銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜宮沢賢治
発表
1934年(昭和9年)、作者の死後に刊行(初稿は1924年ごろ)
初出
作者の死後、1934年刊行の文圃堂版『宮澤賢治全集』第三巻に収録
形式・長さ
童話・中編
手ごわさ
ふつう
「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」
書き出し

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ひとことで言うと

星祭りの夜、ひとりぼっちの少年ジョバンニは、気がつくと親友カムパネルラと夜空を走る銀河鉄道に乗っていました。白鳥や鷲の停車場をめぐり、不思議な乗客たちと出会う旅の物語です。作者が亡くなるまで書き直し続け、未完の草稿のまま遺された作品でもあります。

こんな人に

  • 居場所がないと感じた夜を過ごしたことがある人に
  • 星や鉄道、化石といったものに理由もなく惹かれる人に
  • 読むたびに意味が変わる、余白の多い物語が好きな人に

あらすじ(ネタバレなし)

ジョバンニの家は貧しく、母は病気で寝ています。父は北の海へ漁に出たまま長く帰らず、その父のことで同級生のザネリたちにからかわれています。朝は新聞配達、放課後は活版所で活字を拾う仕事をしているため、授業中もぼんやりしがちです。同級生のカムパネルラだけは、からかわれるジョバンニを気の毒そうに見ています。

銀河のお祭りであるケンタウル祭の夜、母に飲ませる牛乳を受け取りに出たジョバンニは、祭りを楽しむ同級生たちと別れ、一人で町はずれの丘へ登ります。天気輪の柱の下に寝ころび、星空を見上げていると、どこからか「銀河ステーション」という声が響き、目の前がまばゆい光に包まれました。

気がつくと、ジョバンニは小さな列車の座席に座っていました。すぐ前の席には、ぬれたように黒い上着を着たカムパネルラが乗っています。こうして二人の銀河をめぐる旅が始まります。

主な登場人物

ジョバンニ
孤独で空想好きな少年。病気の母を支えるため、学校の前後に働いている。
カムパネルラ
ジョバンニの同級生で親友。裕福な家の優等生。「カンパネルラ」と書く本もある。
ザネリ
同級生。仲間と一緒にジョバンニの父のことでからかう。
ジョバンニの母
病気で床についている。ジョバンニが牛乳を取りに行く理由になる。
鳥捕り
銀河鉄道の乗客。雁や鷺を捕まえて押し葉にし、食べ物として売っている。
青年と姉弟
旅の途中で乗りこんでくる、十二歳ほどの姉かおる子、六歳ほどの弟タダシと、その家庭教師。

見どころ・おもしろいところ

  1. 星座をたどる停車場

    列車は北十字から天の川に沿って南へ走り、白鳥の停車場では二十分停まります。二人はその間にプリオシン海岸でくるみの化石を拾い、牛の祖先の骨を掘る学者に出会います。星座が駅や風景になっている、賢治ならではの旅の行程です。

  2. ふしぎな乗客たち

    鳥捕りが分けてくれた雁は、食べてみるとお菓子の味しかしません。燈台守や、旅の途中で乗ってくる姉弟など、乗客はそれぞれに事情を抱えています。彼らとの会話が、ジョバンニの心を少しずつ動かしていきます。

  3. ジョバンニだけが持つ切符

    車内で検札があり、ジョバンニは自分の切符がどこまででも行ける特別な切符だと知らされます。なぜ自分だけがその切符を持っているのか。この問いを頭の片隅に置いて読むと、旅の意味が少しずつ見えてきます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

汽車に乗るまでが長い

「午後の授業」「活版所」「家」と、銀河鉄道に乗るまでに数章あります。ジョバンニの孤独を描くための助走なので、ここでの居場所のなさを覚えておくと、旅の場面の感じ方が変わります。

後半は章の区切りがない

「ジョバンニの切符」の章からあとは、作品のおよそ半分が一続きになっています。区切りがないので、停車場や新しい乗客が現れたところを目印に、ひと区切りずつ休みながら読むと楽です。

本によって結末が違う

未完の草稿だったため、古い版にはブルカニロ博士という人物が登場する別の形の結末が収められていました。1974年の全集以降は博士の出ない最終形が基本になっているので、古い本を読むときは版の違いに注意してください。

十年近く書き直された草稿

初稿は1924年ごろに書かれ、賢治は晩年の1931年ごろまで推敲を重ねました。1933年に賢治が亡くなったとき、作品は草稿のまま遺され、翌1934年の文圃堂版全集で初めて世に出ました。

1974年の筑摩書房版全集の編集で原稿が詳しく調べられ、第1次稿から第4次稿まで三回の大きな改稿があったことが明らかになりました。「銀河鉄道の夜」という題名や冒頭の三章は、最後の第4次稿で加えられたものです。それまでの稿では、旅は博士の実験で見た夢という設定でした。

多様な解釈と翻案

未完の草稿であることや、多くの造語が使われていることから、研究者のあいだでもさまざまな解釈が生まれてきました。北十字から南十字までの旅は、二つの十字のそばにある石炭袋を冥界と現世を結ぶ通路として組み立てられたとされます。カムパネルラの行方についても定説はありません。

映画や演劇、プラネタリウム番組など、派生作品は数多く作られています。1985年の劇場アニメ映画は杉井ギサブロー監督、細野晴臣の音楽で、ますむらひろしの漫画をもとに登場人物を猫の姿で描きました。この映画は毎日映画コンクールの大藤信郎賞を受けています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

南十字のサウザンクロスで乗客の多くが降り、ジョバンニとカムパネルラだけが残ります。二人は「ほんとうのみんなのさいわい」のためにどこまでも一緒に行こうと誓いますが、車窓に現れた石炭袋を見たあと、カムパネルラは「あすこにいるのぼくのお母さんだよ」と言い残して姿を消します。

丘の上で目を覚ましたジョバンニは、牛乳を受け取って川へ向かい、子どもが水に落ちたと知ります。カムパネルラは川に落ちたザネリを助けたあと、自分は流されて行方がわからなくなっていました。カムパネルラの父から、ジョバンニの父がもうすぐ帰ってくると告げられたジョバンニは、胸をいっぱいにして母のもとへ走ります。

よくある疑問

『銀河鉄道の夜』はどんな話?

孤独な少年ジョバンニが、星祭りの夜に親友カムパネルラと銀河鉄道に乗り、天の川をめぐる旅をする話です。賢治の童話の代表作の一つとされています。

『銀河鉄道の夜』は未完成なの?

作者が亡くなったとき、草稿のまま遺されました。四回にわたって書き直されたことがわかっており、最後の第4次稿が「最終形」として読まれていますが、賢治がそれを完成稿としたわけではありません。

カムパネルラにモデルはいる?

定説はありません。盛岡高等農林学校で賢治と親しかった保阪嘉内や河本緑石、賢治の妹のトシなどが、研究者によってモデルとして挙げられています。

『銀河鉄道の夜』は無料で読める?

著作権が切れているため、青空文庫で無料で読めます。新字新仮名の版が公開されています。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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