タイム・マシン

タイム・マシンウェルズ
原題
The Time Machine
発表
1895年
初出
『ニュー・レビュー』誌に1895年1月号から5月号まで連載。単行本は同年5月にハイネマン社とヘンリー・ホルト社から刊行
形式・長さ
小説・中編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

時間を自由に旅できる機械を作ったヴィクトリア朝の科学者が、紀元80万2701年の世界を訪れて戻ってきた体験を語ります。そこで出会った小柄で無邪気な未来の人類は、なぜか夜の闇をひどく恐れていました。「タイムマシン」という言葉そのものを生んだ中編です。

こんな人に

  • 遠い未来の人類がどうなっているかを想像するのが好きな人に
  • 冒険小説の形で社会の問題を考えたい人に
  • 短めのSFの古典から読み始めたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

ヴィクトリア朝のイギリス。ある科学者の家で毎週開かれる夕食会で、主人の科学者が客たちに、時間を自由に旅できる機械の発明に成功したと打ち明けます。客たちは半信半疑のまま帰ります。翌週の夕食会、主人は遅れて現れ、ひどく疲れきった様子で、遠い未来を旅してきたと語り始めます。

彼が降り立ったのは、紀元80万2701年の世界でした。そこには、朽ちかけた未来的な建物の中で、果物を食べて暮らす小柄で子どものような人々、エロイがいました。彼らは無邪気で悩みがなさそうに見えますが、話は通じにくく、なぜか暗闇、とりわけ月のない夜をひどく恐れています。夜に仲間が消えても、誰も気にかけません。

溺れかけたエロイの娘ウィーナを助けた主人公は、彼女になつかれます。ところがある日、拠点に戻ると、置いてあったタイムマシンが消えていました。動かすためのレバーは自分が持っています。いったい誰が、どこへ運んだのか。主人公は未来の世界の謎に踏み込んでいきます。

主な登場人物

タイム・トラベラー
タイムマシンを発明した科学者。本名は最後まで明かされず、語り手からこう呼ばれる。
語り手
夕食会の客の一人。タイム・トラベラーから聞いた話を読者に伝える役。
ウィーナ
主人公が川で助けたエロイの娘。言葉はほとんど通じないが、主人公になつく。
エロイ
未来の地上で暮らす小柄な人々。果物を食べ、遊んで過ごす。

見どころ・おもしろいところ

  1. タイムマシンという発明

    時間の中を自分の意思で行き来できる乗り物という考えは、この作品によって広まったとされます。「タイムマシン」という言葉もウェルズの造語です。のちの無数の時間旅行の物語の出発点を、原典で確かめられます。

  2. 未来の謎を推理する主人公

    主人公は廃墟や人々の様子から、この世界がどうしてこうなったのかを推理します。ところが手がかりが増えるたびに仮説が書き換わります。読者も一緒に謎を解いていく、探偵小説のような楽しみがあります。

  3. ウィーナとの短い交流

    言葉の通じない未来の娘ウィーナは、命を救ってくれた主人公を慕ってついて回ります。主人公もやがて、彼女を現代に連れ帰ろうと心に決めます。無邪気なエロイの中で、彼女だけが主人公と心を通わせる存在になっていきます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

話を聞いた人が語る形式

物語を語るのは夕食会の客の一人で、その中でタイム・トラベラーが自分の旅を語ります。語り手と主人公が別の人だと知っておくと、冒頭と結末の場面の意味がつかみやすくなります。

結論を急がずに読む

主人公は未来の世界について早い段階で結論を出しますが、それは途中でくつがえります。主人公の説明をうのみにせず、自分でも理由を考えながら読むと、後半の驚きが大きくなります。

学生時代の短編から雑誌連載へ

ウェルズは1888年、大学新聞のために、時間旅行の考えを取り入れた短編「時の探検家たち」を書きました。その後、雑誌編集者W・E・ヘンリーの求めでこれを連作エッセイに仕立てて連載し、ヘンリーが『ニュー・レビュー』誌の編集者になると、1895年1月号から5月号まで小説として連載しました。

作中に描かれる地下の世界には、作者自身の体験が反映されています。ウェルズの父は店にいないとき地下の台所で過ごし、母は地下に使用人の住まいがある家で家政婦として働いていました。10代前半で生地屋の徒弟になったウェルズ自身も、地下室で何時間も働いていました。

二つの版と削られた場面

単行本は1895年5月にハイネマン社とヘンリー・ホルト社から出ましたが、本文が少しずつ異なり、のちの版はハイネマン版を底本にしています。雑誌連載時にあった、さらに未来の荒野を描いた場面は、作者の意向で単行本では削られました。

ウェルズは後年、この作品を未熟な作だと自評していますが、批評家からは主題が高く評価されてきました。現代では、不平等と階級の分裂を風刺した作品として読まれています。1960年にはジョージ・パル監督、2002年にはウェルズのひ孫サイモン・ウェルズ監督で映画化されました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

主人公は、地下の暗闇で暮らす猿のような種族モーロックがタイムマシンを持ち去ったと気づきます。エロイが何不自由なく暮らせるのは、モーロックが地下で機械を動かしているからでした。そしてモーロックは、夜の闇にまぎれてエロイをさらい、食料にしていたのです。主人公は、エロイが上流階級の、モーロックが労働者階級の遠い子孫だと考えます。

主人公はウィーナと博物館の廃墟でマッチと武器を手に入れますが、帰り道の森でモーロックの群れに襲われ、火事の中でウィーナを失います。タイムマシンを取り戻した彼は、さらに遠い未来へ逃れ、生き物が死に絶えた終末の地球を見て、出発から3時間後の現在に戻ってきました。話を信じない客たちに、彼はウィーナにもらった花を見せます。翌日、彼は再び旅立ち、3年たっても戻っていないと語り手は告げます。

よくある疑問

『タイム・マシン』はどんな話?

タイムマシンを発明した科学者が、80万年後の未来で目にした人類の姿と、そこで巻き込まれた騒動を語る話です。

「タイムマシン」という言葉はこの作品から?

そうです。「タイムマシン」という言葉はウェルズが作ったもので、意図して時間を移動できる乗り物という考えを広めた作品とされています。

どのくらいの長さ?

中編小説です。雑誌に5か月にわたって連載された分量で、長編よりずっと短く読めます。

主人公の名前は?

原作では本名が明かされず、「タイム・トラベラー」と呼ばれるだけです。映画化作品などでは、別の名前がつけられたことがあります。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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