若草物語

若草物語オルコット
原題
Little Women
発表
1868年(第一部)、1869年(第二部)
初出
ロバーツ・ブラザーズ社から刊行。人気を受けて翌年に第二部
形式・長さ
小説・長編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

南北戦争のころのアメリカで、父が戦地に出ている間、母と四人の娘が支え合って暮らす日々を描いた家庭小説です。メグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹が、それぞれの欠点と向き合いながら大人になっていきます。作者が自分の姉妹との子ども時代をもとに書いた物語です。

こんな人に

  • きょうだいとけんかしながら育った記憶がある人に
  • やりたいことと家族への思いの間で迷っている人に
  • 大事件より日々の出来事を味わう物語が好きな人に

あらすじ(ネタバレなし)

南北戦争が続くアメリカ北部の町で、マーチ家の四姉妹は母と家政婦のハンナと暮らしています。父は北軍の従軍牧師として戦地に出ていて、一家は昔ほど裕福ではありません。父のいない初めてのクリスマスの朝、母は姉妹に、自分たちの朝食を貧しい一家に届けようと持ちかけます。

長女メグは家庭教師として、次女ジョーは裕福なマーチおばの話し相手として働き、家計を助けています。戦地の父からの手紙は、娘たちに自分の心の敵と戦い、立派な「小さな婦人たち」になってほしいと呼びかけます。メグの虚栄心、ジョーの激しい気性、ベスの内気さ、エイミーのわがままが、それぞれの敵です。

隣の大きな屋敷には、ローレンス老人と孫のローリーが住んでいます。舞踏会でジョーと知り合ったローリーは、やがて姉妹の家に入りびたる友だちになります。家族の小さな楽しみや失敗、そして思いがけない知らせが、一年の間に姉妹を少しずつ変えていきます。

主な登場人物

メグ
長女。正式名はマーガレット。美しく家庭的で、きれいな服や社交界にあこがれている。
ジョー
次女。正式名はジョゼフィーン。作家を夢見る短気で率直な少女で、作者自身がモデル。
ベス
三女。正式名はエリザベス。とても内気で学校に通わず、家事を引き受けピアノを弾く。
エイミー
末っ子の四女。絵が得意で、上品にふるまいたがるが、難しい言葉をよく言い間違える。
マーチ夫人
姉妹の母で、娘たちからは「マーミー」と呼ばれる。慈善活動をしながら娘たちを導く。
ローリー
隣家ローレンス家の孫息子。本名はセオドアで、テディとも呼ばれる。ジョーと同い年。
ジョン・ブルック
ローリーの家庭教師。まじめで倹約家の貧しい青年で、マーチ家とも親しくなる。

見どころ・おもしろいところ

  1. 四人四様の生き方

    家庭を大事にするメグ、作家を目指すジョー、家にいて周りを和ませるベス、画家を夢見るエイミー。作者は姉妹それぞれの生き方を否定せずに描いています。誰に自分を重ねるかで、物語の見え方が変わります。

  2. 子どもだけの世界の楽しさ

    父は不在で、母は家事と慈善活動に忙しく、姉妹は大人に見張られずに遊び、ローリーと仲間になります。子どもたちだけの空間を生き生きと描いた作品は、これより前には見られないとされています。

  3. 巡礼の旅になぞらえる

    姉妹は、ジョン・バニヤンの寓話『天路歴程』に出てくる巡礼の旅に、自分たちの毎日をなぞらえます。章の題にも『天路歴程』の人物や場所が使われています。欠点を直そうとする姉妹の努力が、一つの旅として描かれているのです。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

一章ずつのエピソード

物語は一本の大きな筋で引っぱるのではなく、姉妹と周りの人々のエピソードの連続で進みます。一章を一つの短い話として読むと、展開がゆっくりでも気になりません。

第一部と第二部の違い

英語圏では第一部と第二部を合わせて一冊とするのが普通ですが、日本では第一部だけの翻訳が多く出ています。手にした本がどこまで収めているかを先に確かめておくと、途中で終わって戸惑わずにすみます。

第二部は三年後から

第二部は、第一部の終わりから三年たったところから始まります。姉妹はもう少女ではなく、仕事や結婚、旅に向き合う大人の物語に変わると知っておくと入りやすくなります。

女の子向けの本を頼まれて

1867年、出版社ロバーツ・ブラザーズのトーマス・ナイルズは、少年向けの本に対抗できる女の子向けの本をオルコットに提案しました。おてんば娘として育ったオルコットは、自分は少女向けの物語に向いていないと感じ、何か月も迷います。最後は父の哲学書の出版や、家族の貧しさを助けるために引き受けました。

材料にしたのは、マサチューセッツ州コンコードで姉妹と過ごした思春期です。ただし実際のオルコット家は飢えや寒さに苦しむほど貧しく、物語のマーチ家はかなり理想化されています。父を戦地に送って不在にした設定も、気難しい実の父を描かずにすむ工夫だったとされています。

少女の必読書から読み直しへ

第一部は出てすぐに大成功し、初版2000部はたちまち売り切れました。最初の巻を読んだ少女たちからは、姉妹が誰と結婚するのかを尋ねる手紙が作者のもとに届いたといいます。続きを求める声に応えて、翌年に第二部が出ました。

『赤毛のアン』や『あしながおじさん』の主人公も本作を話題にしていて、当時の少女の必読書だったことがうかがえます。シモーヌ・ド・ボーヴォワールやアーシュラ・K・ル=グウィンも、ジョーに強く影響を受けたと語っています。1970年代からはフェミニズムの立場からの読み直しが進み、映画やアニメにも何度もなってきました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

第一部では、戦地の父が重い病にかかり、母は看病に向かいます。留守の間にベスは貧しい一家から猩紅熱をうつされますが、一命を取りとめます。クリスマスに回復した父が帰宅し、メグはジョン・ブルックと婚約します。

第二部でメグは結婚して双子の母になります。ジョーはローリーの思いに応えず、ニューヨークで書く修業をして、年上のドイツ人ベア先生と出会います。体の弱ったベスはジョーに看取られて亡くなり、ジョーは家族のために生きようとして深く苦しみます。ヨーロッパでエイミーと再会したローリーは彼女と結婚し、ジョーはベア先生と結婚して、マーチおばから譲られたプラムフィールドで学園を開きます。

よくある疑問

『若草物語』はどんな話?

南北戦争中のアメリカで、父の留守を守る母と四人姉妹が、欠点を直しながら大人になっていく家庭小説です。第二部では姉妹の結婚や仕事が描かれます。

『若草物語』は実話がもとになっている?

作者オルコットが自分の姉妹と過ごした子ども時代をもとにした、半ば自伝的な物語です。ジョーは作者自身、ほかの三人は作者の姉と妹たちがモデルとされています。ただし実際のオルコット家はもっと貧しく、物語では理想化されています。

タイトルの意味は?

原題のLittle Womenは「小さな婦人たち」という意味で、幼い少女ではなく立派な女性になるように、という父の教えから来ています。「若草物語」という邦題は1933年の映画と同じころの抄訳から定着したもので、原題とは直接の関係はありません。

続編はある?

あります。ジョーが開いた学園の生徒たちを描く『リトル・メン』(第三若草物語)と『ジョーの少年たち』(第四若草物語)が書かれています。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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