- 原題
- Pride and Prejudice
- 発表
- 1813年
- 初出
- 1813年1月28日に全3巻で刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- ヨーロッパの文学
イギリスの田舎町に住む5人姉妹のベネット家に、独身の資産家がやってきます。頭の回転が速い次女エリザベスは、その友人ダーシーの高慢な態度に反感を抱きます。第一印象と思い込みが生む恋のすれ違いを、結婚に一喜一憂する人々の騒ぎとともに描いた恋愛小説です。
こんな人に
- 第一印象で人を決めつけて、あとで後悔したことがある人に
- 気の利いた会話や皮肉の応酬を楽しみたい人に
- 家族のにぎやかな騒動を笑いながら読みたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
舞台はイギリスの田舎町ロンボーン。ベネット家には娘ばかり5人がいますが、父親が亡くなれば、家も土地も遠縁の男性の手に渡ってしまいます。父は書斎にこもって我関せず、母は娘たちに金持ちの婿を見つけようと躍起になっています。
そんなとき、近くの屋敷に独身の青年資産家ビングリーが越してきます。舞踏会で、美しい長女ジェーンとビングリーは互いに好印象を抱きます。一方、次女エリザベスは、ビングリーの友人ダーシーが自分を軽んじる言葉を口にするのを聞いてしまい、その高慢な態度に強い反感を覚えます。
やがて町に軍隊が駐留し、妹たちは若い士官たちに夢中になります。エリザベスも、感じのよい士官ウィカムに惹かれます。ウィカムは、ダーシーに遺産を奪われたという自分の過去を打ち明け、エリザベスのダーシー嫌いはますます強くなっていきます。
主な登場人物
- エリザベス・ベネット
- 5人姉妹の次女で主人公。才気があり、観察眼が鋭い。愛称はリジー。
- フィッツウィリアム・ダーシー
- ビングリーの友人。家柄も資産も申し分ないが、気難しく誇り高いため誤解されやすい。
- ジェーン・ベネット
- 5人姉妹の長女。温和で美しく、人を疑うことを知らない。
- ビングリー
- 近くの屋敷ネザフィールドに越してきた独身の資産家。誠実で優しい青年。
- ベネット夫妻
- 皮肉屋で読書好きの父と、娘の玉の輿に命をかけるおしゃべりな母。
- コリンズ
- ベネット家の財産を継ぐことになっている遠縁の牧師。おべっかが過ぎる人物。
- ウィカム
- 町に駐留する軍隊の青年士官。話がうまく、ダーシーと浅からぬ因縁がある。
見どころ・おもしろいところ
冒頭の夫婦の会話
物語の冒頭近くには、ベネット夫妻のやりとりが置かれています。夏目漱石は『文学論』で、この短い会話に夫婦の性格と生涯が凝縮されていると激賞しました。二人の噛み合わなさが、そのままベネット家の空気を伝えます。
第一印象のあやうさ
この小説は、もとは『第一印象』という題で書かれました。エリザベスは自分の観察眼に自信を持っていますが、その目に映った人物像がどこまで正しいのかが、物語を動かしていきます。読み手もまた、彼女と一緒に人を判断していることに気づかされます。
笑いを誘う脇役たち
空気を読まずにおべっかを並べるコリンズ、娘の結婚のことで頭がいっぱいの母、自分が中心でないと気が済まないダーシーの叔母キャサリン夫人。癖の強い人物たちが、皮肉のきいた筆致で生き生きと描かれています。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
5人姉妹の名前を押さえる
ベネット家の娘は、上からジェーン、エリザベス、メアリー、キティ、リディアです。キティの本名はキャサリンで、ダーシーの叔母キャサリン夫人とは別人です。最初に家系図を見ておくと、人物の多さに迷いません。
結婚が切実だった時代
当時の女性には自立できる仕事がほとんどなく、良い結婚が暮らしを左右しました。ベネット家の不動産は男子しか継げない決まりになっているので、母親が必死になるのも無理はありません。この事情を知っておくと、人物たちの行動がぐっと理解しやすくなります。
屋敷の名前で場面をつかむ
舞台は、ベネット家のあるロンボーン、ビングリーが借りたネザフィールド、キャサリン夫人の住むロージンズ、ダーシーの領地ペンバリーなどを移っていきます。屋敷の名前と持ち主を結びつけておくと、場面の切り替わりがわかりやすくなります。
二十歳で書いた『第一印象』
オースティンは1796年から1797年にかけて、20歳から21歳のときに『第一印象』という題でこの小説を書きました。父が出版社に持ち込みましたが断られ、『分別と多感』の出版後に手を加えて縮め、1813年に現在の題で刊行されています。
執筆当時のヨーロッパはナポレオン戦争のさなかでしたが、作中に政治の話はほとんど出てきません。描かれるのは、変わらない田舎のジェントリ社会です。同じジェントリでも家柄や年収で格の差があり、それが結婚をめぐる人々の思惑に影を落としています。
漱石とモームが認めた小説
初版は好評で、その年のうちに重版され、1813年にはフランスで翻訳も出ました。日本では坪内逍遥と夏目漱石がいち早く評価し、1926年に漱石門下の野上豊一郎による最初の日本語訳が出ています。
作家サマセット・モームは『世界の十大小説』でこの作品を取り上げ、大した事件が起こるわけでもないのに読む手が止まらないと評しました。1995年のBBCのドラマや2005年の映画『プライドと偏見』など、何度も映像化されてきた作品です。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
ビングリーは突然ロンドンへ去り、ジェーンは彼を諦めます。親友シャーロットの嫁ぎ先を訪れたエリザベスは、ダーシーがビングリーとジェーンの仲を裂いたと知って怒りますが、そこへダーシーから求婚され、きっぱり断ります。翌日渡された手紙には、ジェーンの気持ちを見誤ったことへの詫びと、ウィカムの過去の悪行が書かれており、エリザベスは自分の偏見に気づきます。
旅先のペンバリーで再会したダーシーは、エリザベスの叔父夫婦にも礼儀正しく接します。やがて末の妹リディアがウィカムと駆け落ちしますが、ひそかに事を収め、持参金まで出したのはダーシーでした。ダーシーに促されて戻ったビングリーはジェーンと婚約します。二人の仲を裂こうとするキャサリン夫人の干渉で、かえって互いの気持ちを確かめたエリザベスとダーシーは結ばれ、父も心から娘を祝福します。
よくある疑問
- 『高慢と偏見』はどんな話?
-
5人姉妹の次女エリザベスと資産家ダーシーが、互いへの誤解と偏見に邪魔されながら惹かれ合っていく恋愛小説です。姉妹たちの結婚をめぐる家族の騒動が、皮肉をこめて描かれます。
- 『自負と偏見』『プライドと偏見』と同じ作品?
-
同じ作品です。原題の Pride and Prejudice の訳し方が訳者によって異なり、『自負と偏見』『自尊と偏見』などの題もあります。『プライドと偏見』は2005年に公開された映画の邦題です。
- タイトルの由来は?
-
もとの題は『第一印象』でした。現在の題は、ファニー・バーニーの小説『セシリア』の最終章に出てくる言葉から取られたと言われています。
- どのくらいの長さ?
-
初版は全3巻で刊行された長編小説で、全61章からなります。大きな事件は少なく、会話を中心に物語が進みます。
