フランケンシュタイン

フランケンシュタインメアリー・シェリー
原題
Frankenstein; or, The Modern Prometheus
発表
1818年(1831年に改訂版)
初出
ロンドンの出版社から匿名で全3巻、500部で刊行
形式・長さ
小説・長編
手ごわさ
ふつう

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ひとことで言うと

生命の謎にとりつかれた若い科学者ヴィクター・フランケンシュタインが、死体を組み合わせて人間を造り出します。けれども醜い姿に絶望して逃げ出し、名前も与えられないまま置き去りにされた怪物は、自分を造った者を探し始めます。北極探検家の手紙で始まる、入れ子の構成の物語です。

こんな人に

  • 自分の居場所がないと感じたことがある人に
  • 作った者と作られた者の責任について考えたい人に
  • 映画の怪物像しか知らず、原作が気になっている人に

あらすじ(ネタバレなし)

北極点をめざすイギリスの探検家ロバート・ウォルトンは、凍った海の上で衰弱しきった一人の男を助けます。男の名はヴィクター・フランケンシュタイン。物語は、ウォルトンが姉に宛てた手紙の中で、ヴィクターが語る身の上話として進みます。

ジュネーヴの名家に生まれたヴィクターは、両親や弟たち、両親が引き取った娘エリザベスと幸せに育ちます。やがてドイツのインゴルシュタット大学で自然科学を学ぶうちに、生命を生み出す方法を見つけたと確信し、研究にのめり込みます。墓地や納骨堂から集めた体の部分を組み合わせて、彼は大きな人間の形をしたものを造り上げます。

ところが、それが目を開けた瞬間、ヴィクターはその醜さに恐れおののき、部屋から逃げ出してしまいます。翌日戻ってみると、怪物の姿は消えていました。生まれたばかりの怪物は、たった一人で世界に放り出されたのです。

主な登場人物

ヴィクター・フランケンシュタイン
主人公の若い科学者。大学生で、博士ではない。「フランケンシュタイン」は彼の姓。
怪物
ヴィクターが造った人造人間。名前はつけられていない。知性が高く、独学で言葉を覚える。
ロバート・ウォルトン
北極をめざす探検隊の隊長。姉に宛てた手紙で物語の外枠を語る。
エリザベス
ヴィクターの家で一緒に育った娘。1818年版ではいとこ、1831年版では孤児とされる。
ヘンリー・クラーヴァル
ヴィクターの親友。のちにヴィクターのイギリス行きに付き添う。
ウィリアム
ヴィクターの弟。ジュネーヴの実家で暮らしている。
ジュスティーヌ
フランケンシュタイン家に仕える使用人の娘。

見どころ・おもしろいところ

  1. 怪物が自分の言葉で語る

    物語の中ほどで、怪物は自分がどう生きてきたかを語ります。ある一家を隠れて観察するうちに言葉を覚え、ミルトンの『失楽園』などの本まで読むようになったのです。後世の映画でよく描かれる知性の低い怪物とは違い、原作の怪物は驚くほど雄弁です。

  2. 三重の入れ子になった語り

    ウォルトンの手紙の中でヴィクターが語り、その話の中でさらに怪物が語ります。語り手が三人いる構成なので、同じ出来事が別の立場からどう見えるかを比べながら読めます。

  3. 居場所のない者の物語

    怪物は人に近づくたびに、その姿のせいで恐れられ、追い払われます。映画監督ギレルモ・デル・トロは、この小説を居場所のなさを描いた若者の本と呼んでいます。怪物がなぜ怪物になっていくのかを、彼の側から考えると読み方が変わります。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

冒頭が北極の手紙で始まる

最初の数通は、探検家ウォルトンが姉に宛てた手紙で、フランケンシュタインはまだ出てきません。これは物語全体を包む外枠です。ヴィクターが助けられて語り始めるところまで進めば、本筋に入れます。

映画のイメージを一度忘れる

全身に縫い目のある四角い頭の大男という怪物の姿は、1931年の映画で広まったものです。原作の怪物は知的で言葉巧みな存在として描かれています。先入観を外して読むと、原作ならではの怖さと悲しさが見えてきます。

版によって細部が違う

広く読まれているのは1831年の改訂版で、1818年の初版とはエリザベスの素性などが異なります。初版の本文に基づく版も出ているので、解説などで違いに出会っても戸惑わずにすみます。

雨の湖畔で始まった怪談の競作

1816年、メアリーはのちに夫となる詩人パーシー・シェリーとともに、スイスのレマン湖畔のディオダティ荘に滞在していました。長雨で屋内に閉じこめられていたとき、同宿の詩人バイロンが皆で一つずつ怪奇談を書こうと提案します。メアリーはこのときの着想をふくらませて、小説に仕上げました。

原稿は1817年の春に書き上がり、翌1818年に作者の名を伏せて500部だけ出版されました。序文はパーシーが代わりに書き、献辞はメアリーの父で思想家のウィリアム・ゴドウィンに捧げられています。

舞台と映画で広まった怪物像

発表当時の書評は賛否が分かれ、作家ウォルター・スコットは想像力を高く評価しました。人気に火をつけたのは1823年にロンドンで上演された芝居で、その成功を受けて出た第2版で、初めてメアリー・シェリーの名が作者として記されました。

1931年のユニバーサル映画では、ボリス・カーロフが怪物を演じ、四角い頭の大男という姿が世界に定着しました。英語では「フランケンシュタイン」が、自ら生み出したものに滅ぼされる者を指す言い回しとしても使われています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

人間に疎まれ続けた怪物は、ジュネーヴでヴィクターの弟ウィリアムを殺し、その罪をジュスティーヌに着せます。ヴィクターは怪物の仕業と気づきながら黙り、ジュスティーヌは処刑されます。やがてアルプスで再会した怪物は、自分の伴侶となる女の怪物を造ってほしいと頼み、ヴィクターはいったん承知します。しかしスコットランドのオークニー諸島で作業を進めるうちに恐ろしくなり、造りかけの女を壊してしまいます。

怪物は復讐として親友クラーヴァルを殺し、婚礼の夜にはエリザベスを殺します。悲しみで父も亡くなり、ヴィクターは怪物を追って北極までたどり着き、ウォルトンの船に助けられたのでした。すべてを語り終えたヴィクターは船上で息を引き取ります。現れた怪物は創造主の死を嘆き、自らを火で焼くと告げて氷の海へ去っていきます。

よくある疑問

フランケンシュタインは怪物の名前?

違います。フランケンシュタインは怪物を造った科学者ヴィクターの姓で、怪物には最後まで名前がつけられません。1931年の映画が広まったあと、怪物そのものを「フランケンシュタイン」と呼ぶ誤用が定着しました。またヴィクターは大学で学ぶ青年で、博士ではありません。

副題の「現代のプロメテウス」とは?

原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』です。プロメテウスはギリシア神話で人間を造ったとも、人間に火を与えて罰を受けたともされる神で、生命を造り出したヴィクターが重ねられています。

世界最初のSF小説って本当?

SF作家のブライアン・オールディスは、主人公が実験室での近代的な実験によって目的を果たそうとする点から、本作を最初の本格的なSFとみなすべきだと論じています。ゴシック小説やロマン主義の小説として読まれることもあります。

どのくらいの長さ?

長編小説です。初版は3巻本で、ウォルトンの手紙に始まり、ヴィクターの語り、怪物の語りが入れ子になった構成です。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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