷した彼を看護したアグネス・フォン・クロウスキーです。ヘミングウェイは結婚するつもりでしたが、アメリカに帰ったあと彼女に断られています。
ただし伝記作家マイケル・レイノルズは、作中の戦闘にヘミングウェイは関わっていないと書いています。前作『日はまた昇る』が実話小説だったため、読者がこの作品も自伝だと思い込んだのです。執筆はワイオミング州の牧場で始まり、妻ポーリンの出産を待つ間にも書き進められました。
最初のベストセラーと検閲
単行本の初版はおよそ3万1000部で、ヘミングウェイの最初のベストセラーになりました。この成功で彼は経済的に自立します。第一次世界大戦を描いたアメリカ最高の戦争小説とも呼ばれ、作家としての地位を確かなものにしました。
一方で、雑誌連載の段階でボストンの新聞売り場から締め出され、アイルランド自由国でも禁止されました。イタリアでは軍の名誉を傷つけるとして、1948年まで出版されませんでした。日本でも第二次世界大戦前に出ましたが、発売禁止になっています。映画には1932年と1957年の二度なりました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
ミラノで愛し合うようになった二人ですが、フレデリックは看護師長に仮病を疑われて前線へ戻されます。キャサリンは妊娠を打ち明けます。前線ではカポレットでイタリア軍が敗れ、撤退の途中でフレデリックは命令に従わない軍曹を撃ち、部下の一人は殺され、一人は敵に投降します。川を渡ったところで憲兵に捕まり、将校が次々に処刑される場から川に飛び込んで逃げ出します。
脱走兵となった彼はストレーザでキャサリンと再会し、警察の手が迫るなか、嵐の夜に湖をボートで漕ぎ渡ってスイスへ逃れます。山の中で静かに暮らしたあと、二人は病院に近いローザンヌに移ります。しかし出産は難産となり、男の子は死産で、キャサリンも出血のため亡くなります。フレデリックは病院を出て、雨の中をホテルまで歩いて帰ります。
よくある疑問
- 『武器よさらば』はどんな話?
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第一次世界大戦のイタリア戦線で、アメリカ人の中尉とイギリス人の看護師が恋に落ち、戦争に翻弄されていく話です。
- 『武器よさらば』は実話がもとになっている?
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部分的には、第一次世界大戦中のイタリア戦線でのヘミングウェイ自身の経験に基づいています。キャサリンのモデルは、ミラノの病院で彼を看護したアグネス・フォン・クロウスキーです。ただし、作中の戦闘にヘミングウェイ自身は関わっていないとされています。
- タイトルの意味は?
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原題はA Farewell to Armsで、16世紀のイギリスの劇作家ジョージ・ピールの同じ題の詩から取られたと考えられています。
- 結末は何度も書き直された?
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ヘミングウェイは結末に苦しみ、本人の数えでは満足するまでに39通りを書いたといいます。2012年に出た版には、47通りもの別の結末が付録として収められました。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
