H・G・ウェルズ
H. G. Wells
1866年〜1946年・イギリス
タイムマシン、火星人の侵略、透明人間など、のちのSFでおなじみになる題材を次々に生み出したイギリスの作家です。ヴェルヌと並んで「SFの父」と呼ばれ、後半生は社会や政治を論じる著述家としても活躍しました。
最初の一冊
1890年代に続いたSFの古典の最初の一作で、短く読みやすく、未来を描きながら当時の階級社会を見つめる作風がよく表れているからです。
下層中流の家から科学の道へ
ウェルズはケント州ブロムリーの商人の家に生まれました。家は下層の中流階級で、父がけがをしたあとは、母がメイドとして働く屋敷に身を寄せて育ちます。奨学金を得てロンドンの科学師範学校に入り、進化論の擁護者ハクスリーのもとで生物学を学びました。
教員をめざしたものの病気などで道を断たれ、ジャーナリストとして文筆の世界に入ります。1895年の『タイム・マシン』から『透明人間』『宇宙戦争』と、1890年代にSFの古典となる作品を立て続けに発表しました。晩年まで糖尿病などの病と闘い、1946年にロンドンの自宅で亡くなっています。
小説家から未来を論じる人へ
ウェルズの小説は、科学の知識を使って、遠い未来や宇宙からの侵略者といった途方もない状況を描き出します。『モロー博士の島』では動物の知性化を、『解放された世界』では原子核反応を使った爆弾による世界戦争を描くなど、後世のSFでくり返し扱われる題材を数多く生み出しました。その奥には、階級社会や帝国主義への批判がこめられています。
1900年代に入ると文明批評の色の濃い作品や風俗小説を書くようになり、社会主義団体フェビアン協会にも加わりました。第一次世界大戦後は戦争をなくすための国際機構を提唱し、人権宣言の運動を進めるなど、社会への発言を続けます。一方で優生学を支持していたことも知られています。
