海底二万里

海底二万里ヴェルヌ
原題
Vingt mille lieues sous les mers
発表
1870年(雑誌連載は1869〜1870年)
初出
出版者エッツェルの隔週刊の雑誌に1869年3月から1870年6月まで連載
形式・長さ
小説・長編
手ごわさ
ふつう

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ひとことで言うと

船を次々に沈める謎の海の怪物を追っていたフランスの博物学者アロナックスが、その正体である潜水艦ノーチラス号にとらわれの身となります。謎の男ネモ船長とともに世界の海の底をめぐる、ヴェルヌの代表的な冒険小説です。

こんな人に

  • 地図を広げて世界の海を旅する気分を味わいたい人に
  • 正体の見えない人物の謎を少しずつ追うのが好きな人に
  • 昔の人が思い描いた未来の機械に興味がある人に

あらすじ(ネタバレなし)

世界の海で、巨大な角のようなもので船底に穴をあけられる事故が相次いでいます。パリ博物館の教授で海洋生物学者のアロナックスは、巨大なイッカクのような生き物の仕業だと考えます。彼は忠実な助手コンセイユ、腕利きの銛打ちネッド・ランドとともに、アメリカの軍艦エイブラハム・リンカン号に乗って怪物退治の航海に加わります。

数か月の捜索の末、軍艦は日本の沖でついに怪物を見つけて攻撃しますが、反撃を受けて3人は海に投げ出されます。命からがらしがみついた「怪物」の背中は、実は未来的な潜水艦でした。

翌朝、3人は艦内に連れ込まれ、ネモと名乗る船長に引き合わされます。ネモはこの潜水艦ノーチラス号を秘密裏に造り、どの国の政府の手も届かない海の中で暮らしていました。秘密を知った以上、3人を陸へ帰すことはできないと告げられ、3人はノーチラス号で海の底の旅に出ることになります。

主な登場人物

ピエール・アロナックス
語り手。40歳のフランスの博物学者で、パリ博物館の教授。ネモとよく言葉を交わす。
コンセイユ
アロナックスの忠実すぎる助手。30歳。生物の分類にくわしいが、実物を見分けるのは苦手。
ネッド・ランド
カナダ人の銛打ちの名人。40歳ぐらい。短気で、艦内の暮らしに不満を募らせる。
ネモ船長
ノーチラス号の設計者で艦長。年齢も素性もわからない。海を愛し、陸の世界をひどく嫌う。

見どころ・おもしろいところ

  1. 海の底の名所めぐり

    ノーチラス号は紅海のサンゴ礁、ビーゴ湾の海戦で沈んだ船の残骸、南極の氷の壁、そして伝説のアトランティスの遺跡までめぐります。潜水服を着て海底の森を歩く場面もあり、本を閉じても海の中の景色が残ります。

  2. 時代を先取りした潜水艦

    ノーチラス号は電気で動き、海の調査もできる艦として描かれます。英語版Wikipediaによれば、その描写は当時はまだ原始的だった潜水艦の未来の姿を多くの点で正しく言い当てていると評価されています。艦の仕組みをネモが説明する場面は、未来の機械を思い描いた19世紀の想像力を味わえるところです。

  3. 残酷さと優しさをもつ船長

    ネモは残酷な面を見せる一方で、サメに襲われたインドの真珠採りを助けるなど、虐げられた人々に手を差しのべる人物でもあります。彼がなぜ陸を捨てたのかは、物語の中で少しずつほのめかされていきます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

怪物探しの序盤が長い

最初の数章は、怪物をめぐる騒ぎと、軍艦での何か月もの捜索の話です。ノーチラス号が出てくるまでは謎の怪物を追う海洋ミステリーとして読むと、正体が明かされる場面が効いてきます。

ネモの正体はすぐにはわからない

ネモは自分の過去をほとんど語らず、読者もアロナックスと同じく手がかりを拾い集めることになります。ネモの言動に表れる陸への憎しみに注意しておくと、後半の展開が理解しやすくなります。

作家ジョルジュ・サンドの手紙から

ヴェルヌが海の底の物語を書くきっかけは、『気球に乗って五週間』などを読んだ作家ジョルジュ・サンドから、潜水艦が活躍する物語を求める手紙が届いたことだとされています。1867年のパリ万国博覧会で見た水族館や電気の展示、フランス海軍の潜水艦プロンジュール号の模型も、作品の着想を助けました。

ノーチラス号という名前は、1800年にロバート・フルトンが造った初期の潜水艦から取られています。語り手アロナックスの風貌は、25歳のころのヴェルヌ自身がモデルだといわれています。

冒険小説の代表作として

1869年から雑誌に連載され、1871年には挿絵111点入りの豪華版が出ました。刊行当時から評判が高く、『八十日間世界一周』『地底旅行』と並ぶヴェルヌの代表作の一つとされています。

一方で、1872年に出た最初の英訳は原文の4分の1近くを削り、誤訳も多いものでした。映画化も何度かされており、なかでも1954年のディズニー映画『海底二万哩』がよく知られています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

旅の終盤、ネモはかつて祖国を征服され、家族を殺された過去を抱えていることがほのめかされます。大西洋に戻ったノーチラス号は巨大なイカの群れに襲われて乗組員を失い、その後、ネモを苦しめた国の軍艦に攻撃されます。ネモは復讐としてその軍艦に体当たりし、沈めてしまいます。アロナックスは恐れおののき、ネモは亡き妻子の肖像の前にひざまずいて深い沈黙に沈みます。

艦内の規律はゆるみ、ノーチラス号はあてもなくさまよい始めます。ネッドの持ちかけた脱出計画に、アロナックスとコンセイユも加わります。ちょうどそのとき、艦はノルウェー沖の大渦メイルストロームに巻き込まれ、3人はボートで脱出し、近くの島に流れ着きます。ノーチラス号とネモのその後は、この物語の中では明かされません。

よくある疑問

『海底二万里』はどんな話?

海洋生物学者のアロナックスたちが、謎の潜水艦ノーチラス号にとらわれ、ネモ船長とともに世界の海の底を旅する冒険小説です。

「二万里」は海の深さのこと?

深さではなく、海の中を進んだ距離のことです。原題の「二万リュー」は約8万キロで、地球をほぼ2周する長さにあたります。

『海底二万マイル』と同じ作品?

同じ作品です。日本では当初、単位を換算して『海底六万哩(マイル)』と訳され、これが原題の「二万」と混ざって『海底二万マイル』の題が広まりました。『海底二万里』の「里」は、日本の里がフランスのリューとほぼ同じ距離であることから当てられた訳です。

続編はある?

ネモ船長は、のちの長編『神秘の島』にも登場し、アロナックスのことにも触れられます。『グラント船長の子供たち』と合わせて三部作とされることもあります。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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