- 原題
- Les Misérables
- 発表
- 1862年
- 初出
- 1862年、ブリュッセルとパリで刊行
- 形式・長さ
- 小説・大長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- ヨーロッパの文学
一切れのパンを盗んだ罪で19年間を徒刑場で過ごしたジャン・ヴァルジャンが、一人の司教の慈悲に触れて生まれ変わり、正しい人として生きようとする物語です。孤児コゼットを守り育てる彼を、刑事ジャヴェールが執念深く追い続けます。1815年から1832年の六月暴動へ向かうパリの「悲惨な人々」を描いた大長編です。
こんな人に
- 人は過去を背負ったまま生き直せるのかを考えたい人に
- 追う者と追われる者の長い攻防に引き込まれたい人に
- ミュージカルや映画で知った物語を、原作で深く味わいたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
1815年10月、ディーニュの町のミリエル司教の館に、46歳の男が訪れます。男の名はジャン・ヴァルジャン。姉の子どもたちのためにパンを盗み、トゥーロンの徒刑場で19年を過ごして出てきたばかりでした。どこへ行っても追い払われた彼を、司教だけが温かく迎え入れます。
ところがその夜、ヴァルジャンは司教の銀の食器を盗んで逃げ出します。翌朝、憲兵に捕まって連れ戻された彼に、司教は「食器は私が与えたものだ」と言い、さらに銀の燭台まで差し出しました。憎しみの塊だったヴァルジャンの心は、この出来事で大きく揺さぶられます。
1819年、モントルイユ=シュル=メールの町では、「マドレーヌ」と名乗る男が新しい産業を興して成功し、市長になっています。その工場では、幼い娘コゼットを宿屋のテナルディエ夫妻に預けたファンティーヌという女性が働いていました。そして町には、元徒刑囚を見逃さない警官ジャヴェールがいます。
主な登場人物
- ジャン・ヴァルジャン
- 主人公の元徒刑囚。「マドレーヌ」など別の名を名乗って生きる場面が多い。
- ミリエル司教
- ディーニュの司教。ヴァルジャンを迎え入れ、その後の人生を変えるきっかけを作る。
- ジャヴェール
- 法と秩序を絶対とする警官。ヴァルジャンを長年にわたって追い続ける。
- ファンティーヌ
- 幼い娘を人に預け、仕送りのために働く若い母親。コゼットの母。
- コゼット
- ファンティーヌの娘。幼いころはテナルディエ夫妻の宿屋でこき使われている。
- テナルディエ夫妻
- モンフェルメイユで宿屋を営む強欲な夫婦。物語のあちこちに姿を変えて現れる。
- マリユス
- 後半の中心になる貧しい学生。共和派の秘密結社「ABCの友」の仲間と交わる。
見どころ・おもしろいところ
銀の燭台から始まる物語
司教がヴァルジャンを赦す場面は、物語全体の出発点です。ユゴーは結末近くで、この小説を悪から善へ、夜から昼へ向かう歩みだと説明しています。ヴァルジャンがこのとき受け取ったものを、彼が生涯をかけてどう返していくかに注目して読めます。
ヴァルジャンとジャヴェール
罪を償って生き直そうとする男と、法に例外を認めない男が、何年にもわたって追い追われる関係を続けます。どちらも自分の信じる正しさに忠実なので、単純な善と悪の対立にはなりません。
バリケードのパリ
後半は、学生たちが政府に抗して立ち上がる1832年の六月暴動へ向かいます。ユゴー自身もこの暴動の日にパリの街で銃撃に遭い、物陰に身を隠したと作中で語っています。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
脱線の章が全体の4分の1
この小説には、筋とは直接関係のない随筆のような章がたくさんあります。ワーテルローの戦い、修道院、パリの下水道、隠語など、全体の4分の1以上が脱線という数え方もあります。筋を追いたいときは、脱線の章は流し読みして先へ進んでかまいません。
冒頭は司教の話から
物語は、ヴァルジャンではなくミリエル司教の人柄の紹介から始まります。ヴァルジャンが登場するのは14章ほど後なので、司教の章は長い前置きだと思って読むと焦らずに済みます。
5部の大長編と知っておく
全体は「ファンティーヌ」「コゼット」「マリユス」などの名がついた5部に分かれ、さらに細かい編と章に分かれています。各部の題がその部の中心人物なので、今だれの話を読んでいるかの目印になります。
亡命の地で完成した大作
ユゴーは1839年にトゥーロンの徒刑場を見学して詳しい記録を残し、1845年ごろから本格的に書きはじめました。主人公の名は、最初は「ジャン・トレジャン」と書き留められていたとされます。1861年にはワーテルローの戦場を訪れ、その地で原稿を書き終えています。
当時のユゴーはナポレオン3世の第二帝政を拒んで国を追われ、英国王室領のガーンジー島で亡命生活を送っていました。そのため本はパリとブリュッセルで同時期に発売されています。作中には、貧困、女性の転落、子どもの無知という時代の問題を解かないかぎりこうした本は無用にならない、という序文の言葉が掲げられています。
酷評と行列のあいだで
発売前には大がかりな宣伝が行われ、店先には長い行列ができました。仲間で本代を出し合って買う労働者も多く、回し読みされたと伝えられています。売れ行きを尋ねる疑問符一つだけの手紙に、出版社が感嘆符一つで返したという逸話も残っています。
一方で批評は厳しく、フローベールやゴンクール兄弟は否定的でした。それでも刊行の年のうちにイタリア語やギリシャ語などに訳され、ヨーロッパ中で読まれます。日本では黒岩涙香の翻案『噫無情』が萬朝報に連載されて広く知られ、のちのミュージカルや映画、ドラマ、漫画など多くの作品の原作になっています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
六月暴動のバリケードで、ヴァルジャンは捕らえられていたジャヴェールを処刑役として連れ出しながら、こっそり逃がします。バリケードが落ちると、重傷のマリユスを背負って下水道を通り抜けます。下水道の出口でヴァルジャンと出会ったジャヴェールは、彼を見逃したあと、法への信念と受けた慈悲の間で引き裂かれ、セーヌ川に身を投げました。
回復したマリユスはコゼットと結婚します。ヴァルジャンは自分が元徒刑囚だとマリユスに打ち明け、コゼットから遠ざけられて生きる気力を失います。やがてテナルディエがゆすりに来た話から、バリケードで自分を救ったのがヴァルジャンだと知ったマリユスは、コゼットと駆けつけます。ヴァルジャンは二人に見守られ、コゼットに母の名を伝えて、安らかに息を引き取ります。
よくある疑問
- 『レ・ミゼラブル』はどんな話?
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パンを盗んで19年間服役した男ジャン・ヴァルジャンが、司教の慈悲をきっかけに生き直し、孤児コゼットを守りながら刑事ジャヴェールの追跡を受け続ける話です。
- タイトルの意味は?
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フランス語で「悲惨な人々」「哀れな人々」という意味です。日本では黒岩涙香の翻案『噫無情(ああ無情)』の題でも知られました。
- モデルはいる?
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ヴァルジャンは、元徒刑囚から警察の密偵になったフランソワ・ヴィドックがもとになったとされます。ミリエル司教には、実在のディーニュ司教ミオリスというモデルがいました。
- どのくらいの長さ?
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5部、48編、365章からなる大長編で、原文のフランス語では65万語を超えます。史上最も長い小説の一つとされています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
