老人と海

老人と海ヘミングウェイ
原題
The Old Man and the Sea
発表
1952年
初出
1952年9月1日発行の雑誌『ライフ』に全編掲載、9月8日にスクリブナーズ社から単行本で刊行
形式・長さ
小説・中編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

キューバの年老いた漁師サンチャゴが、84日間一匹も釣れない不漁のあと、一人で小舟を出して巨大なカジキと向き合います。登場人物はほとんど老人ひとり。削ぎ落とした短い文で、海の上の数日間が描かれます。

こんな人に

  • うまくいかない日が続いても、やめずに続けてきた人に
  • 飾りの少ない文章の手ざわりを味わいたい人に
  • 長い小説は苦手だが、名作を一冊読み切りたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

キューバのハバナに暮らす老漁師サンチャゴは、84日間、一匹も魚を釣り上げていません。仲間からは運に見放された男と見られています。彼に漁を教わった少年マノーリンは、両親の言いつけで別の舟に乗るようになりましたが、今も毎日老人の道具の支度を手伝い、食べ物を運んできます。二人は野球の話をし、老人は眠りにつくと、若いころに見たライオンの夢を見ます。

85日目の早朝、老人は少年に見送られ、一人で小舟を漕いでメキシコ湾流の沖へ出ていきます。昼ごろ、釣り綱に大物の手応えがあります。かかったのは、小舟よりも大きなカジキでした。

魚は重すぎて引き上げられず、逆に小舟を引いて沖へ沖へと泳いでいきます。老人は綱を背中に回して踏ん張り、夜になっても手を離しません。こうして、老人と大魚の根比べが始まります。

主な登場人物

サンチャゴ
主人公の老漁師。妻に先立たれ、粗末な小屋に一人で暮らしている。「サンチアゴ」と書く訳もある。
マノーリン
老人に漁を教わった少年。親の言いつけで別の舟に乗っているが、老人を慕い続けている。
カジキ
老人の釣り綱にかかった巨大な魚。物語のもう一人の主役といえる存在。

見どころ・おもしろいところ

  1. 大魚に向ける老人のまなざし

    何日も綱を握り続けるうちに、老人は大魚に敬意や思いやりを抱くようになります。闘う相手への敬意が、ただの釣りの話をそれ以上のものにしています。老人の魚への見方がどう変わっていくかを追ってみてください。

  2. 説明しないことで伝える

    老人の身の上はほとんど説明されません。それでも、小屋の壁にあった妻の形見の絵や、外されてシャツの下にしまわれた写真といったわずかな描写から背景が浮かび上がります。書かれていない部分を想像しながら読むと、短い作品がぐっと深くなります。

  3. 老人と少年のやりとり

    少年の性格は一言も説明されませんが、老人との素朴な会話から、少年が老人を慕う気持ちが伝わってきます。冒頭と最後に置かれた二人の場面は、海の上の孤独な時間と対になっています。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

海の上で一人の時間が続く

物語の大部分は、老人が小舟の上で一人過ごす場面です。研究者は物語を前日、三日間の海上、翌朝の五つの部分に分けています。一日ごとに区切って読むと、長く感じにくくなります。

文章が素っ気なく感じる

ヘミングウェイは形容詞を避け、短い文をつないで書きます。最初は味気なく感じるかもしれませんが、書かれていないことに意味を持たせる書き方です。声に出すようにゆっくり読むと、文のリズムがつかめます。

野球の話がよく出てくる

冒頭で老人と少年は、アメリカの大リーグの話をします。ジョー・ディマジオは当時の名選手だと知っておくと、野球になじみがなくても会話についていけます。

酷評のあとにキューバで書かれた

前作『河を渡って木立の中へ』は売れたものの、批評家からはヘミングウェイはもう駄目になったとまで書かれ、作者は深く落ち込みました。『老人と海』に取りかかったのは1950年の終わりか1951年の初めごろとされています。

執筆の場所は、キューバにあった作者の家フィンカ・ビヒアでした。草稿は2か月足らずで書き上げられ、作者は200回以上読み返して推敲したといわれています。作者は以前から釣りを好み、自分の船でカジキやマグロを釣っていて、その体験も物語に生かされています。

雑誌が48時間で売り切れた

作品は単行本に先立ち、1952年9月1日号の『ライフ』に一挙に掲載されました。500万部以上刷られた号が48時間で完売し、読者からは作者の復活を祝う投書が相次ぎました。1週間後に出た単行本も、初版5万部に加えて発売初日には第2版の準備が進んでいました。

この作品で作者は1953年にピューリッツァー賞、1954年にノーベル文学賞を受けています。第二次世界大戦後のヘミングウェイにとって、唯一の成功作とされています。1958年にはスペンサー・トレイシー主演で映画になり、1999年にはロシアのアレクサンドル・ペトロフがアニメーション映画にしています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

三日目の朝、大魚は旋回を始め、意識が遠のきかけながらも老人は銛を打ち込んで仕留めます。魚を小舟の横に結びつけて帰路につきますが、血の匂いをかぎつけたサメが次々に襲ってきます。老人は銛を奪われ、オールに結びつけたナイフも折れ、舵棒で叩いて応戦しますが、大魚はしだいに食いちぎられていきます。

真夜中過ぎに港に着いたとき、舟に結ばれていたのは大魚の骨だけでした。翌朝、小屋で眠る老人の傷だらけの手を見て少年は泣き出し、コーヒーを運びます。漁師たちは骨の長さを測り、18フィートあったことがわかります。老人は少年とまた一緒に漁に出る約束をし、再び眠ってライオンの夢を見ます。

よくある疑問

『老人と海』はどんな話?

不漁続きの老漁師が、一人で沖に出て巨大なカジキと何日も闘う話です。登場人物は少なく、ほとんどが海の上の場面です。

実話がもとになっている?

ヘミングウェイは1936年に雑誌『エスクァイア』に、巨大なカジキを釣ったキューバの老漁師の話を200語ほどの記事で書いており、これが原型とされます。話を伝えたのは作者の釣り船ピラール号の船長カルロス・グティエレスで、老人の性格のモデルとされています。

どのくらいの長さ?

中編小説です。英語で約2万7000語で、雑誌『ライフ』の一号に全編が一度に掲載されました。

ノーベル賞と関係がある?

この作品で1953年にピューリッツァー賞を受け、1954年にはノーベル文学賞を受賞しました。スウェーデン・アカデミーは、この作品の技法を授賞の大きな理由に挙げています。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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