- 原題
- The Catcher in the Rye
- 発表
- 1951年
- 初出
- 1951年7月16日、リトル・ブラウン社から刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- すぐ読める
成績不良で寄宿学校を追い出された17歳のホールデンが、家に帰らないままクリスマス前のニューヨークをさまよう数日間の物語です。大人たちの「インチキ」に苛立つ少年の心の動きが、くだけた話し言葉の一人称でそのまま語られます。
こんな人に
- 周りの人の建前にうんざりした覚えがある人に
- 筋よりも語り手の声に引き込まれる小説が好きな人に
- 居場所が見つからない時期の気分を言葉で確かめたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
物語は、主人公ホールデン・コールフィールドが、去年のクリスマス前に起きたことを語る形で進みます。ホールデンは、ペンシルベニアの寄宿学校ペンシー校から成績不良で退学処分を受けたばかりです。歴史のスペンサー先生にあいさつに行けば答案のひどさを読み上げられ、寮では隣室のアックリーやルームメイトのストラドレイターにうんざりさせられます。
ストラドレイターは、ホールデンがかつて親しくしていたジェーン・ギャラハーとデートに出かけます。気が気でないホールデンは、帰ってきた彼とけんかになり、殴られて鼻血を出します。嫌気がさしたホールデンは、追い出される日を待たずに学校を出ることを決めます。
けれども、親に退学を知られたくない彼は、まっすぐ家には帰りません。ニューヨークのホテルに部屋を取り、ナイトクラブや街をさまよいながら、昔の知り合いに電話をかけたり、行きずりの人と話したりして過ごします。会う人の多くが俗っぽく見えて、気分はますます沈んでいきます。
主な登場人物
- ホールデン・コールフィールド
- 語り手で主人公。17歳。気に入らない人や物事を何でも「インチキ」と呼ぶ。
- フィービー
- ホールデンの幼い妹。ホールデンが心を許せる数少ない相手。
- アリー
- 白血病で亡くなったホールデンの弟。ホールデンは彼の野球のミットを大切に思っている。
- ストラドレイター
- ペンシー校のルームメイト。見栄えがよく、ホールデンに作文の代筆を頼む。
- ジェーン・ギャラハー
- ホールデンが一昨年の夏に親しくしていた女の子。話題には何度も出るが本人は登場しない。
- サリー・ヘイズ
- ニューヨークでホールデンがデートに誘う女友達。
- アントリーニ先生
- 以前の学校でホールデンが信頼していた先生。後半に登場する。
見どころ・おもしろいところ
脱線しながら進む語り
ホールデンの語りは、目の前のささいな物から思い出話へと次々に飛んでいきます。英語版Wikipediaは、この作品を彼の思考の流れをそのまま追う文体で書かれたものとしています。寄り道そのものが、彼の気分を伝える仕掛けになっています。
「インチキ」という口ぐせ
ホールデンは、気取った大人や見せかけの態度を「インチキ(phony)」と呼んで拒みます。その反対側に置かれているのが、妹のフィービーや亡くなった弟アリー、子どもたちのような無垢な存在です。誰を「インチキ」と呼び、誰を大切にしているかを見ていくと、彼の心の形が見えてきます。
妹フィービーとの場面
後半、ホールデンはこっそり実家に戻り、妹のフィービーと話をします。ここで彼が本当になりたいものを口にし、題名の意味もわかります。大人びた口をきく妹と、子どものような兄のやりとりが、この作品で最も印象に残る場面の一つです。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
大きな事件が起きない
数日間ニューヨークをさまよう話で、殺人や謎解きのような事件は起きません。筋よりも語り手の気分の移り変わりを追う小説だと思って読むと、退屈に感じにくくなります。
語り手に苛立つこともある
ホールデンは嘘をつき、人を見下し、すぐに落ち込みます。英語版Wikipediaには、主人公の幼い自己陶酔に辟易したという批評家の声も紹介されています。共感するより、観察するつもりで読むと、彼の強がりの下にあるものが見えてきます。
戦争をはさんで育った主人公
ホールデン・コールフィールドは、長編より前からサリンジャーの短編に登場していました。彼の出てくる短編は1941年に『ニューヨーカー』誌に売れたものの、第二次世界大戦のために掲載は1946年まで延びました。1946年には、ホールデンを主人公にした90ページの原稿もいったん採用されましたが、作者自身が取り下げています。
長編は1951年の春に出る予定でしたが、ブック・オブ・ザ・マンス・クラブに選ばれたことで、1951年7月16日の刊行になりました。ホールデンの通うペンシー校は、ペンシルベニアのバレーフォージ陸軍士官学校がモデルではないかと考えられています。
共感と反発の両方を集めた本
刊行直後から『ニューヨーク・タイムズ』などで高く評価され、20世紀の優れた小説として繰り返し名前が挙がってきました。一方で、汚い言葉づかいや性的な描写を理由に、1961年から1982年までアメリカの高校と図書館で最も多く排除された本でもあります。
書かれた言葉は、当時の十代の話し言葉をよく写していると評されています。日本では1952年に『危険な年齢』の題で初めて訳されました。1969年の庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、本作との文体や作風の類似を指摘されています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
妹のフィービーに退学を知られたホールデンは、何もかも気に入らないのだと言われて落ち込みます。考えた末に彼は、ライ麦畑で遊ぶ子どもたちが崖から落ちそうになったら捕まえてやる、そんな人になりたいのだと打ち明けます。両親が帰ってきたため家を抜け出し、アントリーニ先生の家に泊めてもらいますが、夜中に目を覚ますと先生が自分の頭をなでていて、驚いて飛び出し、駅で夜を明かします。
翌朝、ホールデンは森のそばに小屋を建て、口のきけないふりをして一人で世間から隠れて暮らそうと考えます。別れを告げに来た彼に、フィービーは自分もついて行くと言って聞きません。二人はぎくしゃくしたまま動物園へ行き、雨の中で回転木馬に乗る妹を眺めながら、ホールデンは強い幸福感を覚えます。
よくある疑問
- 『ライ麦畑でつかまえて』はどんな話?
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学校を退学になった17歳の少年が、家に帰らずにクリスマス前のニューヨークを数日間さまよう話です。少年自身の話し言葉で語られます。
- タイトルの意味は?
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ロバート・バーンズの詩による歌「Comin’ Thro’ the Rye」がもとになっています。作中でホールデンは、子どもが口ずさむこの歌を耳にします。そして、ライ麦畑で遊ぶ子どもたちが崖から落ちないように捕まえる人になりたいと語り、それが題名の「キャッチャー」につながります。
- 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と同じ作品?
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同じ作品です。日本語訳の題には『ライ麦畑でつかまえて』のほか、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『ライ麦畑の捕手』『危険な年齢』などがあります。
- 映画化されていないのはなぜ?
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1950年に短編の一つが『愚かなり我が心』として映画化された際、サリンジャーが出来に激怒し、以後は自作の映画化を許さなかったためとされています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
