- 原題
- Solaris
- 発表
- 1961年
- 初出
- 1961年、ポーランドで刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- 手ごわい
- 書棚
- SF・幻想文学
惑星全体を覆う「海」が、生きているらしい。その謎を調べる観測ステーションに着いた心理学者は、そこで10年前に亡くなったはずの恋人と再会します。人間とはまったく違う知性と出会ったとき、人は何を理解できるのか。わかり合えない相手との遭遇を描いた、レムの代表作です。
こんな人に
- 答えの出ない問いを、じっくり考えるのが好きな人に
- 静かな緊張感が続く、密室のような物語に惹かれる人に
- 映画『惑星ソラリス』を観て、原作も読みたくなった人に
あらすじ(ネタバレなし)
遠い未来。青と赤の二つの太陽をめぐる惑星ソラリスは、表面のほとんどを、まるで生き物のように動く海に覆われています。この海は発見以来さまざまな謎を生み、その研究のために「ソラリス学」という学問までできあがりました。
心理学者クリス・ケルビンは、ソラリスの上空に浮かぶ観測ステーションで起きている異変を調べるために派遣されてきます。ところが、出迎えたスナウトとはまともな会話が成り立ちません。ケルビンの先輩の心理学者ギバリャンは、彼の到着の直前に自ら命を絶っていました。もう一人の研究員サルトリウスは、部屋に閉じこもったまま出てきません。
ステーションの廊下では、乗員ではない見知らぬ人影が歩いているのが見えます。何が起きているのかわからないまま、ケルビンの部屋にも、10年前に亡くなった恋人ハリーが姿を現します。
主な登場人物
- クリス・ケルビン
- 主人公で語り手の「私」。ソラリス学を研究する心理学者で、ステーションに派遣される。
- スナウト
- ステーションにいるサイバネティクスの研究者。ケルビンが最初に会う人物。
- サルトリウス
- ステーションにいる物理学者。自室に閉じこもり、なかなか姿を見せない。
- ギバリャン
- ケルビンの大学時代の先生にあたる心理学者。ケルビンの到着直前に亡くなる。
- ハリー
- ケルビンがかつて一緒に暮らしていた恋人。10年前、19歳で亡くなっている。
見どころ・おもしろいところ
生きている海という異星人
この作品の異星の知性は、宇宙人の姿をしていません。レムは、人間に似せて描く落とし穴を避けるために、あえて知性を持つ存在を「海」にしたと書いています。人の形も言葉も持たない相手を、人間がどうにか理解しようとする姿が物語の芯です。
怪談のような序盤
ステーションに着いたケルビンを待っているのは、説明のない不安です。様子のおかしい研究員、閉ざされた部屋、そこにいるはずのない人影が、ホラー小説のような緊張を生み出します。読者もケルビンと同じ立場で、手探りしながら異変の正体に近づいていきます。
恋人との再会の行方
ケルビンには、ハリーの死について消えない自責の念があります。彼女との再会は、ステーションの謎と、ケルビン自身の過去への向き合い方の両方に関わっていきます。科学の物語と愛の物語が、同じ出来事の中で重なっているところが読みどころです。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
ソラリス学の章は流してよい
ケルビンが図書室でソラリス学の研究史をたどる場面では、学説や現象の名前が次々に出てきます。ここは人類がこの海をどれだけ理解できずにきたかを示す部分なので、細部を覚えようとせず雰囲気をつかめば十分です。
序盤の不可解さは意図どおり
物語の始まりでは、研究員たちが何かを隠しているようで、ケルビンにも読者にも事情がわかりません。説明されないこと自体が仕掛けなので、わからないまま読み進めて大丈夫です。
すっきりした答えを求めない
レムは、人間の考えやイメージでは捉えきれない存在との出会いを描きたかったと語っています。謎がきれいに解かれる推理小説のつもりで読むより、わからなさそのものを味わうつもりで読むと、作品の手ざわりが伝わってきます。
異星人と話せないという主題
『ソラリス』は1961年、ポーランドの作家スタニスワフ・レムが発表した長編です。地球外の知性とは意思を通わせることができないかもしれないという主題は、レムの多くの作品に繰り返し現れます。最初の小説「火星から来た男」から最後の長編『大失敗』まで続くこの主題を、もっともよく知られた形で描いたのがこの作品です。
作中の時代ははっきり示されず、ソラリス学がすでに長い歴史を持つ未来として描かれています。レムは、ソラリスの海の現象には理性的な活動のようなものが見えるが、その意味は人間の手の届かないところにあると書いています。当時のソ連で出たロシア語版は、検閲で一部を削られていました。
三度の映像化と作者の不満
この作品はこれまでに三度映像化されています。1968年のソ連のテレビ版は原作にもっとも忠実とされ、1972年のタルコフスキー監督『惑星ソラリス』はカンヌ国際映画祭でグランプリを受けました。2002年にはスティーヴン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー主演のアメリカ映画も作られています。
レムによれば、批評家はこの作品を、フロイト的な心理の物語、植民地主義への批判、さらには反共産主義の寓話など、さまざまに読んできました。レム自身は、どの映画もソラリスの海の異質さをほとんど描いていないと述べています。英語版も長くフランス語からの重訳で、レムはその訳に繰り返し失望を表明していました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
ハリーは、ソラリスの海がケルビンの記憶をもとに作り出したコピーでした。ほかの研究員のもとにも、それぞれの記憶から生まれた「客」が現れていたのです。ケルビンはハリーをロケットで宇宙へ送り出しますが、彼女はまた現れます。自責の念に苦しみながらも、ケルビンはやがてこの「ハリー」を愛するようになります。
サルトリウスたちは、ケルビンの意識をX線に乗せて海に送り、「客」を消す装置を準備します。実験は成功し、ハリーは消えました。ハリーは自分が海に作られた存在だと知り、ケルビンを苦しめないよう自ら消えることを選んでいたのです。海の意図は最後までわかりません。それでもケルビンは、未知の存在との間に何かが起こることを期待して、ソラリスに残ることを決めます。
よくある疑問
- 『ソラリス』はどんな話?
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生きた海に覆われた惑星を調べる観測ステーションで、心理学者が亡くなった恋人と再会する話です。人間とはまったく異なる知性との出会いが主題になっています。
- 『ソラリスの陽のもとに』と同じ作品?
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同じ作品です。最初の日本語訳はこの題で出ましたが、ソ連で出たロシア語版からの訳で、検閲により全体の一割弱が削られていました。のちにポーランド語の原典から全文を訳した版が、原題どおり『ソラリス』の題で出ています。
- 映画『惑星ソラリス』と原作は違う?
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1972年のタルコフスキー監督の映画は、原作の筋をゆるやかに追いながら、人間どうしの関係やケルビンの地球での暮らしに重きを置いています。レムは映画化作品に不満を述べ、本を書いた意図は宇宙での恋愛ではなく、人間の概念に還元できない存在との出会いを描くことだったと語っています。
- タイトルの意味は?
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物語の舞台になる惑星の名前です。レムは、この本が描くのはあくまで惑星ソラリスという未知の存在との遭遇なので、題は「宇宙の愛」ではなく「ソラリス」なのだと説明しています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
