- 原題
- The Lord of the Rings
- 発表
- 1954年(第1巻・第2巻)、1955年(第3巻)
- 初出
- アレン・アンド・アンウィン社から全3巻で刊行(『旅の仲間』『二つの塔』『王の帰還』)
- 形式・長さ
- 小説・大長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- SF・幻想文学
小さな種族ホビットのフロドが、冥王サウロンの作った「一つの指輪」を滅ぼすための旅に出る物語です。エルフや人間、ドワーフ、魔法使いなど多くの種族が登場し、架空の世界「中つ国」の運命をかけた戦いが描かれます。もとは一つの長編として書かれ、全6部・3巻で刊行されました。
こんな人に
- 長い旅の物語に、腰をすえて付き合いたい人に
- 歴史や言葉まで作り込まれた架空の世界が好きな人に
- 小さな者が大きな役目を背負う話に心を動かされる人に
あらすじ(ネタバレなし)
ホビット庄に暮らすビルボ・バギンズは、誕生日の宴のあと、いとこで跡継ぎのフロドに一つの指輪を残して旅立ちます。魔法使いのガンダルフはこの指輪をあやしみ、17年後、それがかつて冥王サウロンの失った「一つの指輪」だと確かめます。ガンダルフはフロドに、指輪を持ってホビット庄を離れるよう勧めます。
フロドは庭師のサム、いとこのピピンとともに徒歩で出発し、友人のメリーも加わります。一行のあとを、指輪を狙う正体のわからない「黒の乗手」が追ってきます。ブリー村で野伏の馳夫と出会った四人は、彼の案内でエルフの住む裂け谷を目指します。
裂け谷では、指輪をどうするかを話し合う会議が開かれます。指輪は、それが作られたモルドールの滅びの山の火の中で壊すしかないと決まり、フロドはその役目を自ら引き受けます。ホビット、人間、エルフ、ドワーフ、魔法使いから成る九人の仲間が、南へと旅立ちます。
主な登場人物
- フロド・バギンズ
- ホビット庄のホビット。ビルボのいとこで跡継ぎ。指輪を受け継ぎ、旅の中心になる。
- サム(サムワイズ・ギャムジー)
- 庭師のホビット。フロドの旅に最初から付き添う。
- メリーとピピン
- フロドの友人メリーと、いとこのピピン。指輪のことを知ったうえで旅に加わる。
- ガンダルフ
- 魔法使い。指輪の正体を確かめ、フロドにホビット庄を離れるよう勧める。
- 馳夫(アラゴルン)
- ブリー村で一行と出会う野伏。のちに本名がアラゴルンだとわかる。
- ゴクリ
- かつて指輪を持っていた者。原語の名はゴラムで、喉を鳴らす癖から付いた名。
- サウロン
- 指輪を作った冥王。失われた指輪を取り戻し、力を奪い返そうとしている。
見どころ・おもしろいところ
物語に織り込まれた歌と詩
散文の物語のあちこちに、60篇を超える詩や歌が挟まれています。旅の歌、行進の歌、酒の歌から、古い神話を語る歌、なぞなぞ、嘆きの歌までさまざまです。地の文では語られない昔の出来事や人物の背景が、歌の中で明かされることもあります。
古い書物を訳したという体裁
この物語は、ホビットが書いた架空の書物「西境の赤表紙本」をトールキンが訳したという形をとっています。巻末の追補編には、年表や系図、言語や文字についての資料が収められています。物語の外側まで歴史が続いているように感じられるのは、この作り込みによるものです。
ホビットの目に映る大きな世界
物語はイングランドの田園を思わせるホビット庄の静かな暮らしから始まり、やがて中つ国の全体へと広がっていきます。その出来事の多くは、フロドたち四人のホビットの目を通して描かれます。戦や王国のことに詳しくない小さな者の目線なので、読者も一緒に世界を知っていくことができます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
三部作ではなく一つの長編
『旅の仲間』『二つの塔』『王の帰還』の3巻で出ていますが、作者は一つの長い物語として書きました。中身は2部ずつ、全6部に分かれています。巻ごとに完結する話ではないので、1巻目の終わりで止めずに続けて読むと流れがつかめます。
日本語訳は名前も訳されている
