- 原題
- The Grapes of Wrath
- 発表
- 1939年
- 初出
- ヴァイキング・プレス社から刊行
- 形式・長さ
- 小説・大長編
- 手ごわさ
- ふつう
1930年代、砂嵐と不況で土地を失ったオクラホマの農民一家が、仕事を求めて中古車を改造したトラックでカリフォルニアを目指す物語です。ルート66をたどる長い旅と、たどり着いた先の厳しい現実が描かれます。ピューリッツァー賞を受け、作者のノーベル文学賞の大きな理由にもなりました。
こんな人に
- 苦しいときほど家族が支え合う話に心を動かされる人に
- 大恐慌の時代のアメリカを物語で知りたい人に
- 社会の仕組みと一人ひとりの暮らしのつながりを考えたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
大恐慌が続く1930年代のアメリカ。人を殺した罪で4年間刑務所に入っていたトム・ジョードは、仮釈放されてオクラホマの実家へ向かいます。途中で、子どものころに知っていた元説教師のジム・ケイシーと出会い、二人で歩いていきます。
ところが、たどり着いた家はもぬけの殻でした。ダストボウルと呼ばれる砂嵐で作物はだめになり、借金を返せなくなった農家は銀行に土地を取り上げられていたのです。家族はジョン伯父の家で、残った家財をトラックに積み込んでいるところでした。
ビラには、カリフォルニアに行けば果物の収穫の仕事があり、賃金も高いと書かれています。トムは仮釈放の決まりを破ると知りながら、ケイシーも誘って一家そろって西への旅に加わります。国道66号線には、同じように故郷を追われた人々の車があふれていました。
主な登場人物
- トム・ジョード
- 主人公。仮釈放されて戻ってきた若者。父と同じ名で、ぶっきらぼうだが心根は優しい。
- ママ・ジョード
- トムの母。名前は最後まで明かされない。実際的で温かく、一家をまとめようとする。
- パパ・ジョード
- トムの父で、本名は息子と同じトム。オクラホマで働き通してきた50歳の小作農。
- ジム・ケイシー
- 信仰を失った元説教師。トムと再会し、ジョード一家とともに旅に出る。
- ローザシャーン
- ジョード家の長女で18歳。本来の名はローズ・オブ・シャロン。妊娠中で、夫コニーと旅に加わる。
- アル・ジョード
- トムの弟で16歳。機械いじりが好きで、兄のトムを尊敬している。
- ジョン伯父
- パパの兄。若い妻を亡くした罪の意識を抱え、酒に溺れがちだが気前はよい。
見どころ・おもしろいところ
一家の章と時代の章
ジョード一家の物語の章の間に、時代全体を描く短い章がはさまっています。乾いた道路を渡ろうとする一匹の亀を描いた章もあり、一家と同じ境遇の無数の人々の姿が浮かび上がる仕組みです。
一家の舵を取る母
暮らしの手段を失った父に代わって、旅の途中から母が一家の中心に立つようになります。名前さえ明かされない母の、実際的で温かい判断に注目すると、家族の物語としての芯が見えてきます。
聖書をなぞる旅
研究者は、オクラホマからカリフォルニアへの旅を、旧約聖書の『出エジプト記』の脱出になぞらえて読んでいます。題名も聖書に由来する言葉で、作中では後半のある章の終わりに出てきます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
一家の出ない章も読む
ジョード一家が出てこない短い章は、話がそれたように感じるかもしれません。でも題名の言葉が出てくるのもそうした章なので、時代の風景を映す章として読むと、一家の旅の意味が広がります。
三つに区切って読む
研究者レナード・スレイドによれば、1〜10章が故郷、11〜18章が旅、19章からがカリフォルニアの物語にあたります。区切りを知っておくと、大長編でも今どこにいるかがつかめます。
大家族は三人を軸に
ジョード家は祖父母から幼い弟妹までそろった大所帯です。トム、母、ケイシーの三人を軸にして、ほかの家族は旅の途中で少しずつ覚えれば十分です。
移住労働者の取材から
スタインベックは1936年、『サンフランシスコ・ニューズ』紙の依頼で、カリフォルニアの農業で働く中西部からの移住労働者を取材し、7回の連載記事を書きました。これが『怒りの葡萄』の出発点です。農業安定局の職員サノラ・バブが1938年に集めた移住者の聞き書きも、彼の手に渡って使われました。
題名を決めるのには珍しく苦労し、最後は妻キャロルが出した案を選びました。出版の3か月前には編集者に長い手紙を送り、この本には五つの層があり、読者は自分の深さに応じてそれを見つけるだろうと書いています。
焼かれた本、読まれた本
出版されると1939年で最も売れた本になり、翌年にはピューリッツァー賞を受けました。一方で、舞台となったオクラホマ州とカリフォルニア州では非難の声が大きく、図書館から外されたり、市民の手で燃やされたりもしました。カリフォルニアの農場経営者の団体は、この本を「嘘の塊」と呼んでいます。
こうした締め出しをきっかけに、アメリカ図書館協会は「図書館の権利宣言」を1948年に採択し、読者の知的自由を守る姿勢を示しました。1962年にスタインベックがノーベル文学賞を受けたときも、この作品が主な理由の一つに挙げられています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
旅の初日の夜に祖父が亡くなり、祖母もカリフォルニアの州境近くで息を引き取ります。長男ノアは途中で一家を離れ、カリフォルニアに着くとローザシャーンの夫コニーも姿を消します。カリフォルニアは仕事を求める人であふれ、賃金は安く、移住者は「オーキー」と蔑まれます。政府のキャンプでひととき人間らしい暮らしを得ますが、仕事はありません。
労働者をまとめようとしたケイシーは、ストライキを起こしたとして襲われて殺され、その場にいたトムは相手を殺して身を隠します。トムは虐げられた人々のために働くと母に誓って去ります。ローザシャーンの子は死産で、冬の豪雨で住まいも水に浸かります。一家が逃げ込んだ納屋には飢えて死にかけた男がいて、ローザシャーンは自分の乳を彼に飲ませます。
よくある疑問
- 『怒りの葡萄』はどんな話?
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砂嵐と不況で土地を失ったオクラホマの一家が、仕事を求めてカリフォルニアへ移り、厳しい現実に直面していく話です。
- タイトルの意味は?
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ジュリア・ウォード・ハウの歌『リパブリック賛歌』の歌詞から取られ、さらにさかのぼると新約聖書の「ヨハネの黙示録」に行き着きます。「葡萄」は神の怒りによって踏みつぶされる人間を指すと一般に解釈されています。題はスタインベックの妻キャロルが提案しました。
- 『怒りの葡萄』は実話がもとになっている?
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背景は実際の出来事です。スタインベックが1936年に新聞の依頼で移住労働者を取材して書いた連載記事がもとになっていて、移住者の聞き書きを集めた記録も参考にされました。
- 映画はある?
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1940年にジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演で映画になりました。アカデミー賞では監督賞と、母を演じたジェーン・ダーウェルの助演女優賞を受けています。
