- 原題
- The Adventures of Tom Sawyer
- 発表
- 1876年
- 初出
- 1876年6月にロンドンのチャットー・アンド・ウィンダス社から、12月にアメリカン・パブリッシング社から挿絵入りで刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- すぐ読める
ミシシッピ川のほとりの小さな町で、いたずら好きの少年トムが仲間たちと遊び回ります。ところが真夜中の墓地で殺人を目撃したことから、遊びの日々に本物の危険が入り込んできます。作者が少年時代を過ごしたミズーリ州ハンニバルがモデルの町の物語です。
こんな人に
- 子どものころの夏休みの空気を思い出したい人に
- 大人の言いつけをすり抜ける知恵に笑いたい人に
- 冒険と少しの怖さが混ざった話が好きな人に
あらすじ(ネタバレなし)
1840年ごろ、ミシシッピ川沿いの町セント・ピーターズバーグ。トム・ソーヤーは、優等生の弟シッドと一緒にポリーおばさんに育てられている、勉強嫌いのいたずら少年です。ある日、けんかの罰として塀のペンキ塗りを言いつけられたトムは、仕事を楽しそうに見せて友だちに代わってもらい、そのうえお礼の品まで手に入れてしまいます。
トムは町に引っ越してきた判事の娘ベッキーに夢中になり、町の子どもたちがあこがれる自由な浮浪児ハックとも仲よく遊びます。いぼを治すまじないを試すため、二人は真夜中の墓地へ出かけます。
そこで二人は、インジャン・ジョーが人を殺す場面を目撃してしまいます。ジョーは、酔って気を失っていたマフ・ポッターに罪をなすりつけます。仕返しを恐れたトムとハックは、誰にも話さないと血の誓いを立てますが、無実のポッターは牢に入れられてしまいます。
主な登場人物
- トム・ソーヤー
- 主人公。母を亡くし、おばの家で暮らす。学校をさぼっては遊びに出かけるいたずら好き。
- ハックルベリー・フィン
- トムの親友で「ハック」と呼ばれる。町はずれで暮らす浮浪児で、大人の目を気にしない。
- ポリーおばさん
- トムを引き取って育てている、亡き母の姉。いたずらばかりのトムを毎日のように叱っている。
- シッド
- トムと半分血のつながった弟。トムとは正反対の優等生。
- ベッキー・サッチャー
- 町に越してきた判事の娘。トムが気を引こうと張り切る相手。
- ジョー・ハーパー
- トムの同級生で遊び仲間。悪党のインジャン・ジョーとは別人なので名前に注意。
- インジャン・ジョー
- 墓地の事件にかかわる危険な男。物語の後半までトムたちを脅かす。
見どころ・おもしろいところ
塀のペンキ塗りの場面
罰のはずのペンキ塗りを、やらせてもらえるのは特別なことだと思わせて友だちに任せてしまう第2章は、この作品で最も有名な場面の一つです。人に何かをやりたいと思わせるのはどういうときかを、少年の知恵が鮮やかに見せてくれます。
島での海賊ごっこ
学校に飽きたトムは、ハックとジョー・ハーパーを誘って川の中の島で海賊として暮らし始めます。自由を満喫する一方で、町の大人たちが自分たちを探していると知ったトムは、とんでもない計画を思いつきます。子どもの遊びと町の騒ぎが交差する、笑える場面です。
遊びの話と事件の話
前半は学校や恋や遊びの話が続き、その裏で墓地の殺人の件が少しずつ重くなっていきます。誓いを守るか、無実の人を救うかというトムの迷いが、のんきな日々に緊張を持ち込みます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
エピソードの寄せ集めに見える
全35章は、学校、教会、恋、遊びと、一話ずつ完結するような話が続きます。墓地の事件が全体を貫く一本の筋なので、その件がどう動くかを気にしながら読むとまとまりが見えてきます。
語り手が大人の目線で茶化す
物語は三人称で語られ、ときどき語り手が大人や社会への皮肉をはさみます。子ども向けの話として読むと戸惑う所もありますが、作者は前書きで、かつて子どもだった大人にも読んでほしいと書いています。
時代ゆえの描き方
インジャン・ジョーの描き方や差別的な言葉づかいは、のちに批判されてきました。1840年ごろのミズーリの町の物語として、当時の偏見も含めて書かれていると知っておくと、立ち止まったときに読み進めやすくなります。
少年時代の記憶から書いた初めての長編
マーク・トウェインは旅行記で成功した作家でしたが、『トム・ソーヤーの冒険』は初めて一人で書き上げた長編小説でした。妻と二人の娘を養うため、もう一つのヒット作を必要としていた時期にあたります。
素材になったのは、ミシシッピ川での暮らしを書いた未発表の回想録や、幼なじみとの手紙で呼び起こされた記憶です。弟シッドは作者の実の弟、ポリーおばさんは作者の母、ハックは町の飲んだくれの息子トム・ブランケンシップがモデルとされています。当時の子どもたちの迷信も、作中にそのまま書き込まれています。
続編と、塀塗りが残した名物
1876年6月にロンドンで挿絵なしで出たあと、カナダやドイツではすぐに海賊版が出回りました。アメリカでの挿絵入りの初版は同じ年の12月です。8年後には、ハックを語り手にした続編『ハックルベリー・フィンの冒険』が出ています。
モデルの町ハンニバルでは、毎年夏の祭りで、トムに扮した子どもたちが塀を塗る速さを競います。日本では1919年に佐々木邦が最初に翻訳し、1980年には「世界名作劇場」の枠でテレビアニメにもなりました。映画化は1917年のサイレント映画に始まり、何度も繰り返されています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
裁判の日、トムはハックとの誓いを破って証言し、インジャン・ジョーが真犯人だと明かします。ジョーは法廷から逃げ、ポッターは無罪になりますが、トムとハックは仕返しにおびえます。夏休み、二人は宝探しの最中に、変装したジョーが金貨の山を見つけるのを目撃します。ハックはジョーがダグラス未亡人の家を襲う計画を知り、人を呼んで防ぎます。
同じころ、トムとベッキーはピクニックで入った洞窟で迷い、三日間さまよった末に出口を見つけます。判事は洞窟の入り口を鉄の扉で閉ざしますが、中にはジョーが残っていました。扉を開けると、ジョーは入り口の前で餓死していました。トムはハックと洞窟に戻って金貨を見つけ、二人は大金持ちになります。ハックは未亡人に引き取られますが、窮屈な暮らしに耐えられず逃げ出し、トムの説得でしぶしぶ戻ります。
よくある疑問
- 『トム・ソーヤーの冒険』はどんな話?
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いたずら好きの少年トムが、親友ハックたちと川辺の町で遊び回るうちに、殺人事件や宝探しに巻き込まれていく話です。
- モデルはいる?
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町のモデルは作者が少年時代を過ごしたミズーリ州ハンニバルで、出来事の多くは作者や友人の実体験がもとになっています。トムは作者の3人の友人を合わせた人物とされ、名前はサンフランシスコで知り合った消防士から取られました。
- どのくらいの長さ?
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前書きと本編35章、終章からなる長編です。一話ずつ区切りのある章が多く、少しずつ読み進めやすい作りです。
- 続編はある?
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『ハックルベリー・フィンの冒険』『トム・ソーヤーの探検』『トム・ソーヤーの探偵』があります。いずれもハックの一人称で語られます。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
