リア王

リア王シェイクスピア
原題
King Lear
発表
1606年頃(初演は1605年〜1606年頃)
初出
1608年に四折版、1623年にファースト・フォリオで刊行
形式・長さ
戯曲・中編
手ごわさ
ふつう

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ひとことで言うと

老いたブリテン王リアは、国を3人の娘に分け与えようと、父への愛を言葉で示せと命じます。口のうまい上の二人に国を譲り、正直な末娘を追い出したことから、王の運命が狂い始めます。親子の情と裏切りを描く、シェイクスピアの四大悲劇の一つです。

こんな人に

  • 親子のあいだで言葉が届かずにもどかしい思いをした人に
  • 耳に心地よい言葉と本心の違いについて考えたい人に
  • 二つの家族の物語が重なり合う、壮大な構成の劇が好きな人に

あらすじ(ネタバレなし)

ブリテンの王リアは、高齢のため退位することにし、国を3人の娘に分け与えると宣言します。ただし、娘たちはそれぞれ父への愛を言葉で示さなければなりません。長女ゴネリルと次女リーガンは、父を喜ばせる言葉を競うように並べます。

ところが末娘のコーディリアは、娘としての務めにふさわしいだけ父を愛していると、飾らずに答えます。激怒したリアはコーディリアを勘当し、彼女の取り分を姉二人に分けてしまいます。王をいさめた忠臣ケント伯も追放されます。持参金のなくなったコーディリアは、その誠実さに心を打たれたフランス王の妃となります。

一方、グロスター伯の家では、庶子のエドマンドが、生まれのために見下されることを恨んでいました。彼は偽の手紙を使って異母兄エドガーを陥れ、家督を奪おうとたくらみます。王の家と伯爵の家、二つの家族で、親が子の本心を見誤る出来事が同時に動き始めます。

主な登場人物

リア王
ブリテンの老王。気性が荒く、娘たちの言葉の裏を見抜けない。
ゴネリルとリーガン
リアの長女と次女。ゴネリルはオールバニ公の妻、リーガンはコーンウォール公の妻。
コーディリア
リアの末娘。実直な物言いで勘当され、フランス王の妃となる。
ケント伯
リアの忠臣。追放されたあと、姿を変えて「カイアス」と名乗り、王に仕え続ける。
グロスター伯
リアに仕える伯爵。嫡子エドガーと庶子エドマンドの父。
エドガーとエドマンド
エドガーはグロスター伯の嫡子。異母弟エドマンドは野心家で、兄を追い落とそうとする。
道化
リアに付き従う道化師。皮肉な言葉で、たびたび王の本質を突く。

見どころ・おもしろいところ

  1. 二つの家族が重なる筋

    リアと3人の娘の話に、グロスター伯と2人の息子の話が並行して進みます。どちらも親が子の本心を取り違える物語で、片方の出来事がもう片方を照らし返します。この二重の筋が、四大悲劇の中で最も壮大な構成と評される理由の一つです。

  2. 嵐の荒野をさまよう王

    娘たちに冷たくされたリアは、怒りのあまり嵐の中へ飛び出していきます。王位も家も失った老人が、荒野で道化や物乞いと身を寄せ合う場面は、劇の中ほどに置かれた大きな山場です。権力を手放した人間に何が残るのかが、嵐のなかで問われます。

  3. 真実を語る道化

    リアに付き従う道化は、冗談めかした言葉で王の愚かさをずばりと言い当てます。元になった先行作にはこの道化が登場しません。誰も王に言えないことを言える立場の人物として、シェイクスピアが加えた役です。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

二つの家の人物表を作る

戯曲はせりふだけで進み、王家と伯爵家の人物が入り混じって登場します。リア家とグロスター家を左右に分けた人物表を作り、娘たちの夫も書き添えておくと、誰がどちらの側にいるかを見失いません。

変装する人物に注意する

追放されたケント伯は別人を名乗って王に仕え、家を追われたエドガーは狂った物乞いのふりをします。同じ人物が別の名前で登場するので、ト書きや人物の名前の表記を気にしながら読むと混乱しません。

版によって中身が違う

『リア王』には1608年の四折版と、1623年のファースト・フォリオという二つの原本があり、場面や台詞が異なります。二つを合成した版と、別々に扱う版があるので、解説を読むときは自分の本がどちらに当たるかを確かめてください。

伝説の王と先行する劇

『リア王』は、1606年12月26日に宮廷で上演された記録が残り、1606年末より前に書かれたと考えられています。初演はシェイクスピアの劇団の本拠地グローブ座だったとされています。主な材源は、史劇でも使われたホリンシェッドの『年代記』です。

同じ王を扱った作者不詳の劇『レア王』もありました。こちらはめでたく終わる話でしたが、シェイクスピアは物語を救いのない悲劇に作り変えています。どちらが先に書かれたのかについては、研究者のあいだで意見が分かれています。

書き換えられ、また戻された結末

1681年、ネイアム・テイトは結末を幸福なものに書き直し、リアが王位に戻る筋にしました。この改作は150年以上にわたって舞台で上演され、もとの『リア王』が演じられるようになったのは1838年のことです。昭和初期の日本の小学校の国語教科書でも、子ども向けに幸せな結末に変えられていました。

20世紀以降は映像化も多く、1971年にはピーター・ブルックが映画にしました。黒澤明は舞台を日本に移して映画『乱』を制作しています。ジェーン・スマイリーがこの劇をもとに書いた小説『大農場』は、ピューリッツァー賞を受けました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

国を譲られたゴネリルとリーガンは、父の従者を減らせと迫って冷たく扱い、リアは嵐の荒野をさまよううちに正気を失っていきます。グロスター伯はリアを助けようとしたことをエドマンドに密告され、コーンウォール公に両目をえぐられます。追い出された伯爵は、物乞いに身をやつした息子エドガーとは気づかずに、彼に手を引かれてドーバーへ向かいます。

コーディリアはフランス軍とともに上陸し、父と和解しますが、軍は敗れ、二人は捕らえられます。リーガンはゴネリルに毒を盛られて死に、エドマンドはエドガーとの決闘に敗れ、ゴネリルも自ら命を絶ちます。死の間際にエドマンドが二人を殺す命令を明かしますが間に合わず、リアは獄中で殺されたコーディリアの亡骸を抱いて現れ、悲しみのうちに息を引き取ります。

よくある疑問

『リア王』はどんな話?

退位する老王リアが、口先だけの上の二人の娘に国を譲り、正直な末娘を追い出したことから、すべてを失っていく悲劇です。グロスター伯の親子の物語が並行して描かれます。

モデルはいる?

ブリテンの伝説の王レイアがモデルです。ホリンシェッドの『年代記』などがもとになっており、グロスター伯と息子たちの話はフィリップ・シドニーの『アーケイディア』から取られています。

どのくらいの長さ?

全5幕の戯曲です。王家と伯爵家の二つの筋が並行して進むため、登場人物は多めです。

黒澤明の『乱』と関係ある?

あります。黒澤明は1985年に、『リア王』をもとにして映画『乱』を制作しました。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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