ロンドン郊外に落ちてきた巨大な円筒から火星人が現れ、目に見えない熱線と三本脚の戦闘機械でイギリスを蹂躙していきます。逃げまどう一人の男が、のちに回顧録の形で振り返る、宇宙人による地球侵略の物語の原点です。
こんな人に
- 宇宙人の侵略ものの原点を知りたい人に
- パニックの中で人がどう振る舞うかに関心がある人に
- 実在の町が舞台になる臨場感のある話が好きな人に
あらすじ(ネタバレなし)
6月のある金曜日の未明、イングランドの空に緑色の流れ星が現れます。天文学者のオーグルビーが落下地点を探すと、ロンドンの南西、ウォーキングの近くに、直径30ヤードほどの巨大な円筒が埋まっていました。
夕方、語り手の「私」を含む見物人が集まるなか、円筒のふたが開き、醜い姿の火星人が姿を現します。相手に知性があるなら、こちらも知性があることを示そうと、オーグルビーたちは代表団を作って近づきます。ところがその瞬間、目に見えない熱線が人々を焼き払ってしまいます。
翌日、軍隊が攻撃を始めますが、夕方には「私」の家のあたりまで熱線が届くようになります。「私」は馬車を借りて、妻をいとこの住むレザーヘッドへ避難させます。馬車を返しに戻る真夜中、新たな円筒が落ち、家より背の高い三本脚の戦闘機械が現れて、あたりを破壊し始めます。
主な登場人物
- 私
- 語り手。名前は出てこない。ウォーキングに住み、火星人の侵略を間近で体験する。
- 私の弟
- ロンドンに住む「私」の弟。第1部の一部では、弟が体験した首都の大混乱が語られる。
- 私の妻
- 「私」の妻。侵略の始まりとともに、いとこの住むレザーヘッドへ避難する。
- 砲兵
- 火星人との戦いで生き残った兵士。「私」と出会い、人類のこれからについて語る。
- 副牧師
- 逃げる途中で「私」が出会う教会の副牧師。破壊を前にして心を乱していく。
- オーグルビー
- 最初に円筒の落下地点を見つける天文学者。
見どころ・おもしろいところ
三本脚の戦闘機械
火星人は、家より高い三本脚の戦闘機械(トライポッド)に乗って現れ、熱線と黒い毒ガスで軍隊をなぎ倒します。タコのような火星人と強力な機械による侵略というイメージは、この作品の影響で広まったとされています。
弟が見たロンドン脱出
物語の途中で、語りはロンドンにいる「私」の弟の体験に切り替わります。首都から逃げ出す群衆の大混乱や、海峡の港での戦いが描かれ、郊外の一人の視点からは見えない侵略の規模が伝わってきます。
侵略される側の大英帝国
当時のイギリスは、進んだ技術で世界に帝国を広げる側でした。この作品では、そのイギリスが自分たちよりはるかに優れた技術を持つ相手に侵略されます。ウェルズは、ヨーロッパの植民地化がタスマニアの先住民にもたらした悲劇が着想のもとだったと述べています。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
二部構成で語り手が動く
物語は「火星人の来襲」と「火星人に支配された地球」の二部に分かれています。第1部の途中に弟の話が挟まるので、「私」と弟のどちらの話かを意識すると混乱しません。
地名がたくさん出てくる
ウォーキング、レザーヘッド、テムズ川など、実在の地名が次々に出てきます。ウェルズは自転車で近所を回り、火星人に壊させる場所を選んだと自伝に書いています。地図を見ながら読むと、逃げる道筋が具体的に追えます。
ウォーキングを自転車で回って
ウェルズは1895年に結婚してサリー州のウォーキングに移り住み、午前中は散歩や自転車で近所を回り、午後に執筆していました。人のいなくなったロンドンという着想に、兄弟が話していた別の惑星からの侵略者の考えが結びついて、物語の骨組みができたといいます。
作品はまず1897年4月から12月まで『ピアソンズ・マガジン』に連載され、ウェルズは200ポンドの原稿料を受け取りました。アメリカでは単行本の前に、舞台をニューヨークやボストンに移した無断の連載まで現れています。
ラジオ、映画、そして町の名物に
刊行当時から読者にも批評家にも好評で、雑誌連載よりも単行本でさらに評判を高めました。1938年にはオーソン・ウェルズが舞台をアメリカに移したラジオドラマにし、この放送が彼の名声を一気に高めました。
映画化も多く、1953年にはジョージ・パルの製作、2005年にはスティーヴン・スピルバーグの監督で作られています。舞台となったウォーキングの駅の近くには、1998年に作られた高さ約7メートルの戦闘機械の像が立っています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
第2部で「私」は副牧師とともに崩れた家の下に閉じこめられ、火星人が人間の血を吸って生きていることを目撃します。追い詰められた副牧師は錯乱し、火星人の機械に連れ去られます。脱出した「私」は、赤い草に覆われたロンドン近郊で再び砲兵と出会い、地下で生き延びる計画を聞かされます。
人影の消えたロンドンに入った「私」は、動かない戦闘機械から奇妙な鳴き声を聞きます。死を覚悟して近づくと、火星人はすべて死んでいました。人間の武器ではなく、地球の病原菌に免疫を持たなかったために倒れたのです。「私」は心身を病みながらもウォーキングに戻り、妻と再会します。人類は火星人の死体と機械を調べて科学を進めますが、再び侵略される可能性を意識し続けることになります。
よくある疑問
- 『宇宙戦争』はどんな話?
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地球に降り立った火星人がイギリスを攻撃し、人々が逃げまどう様子を、生き延びた一人の男が振り返って語る話です。
- ラジオドラマでパニックが起きたのは本当?
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1938年にアメリカのCBSで、オーソン・ウェルズの番組がこの作品をラジオドラマにしました。全米でパニックが起きたと長く語られてきましたが、日本語版Wikipediaによれば、のちの研究でパニックはほとんど確認できず、その説は否定されています。
- 原題の意味は?
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原題「The War of the Worlds」は、直訳すると「世界と世界の戦争」です。地球人の世界と火星人の世界、二つの世界の争いという意味です。
- タコのような火星人のイメージはこの作品から?
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大きな頭と退化した手足を持つタコのような火星人の姿は、この作品の影響で広まったとされています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