瀬田貞二による日本語訳では、作者の意向を受けて、英語に由来する名前のいくつかが日本語に置きかえられています。たとえばStriderは「馳夫」、Rivendellは「裂け谷」です。映画で英語の名前に親しんだ人は、呼び名の対応を頭に入れておくと迷いません。
途中から筋が分かれて進む
物語が進むと、仲間たちの行動はいくつかの筋に分かれ、部ごとに別の筋を追うようになります。どの人物がどこにいるかがわかりにくくなったら、本に付いている地図で位置を確かめながら読むと楽です。
戦争をはさんで書かれた続編
『ホビットの冒険』が評判になり、出版社に続編を頼まれたトールキンは、1937年12月に「新しいホビットの話」を書き始めました。大学教授として働き、収入を補うために試験の採点もしていたため、執筆はゆっくりとしか進みませんでした。完成までには何度も下書きを重ね、手書き原稿は9,250ページにのぼります。
執筆期間の大部分は第二次世界大戦と重なっています。1944年からは、南アフリカで空軍に従軍していた息子クリストファーに章ごとに送りながら書き継ぎました。物語はほぼ1948年に書き終えられ、前の部分の手直しが終わったのは1949年です。
トールキンは古英語の研究者で、『ベーオウルフ』をはじめとする古い文学や神話から多くを汲んでいます。子どものころに過ごした田園が都市に飲み込まれていった体験と、第一次世界大戦の塹壕で戦った経験も、作品に影響したと本人が述べています。
賛否から世界的な人気へ
刊行当初の書評は賛否が分かれました。詩人のW・H・オーデンが傑作と称えた一方で、批評家エドマンド・ウィルソンのように強く退ける声もありました。それでも単行本はよく売れ、1957年には国際幻想文学大賞を受けています。
1960年代にアメリカでペーパーバックが出ると、大学生を中心に広く読まれ、「ガンダルフを大統領に」という標語が現れるほどの社会現象になりました。売り上げは1億5000万部を超え、2003年のBBCの調査ではイギリスで最も愛されている本に選ばれています。
後のファンタジー小説に与えた影響も大きく、「トールキン風」という言葉がオックスフォード英語辞典に載りました。2001年から2003年にかけてはピーター・ジャクソン監督が実写映画三部作を公開し、3作で合わせて17のアカデミー賞を受けています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
旅の仲間はモリアの坑道で炎の魔物バルログに襲われ、ガンダルフはこれと戦って奈落へ落ちます。人間のボロミアは指輪を奪おうとし、フロドはサムとともに二人だけでモルドールへ向かいます。ゴクリの案内で進むなか、裏切りにあい、大蜘蛛シェロブに襲われながらも、二人は滅びの山にたどり着きます。一方、仲間たちは白の魔法使いとして戻ったガンダルフとともにゴンドールやローハンの戦に加わります。
滅びの山の火口で、フロドは指輪の力に抗えず、指輪を自分のものだと宣言してはめてしまいます。そこへ現れたゴクリがフロドの指ごと指輪を食いちぎり、足を踏み外して指輪とともに火の中へ落ちます。サウロンは力を失い、アラゴルンは王となります。故郷に戻ったホビットたちは、サルマンの手下に荒らされたホビット庄を取り戻します。しかし旅で深く傷ついたフロドは、数年後に灰色港から海の彼方へ旅立ちます。
よくある疑問
- 『指輪物語』はどんな話?
-
ホビットのフロドが、冥王サウロンの作った「一つの指輪」を壊すために、仲間とともにモルドールの滅びの山を目指す話です。
- 三部作なの?
-
3巻で出版されたため三部作と呼ばれることが多いですが、作者は一つの長編として書きました。もとは1冊で出すつもりでしたが、第二次世界大戦後の紙不足や費用の事情から3巻に分けられました。1968年には1冊にまとめた版も出ています。
- タイトルの意味は?
-
原題の「The Lord of the Rings」は「指輪の王」という意味で、指輪を作った冥王サウロンを指しています。作中でもガンダルフがサウロンをこの呼び名で呼んでいます。
- 『ホビットの冒険』とのつながりは?
-
『指輪物語』は、1937年に出た『ホビットの冒険』の続編として書き始められました。フロドが受け継ぐ指輪は、前作の主人公ビルボがゴクリのもとから手に入れたものです。書き進めるうちに、前作よりずっと大きな物語になりました。
