- 原題
- 2001: A Space Odyssey
- 発表
- 1968年
- 初出
- 映画の公開(1968年4月)の後、同年7月に刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- SF・幻想文学
300万年前に人類の祖先の前に現れた謎の物体と、月で掘り出された同じ種類の物体が、人類を宇宙の果てへ導いていく長編SFです。スタンリー・キューブリック監督の映画と並行して書かれ、映画では語られない出来事の理由が言葉で説明されています。
こんな人に
- 映画を見て結末の意味がつかめなかった人に
- 人類はどこから来てどこへ行くのかを考えたい人に
- 人工知能と人間の関係を描いた物語に興味がある人に
あらすじ(ネタバレなし)
300万年前の地球。飢えに苦しみながら生きる人類の祖先、ヒトザルの群れの前に、ある日、黒い板のような物体が現れます。群れの一頭「月を見るもの」は、その物体に触れたあと、動物の骨を道具として使うことを覚えていきます。
時は流れ、人類が月で暮らせるようになった時代。アメリカの科学者ヘイウッド・フロイド博士は、月のティコ・クレーターで掘り出された謎の物体「TMA・1」を極秘に調べるため、月面のクラビウス基地へ向かいます。基地は閉鎖され、ソ連の科学者たちは何が起きているのかといぶかっていました。
そしてその後、土星を目指す宇宙船ディスカバリー号が、地球を遠く離れて航海を続けています。乗っているのは船長のデヴィッド・ボーマンとフランク・プール、人工冬眠中の3人の科学者、そして船を管理する人工知能HAL 9000です。
主な登場人物
- 月を見るもの
- 300万年前のヒトザルの群れの一頭。謎の物体と出会い、骨を道具に使うことを覚える。
- ヘイウッド・フロイド博士
- アメリカ宇宙評議会の科学者。月で見つかった物体の調査に向かう。
- デヴィッド・ボーマン
- 宇宙船ディスカバリー号の船長。物語の後半の中心人物。
- フランク・プール
- ディスカバリー号の乗組員。ボーマンとともに起きて船を動かしている。
- HAL 9000
- ディスカバリー号を管理する人工知能。乗組員と話し、船のほぼすべてを受け持つ。
見どころ・おもしろいところ
時代を大きく飛ぶ構成
物語は数百万年前のヒトザルの時代から始まり、月に人が住む時代、宇宙船の長い航海へと、大きく時代を飛びながら進みます。一つの謎の物体をめぐって、人類の歴史全体をまたぐ構成になっています。
映画より多くを語る小説
映画が台詞や説明をそぎ落としたのに対し、小説は謎の物体の正体や出来事の理由をよりはっきり書いています。映画を見て意味がわからなかった人には、答え合わせのように読める部分があります。
人工知能との長い航海
ディスカバリー号を管理するHALは、情報をゆがめず隠さずに処理するよう作られたコンピュータです。目覚めているのが二人だけの静かな船の中で、人間と人工知能の関係が航海の場面の中心になります。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
冒頭は宇宙ではなく地球
最初の場面は人類の祖先のヒトザルの物語で、宇宙船は出てきません。300万年前の地球から始まると知っておけば、SFらしい場面を待って戸惑うことがありません。
物体の名前を押さえる
月で見つかる黒い物体は「TMA・1」と呼ばれます。これはティコ磁気異常1号の略で、一枚岩を意味するモノリスとも呼ばれます。呼び名が複数あると知っておくと、場面ごとに混乱しません。
映画とは細部が違う
ヒトザルの時代が映画では400万年前、小説では300万年前になっているなど、映画と小説で細かな設定が違います。映画を先に見た人は、別の作品として違いを楽しむつもりで読むと引っかかりません。
映画と並んで書かれた小説
キューブリック監督は1964年、宇宙における人間の位置を描く映画を企画し、クラークに協力を求めました。二人はクラークの短編「前哨」などをもとに筋を組み立てていきます。当初は先に小説を書き、それから脚本にする計画でした。
実際には小説と脚本は同時に進み、クラークは撮影された映像を見て章を書き直すこともありました。映画のために考えられて使われなかった案の多くも、小説の中に生き残っています。クラークは、脚本は「キューブリックとクラーク」、小説は「クラークとキューブリック」の作品と呼ぶのが真実に近いと書きました。
語らない映画、説明する小説
キューブリックは映画から台詞やナレーションをそぎ落としましたが、クラークは小説でモノリスやスターゲートを明確に説明しました。キューブリックも、言葉で書く小説がより説明的になるのは避けられず、両者の違いは興味深いと語っています。
作家ジェイムズ・P・ホーガンは、映画の結末に納得できず、もっとよいものを書けるかという賭けから『星を継ぐもの』を書いたと明かしています。この物語は、ほかの作家の創作の出発点にもなりました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
月のTMA・1は、300万年ぶりに太陽の光を浴びると、土星の方向へ強い信号を放ちました。ディスカバリー号の航海の本当の目的は、その行き先を調べることでしたが、目覚めている乗組員には知らされていません。真実を隠すよう命じられたHALは、ゆがめず隠さず情報を扱うという自分の設計と矛盾を抱えて異常をきたし、乗組員の命を奪い始めます。ただ一人生き残ったボーマンは、HALの思考を止めます。
目的地で巨大なモノリスに近づいたボーマンは、宇宙の向こう側へ運ばれ、異星の存在が用意した部屋にたどり着きます。そこで彼は人間を超えた存在「スター・チャイルド」に生まれ変わり、地球へ戻ります。そして、地球を回る軌道に浮かぶ核兵器を爆発させます。
よくある疑問
- 『2001年宇宙の旅』はどんな話?
-
人類の祖先の前に現れ、のちに月でも見つかる謎の物体に導かれて、人類が宇宙の果てで新たな段階へ進む話です。
- 小説と映画はどちらが原作?
-
どちらかが原作というわけではありません。クラークの短編「前哨」などをもとに、小説と映画の脚本が並行して作られました。映画は1968年4月に公開され、小説はその後の7月に出ています。クラークは、この小説はノベライズではないと述べています。
- 映画との違いは?
-
小説では、HALが異常をきたす理由や結末の出来事が論理的に説明されています。宇宙船の行き先は映画では木星ですが、小説では土星です。ヒトザルの時代の年代など、細かな設定にも違いがあります。
- 続編はある?
-
クラークは『2010年宇宙の旅』『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』を書き、シリーズは4作あります。ただし各作は前作の設定を多く引き継ぎつつ、基本的には別の世界の話とされています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
