- 原題
- Childhood’s End
- 発表
- 1953年
- 初出
- 1953年8月、アメリカのバランタイン・ブックスから刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- SF・幻想文学
ある日、巨大な宇宙船が世界中の大都市の上空に現れ、異星人が地球の管理を宣言します。彼らは進んだ知識と技術を人類に与えて豊かな世界をもたらしますが、自分たちの姿だけは決して見せようとしません。異星人に見守られた人類が百年以上をかけてたどる行く末を、哲学的な問いとともに描いた長編です。
こんな人に
- 人類はこの先どこへ向かうのか、と考えるのが好きな人に
- 正体の見えない相手の謎が、少しずつ明かされる話が好きな人に
- 何十年もの時間を一冊で見渡す、大きな物語を読みたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
20世紀後半、アメリカとソ連が宇宙開発を競い合っていたある日、無数の巨大な宇宙船が世界各地の大都市の上空に現れます。乗っている異星人の代表カレルレンは、電波を通じて、これから地球は自分たちが管理すると宣言します。
人々は混乱しますが、異星人は地球を侵略するそぶりを見せません。それどころか優れた知識と科学技術を与え、人々が苦しみから解放された楽園のような世界が実現していきます。人々は彼らを「オーバーロード」と呼ぶようになります。
ただ、オーバーロードは誰にも姿を見せません。地球人で唯一、宇宙船に入ることを許された国際連合事務総長ストルムグレンでさえ、カレルレンとは壁ごしにしか話せません。不満を抱く人々に対し、カレルレンは50年後に姿を見せると約束します。退任を前にしたストルムグレンは、その姿をひと目見ようとある計画を立てます。
主な登場人物
- カレルレン
- オーバーロードの代表で、地球の監督者。訳によって「カレラン」などと表記される。
- リッキ・ストルムグレン
- 国際連合事務総長。第1部の中心人物で、カレルレンと会える唯一の地球人。
- ジャン・ロドリックス
- 第2部から登場する天文学者。宇宙開発を禁じられたことに不満を持つ。
- ルパート・ボイス
- 超常現象の研究書を集めている人物。ジャンとは義理の兄弟にあたる。
- ラシャヴェラク
- ルパートの蔵書を調べに来るオーバーロード。後半でも重要な役を担う。
見どころ・おもしろいところ
姿を見せない支配者
オーバーロードは人類を助けながら、自分たちの姿だけは隠し続けます。なぜ見せないのか、見せたら何が起きるのかという謎が、第1部を引っぱる大きな力になっています。50年後の約束を、読者も登場人物と一緒に待つことになります。
時代が大きく飛ぶ構成
物語は第1部のあと、一気に50年後へ飛びます。主人公も時代ごとに替わり、一人の人生ではなく、人類全体の歩みが主役になっていきます。読み終えたときには、はじめの場面がずいぶん遠い昔に感じられるはずです。
楽園の陰にあるもの
オーバーロードのもとで、人類は豊かで平和な黄金時代を迎えます。けれどもその代わりに、新しいものを生み出す力が衰えていき、宇宙への進出も禁じられます。満ち足りた暮らしが何を失わせるのかを考えながら読むと、物語の問いが見えてきます。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
オーバーロードとは何か
オーバーロード(Overlord)は、地球人が異星人につけた呼び名で、日本語では「上帝」と訳されることもあります。侵略者ではなく、地球を監督する立場の者として描かれていると知っておくと、序盤の空気がつかみやすくなります。
部ごとに中心人物が替わる
プロローグと三つの部でできていて、第1部はストルムグレン、第2部以降はジャンたち別の人物が中心になります。批評家からは、大きな歴史と小さなエピソードの釣り合いが悪いという指摘もありました。人物より時代の流れを追うつもりで読むと、場面の切り替わりに戸惑いません。
冒頭の場面は版で違う
1990年の新版でクラークは冒頭を書き直し、舞台を21世紀に、目的地を月から火星に変えました。そのため、版によって最初の章の内容が違います。両方を収めた版もあります。どちらの冒頭でも、その後の物語は同じです。
短編から生まれた長編
物語の芽は、クラークが1946年7月に書いた短編「守護天使」でした。この短編はいくつもの編集者に断られ、のちに別の作家が結末を書き直した版が雑誌に載っています。クラークは1952年2月から長編化に取りかかり、敬愛するオラフ・ステープルドンのような人類の進化と終末という大きな構想を取り入れて書き上げました。
初版の冒頭に描かれた米ソの宇宙開発競争は、1975年より後の未来の出来事として設定されていました。実際には1969年に人類が月に降り立ったため、クラークは1990年に冒頭を書き直しています。刊行の直前には、新婚旅行中に校正を読ませてくれた妻への献辞が添えられました。
クラーク最高傑作との声
刊行から2か月で、初版の21万部が売り切れました。ニューヨーク・タイムズの書評は、クラークをステープルドンやC・S・ルイス、H・G・ウェルズと並べ、SFで哲学的な考えを語るごく少数の作家の一人と評しています。読者や批評家からは、クラークの最高傑作とみなされることの多い作品です。
三島由紀夫もこの作品を読み、読後の不快感を認めながらも傑作と呼ぶことをためらわないと書きました。音楽の世界でもピンク・フロイドやジェネシスなどが着想を得ており、SFの外にまで影響が広がっています。1997年にはBBCがラジオドラマにし、テレビのミニシリーズも作られました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
50年後に姿を現したオーバーロードは、人類が昔から描いてきた悪魔そっくりの姿をしていました。人々はやがてそれを受け入れます。天文学者ジャンはオーバーロードの補給船に密航し、彼らの母星へ向かいます。
その後、子どもたちに透視や念動力のような力が現れ始めます。オーバーロードは、宇宙を統べる巨大な精神「オーバーマインド」に仕え、人類が新しい存在へ移り変わるのを見届ける役目を負っていたのでした。子どもたちは一つの意識に溶け合い、新たな子は生まれなくなります。地球に戻ったジャンは、自分が最後の人類であることを知ります。彼は地球に残ることを選び、地球が光の柱とともに消えていく様子を、去りゆくオーバーロードへ報告し続けます。
よくある疑問
- 『幼年期の終り』はどんな話?
-
突然やって来た異星人の管理のもとで、人類が平和を手に入れ、やがて大きな変化を迎えるまでを描いた話です。異星人の正体と目的が、物語の中心の謎になっています。
- もとになった作品はある?
-
クラークが1946年に書いた短編「守護天使」がもとになっています。これを書き広げたものが、長編の第1部になりました。
- 『2001年宇宙の旅』と関係はある?
-
直接の続編ではありません。1960年代にスタンリー・キューブリックがこの作品の映画化に関心を持ちましたが、権利が他の人の手にあったため、代わりにクラークと『2001年宇宙の旅』を作りました。人類の進化というテーマは、そちらにも受け継がれています。
- どのくらいの長さ?
-
プロローグと三つの部からなる長編小説です。第1部、第2部、第3部の間で、物語の時代が数十年単位で進んでいきます。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
