- 原題
- The Adventures of Sherlock Holmes
- 発表
- 1892年(単行本)
- 初出
- 『ストランド・マガジン』1891年7月号〜1892年6月号に連載。1892年10月14日にジョージ・ニューンズ社から刊行
- 形式・長さ
- 短編集・長編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- ヨーロッパの文学
ロンドンのベーカー街に住む私立探偵シャーロック・ホームズのもとに持ち込まれる奇妙な依頼を、友人の医師ワトスンが書き記した12編の短編集です。雑誌『ストランド・マガジン』に毎月一編ずつ載り、ホームズの名を一気に広めた最初の短編集にあたります。
こんな人に
- 一話ごとに完結する謎解きを、少しずつ読みたい人に
- わずかな手がかりから一気に真相へ迫る推理が好きな人に
- 名前は知っているホームズを、最初の短編から読んでみたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
この本には、私立諮問探偵シャーロック・ホームズが手がけた12の事件が収められています。語り手はすべて、ホームズの友人で医師のワトスンです。依頼人がベーカー街221Bの部屋を訪ねてきて、奇妙な話を打ち明けるところから物語が動きはじめます。
巻頭の「ボヘミアの醜聞」では、身分を隠したボヘミア国王が訪ねてきます。近く結婚を控えた王は、かつて関係のあったオペラ歌手アイリーン・アドラーが持つ二人の写真を取り戻してほしいと頼みます。続く「赤毛組合」では、さびれた質屋の主人ジェイベズ・ウィルスンが、赤毛だというだけで高給の仕事にありついた奇妙ないきさつを語ります。
三編目の「花婿失踪事件」では、メアリー・サザーランドという女性が、婚約者が結婚式の朝に教会へ向かう途中で消えたと訴えます。どの事件も、ありふれた日常に紛れこんだ小さな違和感から始まります。
主な登場人物
- シャーロック・ホームズ
- ベーカー街221Bに住む私立諮問探偵。わずかな手がかりから推理を組み立てる。
- ワトスン
- ホームズの友人の医師。全12編の語り手で、ホームズの助手役も務める。
- アイリーン・アドラー
- 「ボヘミアの醜聞」に登場するアメリカ生まれのオペラ歌手。登場はこの一編だけ。
- ジェイベズ・ウィルスン
- 「赤毛組合」の依頼人。燃えるような赤毛の、小さな質屋の主人。
- レストレード警部
- 警察の警部。「ボスコム渓谷の惨劇」では殺人事件の捜査でホームズに助けを求める。
見どころ・おもしろいところ
ワトスンの目で語られる
どの短編も、ホームズ自身ではなく友人ワトスンの一人称で書かれています。読者はワトスンと同じ場所に立ち、ホームズの推理に驚かされる側に回ります。種明かしが最後まで伏せられるのは、この語りの形のおかげです。
作者が選んだ傑作が並ぶ
ドイルは1927年に自選の傑作12編を挙げ、その1位に「まだらの紐」、2位に「赤毛組合」を選びました。作者自身のお気に入りが多く収められているのも、この短編集の特徴です。
シドニー・パジェットの挿絵
雑誌連載と単行本の全12編に挿絵を描いたのは、画家シドニー・パジェットです。それ以前の長編2作は別の画家が描いていました。挿絵の中のホームズの姿も、事件の場面を思い描く助けになります。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
どの短編から読んでもいい
12編はそれぞれ独立した事件で、一編ごとに完結しています。順番どおりに読まなくても話はわかるので、題名が気になったものから手に取ってかまいません。
訳によって題が違う
各編の日本語の題は訳者によってさまざまで、「青い紅玉」が別の題になっていることもあります。英語の原題を手がかりにすると、どの短編のことか確かめやすくなります。
新しい月刊誌と短編の連載
ドイルは医学生のころから小説を書きはじめ、ホームズを長編『緋色の研究』で登場させました。しかし長編では収入が少なく、彼は短編に力を移します。1891年1月に創刊された『ストランド・マガジン』の編集者は、ドイルの原稿を受け取ってすぐ、ポー以来の短編作家だと感じたと語っています。
連載は1891年7月号の「ボヘミアの醜聞」から始まり、雑誌の売れ行きを押し上げました。ドイルは当初6編で終えるつもりでしたが、好評を受けた編集部に強く頼まれ、原稿料の値上げもあって続きを書くことになります。そのため12編は、題名の付け方の違う前半6編と後半6編に分けられます。
単行本の成功とその後
単行本の初版は1892年10月にイギリスで1万部刷られ、年内に8000部が売れました。それでもドイルは翌年、自腹で新聞に広告を出しています。初版はまもなく売り切れ、1893年と1894年に5000部ずつ増刷されました。
ホームズはこれまでに70人以上の俳優によって、200本を超える映画で演じられてきたとされます。1980年代にジェレミー・ブレット主演でイギリスのグラナダ・テレビが作ったドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』は特に有名で、日本でもNHKで放送されました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
「ボヘミアの醜聞」では、ホームズは変装と偽の火事騒ぎで写真の隠し場所を突き止めますが、翌朝訪ねるとアイリーンは結婚した相手と国を出たあとでした。正体を見抜かれていたのです。以来ホームズは彼女を特別な敬意をこめて「あの女性」と呼びます。「赤毛組合」の赤毛の仕事は、店員に化けた悪党ジョン・クレイが、質屋の主人を店から遠ざけるための作り話でした。クレイは地下室から隣の銀行の金庫室へトンネルを掘っており、待ち伏せたホームズに捕まります。
「まだらの紐」の犯人は依頼人の義父ロイロット博士で、遺産を独り占めするため、インドから取り寄せた毒蛇を通風孔から娘たちの部屋へ送りこんでいました。「青い紅玉」では、盗まれた宝石がクリスマスのガチョウの餌袋から見つかり、ホームズは真犯人のホテル係を突き止めますが、クリスマスに免じて逃がしてやります。
よくある疑問
- 『シャーロック・ホームズの冒険』はどんな本?
-
名探偵ホームズが活躍する12編を集めた短編集です。ホームズものの短編集は全部で5冊あり、その最初の一冊にあたります。
- どんな短編が入っている?
-
「ボヘミアの醜聞」「赤毛組合」「花婿失踪事件」「ボスコム渓谷の惨劇」「オレンジの種五つ」「唇のねじれた男」「青い紅玉」「まだらの紐」「技師の親指」「独身の貴族」「緑柱石の宝冠」「ぶな屋敷」の12編です。
- シリーズの最初に読む本でいい?
-
ホームズが初めて登場するのは長編『緋色の研究』ですが、短編はそれぞれ独立しているので、この短編集から読みはじめても問題なく楽しめます。
- どのくらいの長さ?
-
短編12編を収めた一冊です。一編ずつは短く、雑誌に毎月一編ずつ掲載されました。
出典
- Wikipedia「シャーロック・ホームズの冒険」
- Wikipedia(英語版)
- Wikipedia「ボヘミアの醜聞」
- Wikipedia「赤毛組合」
- Wikipedia「まだらの紐」
- Wikipedia「青い紅玉」
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
