星の王子さま

星の王子さまサン=テグジュペリ
原題
Le Petit Prince
発表
1943年
初出
1943年4月、ニューヨークのレイナル・アンド・ヒッチコック社から英語版とフランス語版を刊行
形式・長さ
童話・中編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

サハラ砂漠に不時着した飛行士の「ぼく」が、小さな星からやって来た王子と出会い、その旅の話を聞く物語です。王子が出会った奇妙な大人たちや、地球で知り合ったキツネとの対話を通して、友情と愛、目に見えないものの大切さが語られます。作者自身の挿絵とともに読む、大人のための童話です。

こんな人に

  • 大人になって何か大事なものを忘れた気がしている人に
  • 大切な誰かと別れた経験を静かに思い返したい人に
  • 短い寓話を何度も読み返して味わいたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

飛行機の操縦士である「ぼく」は、飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着します。水は1週間分しかなく、まわりには誰もいません。不安な一夜を過ごした翌朝、「ぼく」はヒツジの絵を描いてほしいとせがむ不思議な少年に起こされます。

話をするうちに、少年が家ほどの大きさしかない小惑星から来た王子だとわかってきます。王子の星には三つの火山と、放っておくと星を割ってしまうバオバブの芽、そしてよその星から来た種から咲いた一輪のバラがありました。王子はバラを大切に世話していましたが、ある日けんかをしたのをきっかけに、星を出て旅に出たのです。

飛行機の修理に追われながら、「ぼく」は王子の旅の話を少しずつ聞いていきます。王子が訪ねた星々には、命令ばかりする王や、ほめ言葉しか耳に入らない自惚れ屋、星を数え続ける実業家など、どこか奇妙な大人たちが一人ずつ住んでいました。そして七番目に、王子は地球へやって来ます。

主な登場人物

王子
主人公。小さな星で一輪のバラと暮らしていた子ども。旅の末に地球へ来て「ぼく」と出会う。
ぼく
語り手の飛行士。子どものころ絵を大人に否定され、描くのをやめた。砂漠で王子と友だちになる。
バラ
王子の星に咲いた一輪の花。美しいが気位が高く、王子とけんかをする。
キツネ
地球で王子が出会う動物。「仲良くなる」とはどういうことかを王子に教える。
ヘビ
王子が地球の砂漠に降りて最初に出会う生き物。
星々の大人たち
王、自惚れ屋、呑み助、実業家、点燈夫、地理学者。王子が旅の途中で出会う。

見どころ・おもしろいところ

  1. 六つの星の大人たち

    王子が訪ねる星には、それぞれ一人ずつ大人が住んでいます。恥を忘れるために酒を飲む呑み助や、1分ごとにガス灯をつけたり消したりする点燈夫など、大人の滑稽さを一人ずつ描いた短い場面が続きます。自分に似た大人がいないか探しながら読むと、笑ったあとで少し考え込みます。

  2. キツネとの対話

    地球で何千本ものバラを見た王子は、自分のバラがありふれた花だったのかと泣きます。そこに現れたキツネが語る「仲良くなる」ことの意味が、作品の中心です。この場面を読むと、王子にとってのバラの意味が変わって見えてきます。

  3. 作者自身の挿絵

    初版には、作者が自分で描いた大小47点の挿絵が添えられています。絵と文が一体になって物語を語るので、挿絵を飛ばさずに見ることが大切です。冒頭の「ぼく」の子どものころの絵の話も、挿絵があって初めて意味がわかります。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

献辞から読む

本文の前に、作者が友人に宛てた短い献辞があります。フランスで困難の中にいる親友レオン・ヴェルトに捧げると書かれており、これを知っておくと、物語が誰に向けて語られているのかが見えてきます。

子ども向けと思い込まない

童話の形をしていますが、刊行当時から子どもの本か大人の本かが議論されました。冒頭から大人への皮肉が多く、子どものころに読んだ人ほど、大人になって読み返すと別の場面が心に残ります。筋より一つひとつの会話に立ち止まって読むのがおすすめです。

亡命先のニューヨークで

第二次世界大戦でフランスがドイツに敗れると、サン=テグジュペリは1940年末にアメリカへ渡りました。祖国のために戦えないまま、健康の悪化や夫婦の不和にも苦しみます。出版社の関係者に子どもの本を書くよう勧められ、1942年の夏から秋にかけてこの物語を書き、挿絵を描きました。

執筆の場所の一つは、ロングアイランドにある22部屋の大邸宅でした。作者は約3万語の原稿を、およそ半分の長さにまで削ったとされます。1943年4月に英語版とフランス語版がアメリカで刊行されましたが、作者の作品はヴィシー政権に禁じられており、フランスでの出版は解放後になりました。

静かな出発から世界的な読み物へ

刊行当初の書評家の多くは、子ども向けとも大人向けともつかない作品に戸惑いました。ニューヨーク・タイムズのベストセラー入りもわずか2週間でした。刊行の数週間後、作者は自由フランス軍に加わって偵察飛行に戻り、翌1944年に消息を絶ちます。

その後、作品は読み継がれ、推計で約1億4000万部が売れたとされています。宗教書を除けば、最も多くの言語に翻訳された本の一つです。日本では長く岩波書店が翻訳権を持っていましたが、2005年に保護期間が終わると、十数社から新しい訳が出版されました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

やがて蓄えの水が尽き、途方に暮れた「ぼく」は、王子に誘われて砂漠を歩き、本当に井戸を見つけます。一緒に水を飲みながら、王子は明日で地球に来てちょうど1年になると打ち明けます。翌日、飛行機が直ったことを知らせに行くと、王子はヘビと話をしていました。王子は、1年前と同じ星の配置のときにヘビに噛まれることで、体を置いて自分の星に帰ろうとしていたのです。

別れを悲しむ「ぼく」に、王子は、夜空のどこかの星で自分が笑っていると思えば、すべての星が笑って見えるはずだと語ります。王子はヘビに噛まれて砂の上に倒れ、翌朝その体は見つかりませんでした。王子は星に帰れたのだと「ぼく」は考え、夜空を見上げます。

よくある疑問

『星の王子さま』はどんな話?

砂漠に不時着した飛行士が、小さな星から来た王子と出会い、その旅の話を聞く物語です。王子の目を通して、大人の世界の奇妙さと、愛することや友情の意味が描かれます。

作者の体験がもとになっている?

作者は1935年にリビア砂漠で飛行機の墜落事故にあっており、その体験が作品のもとになったと考えられています。この事故のことは随筆集『人間の土地』で語られています。

「星の王子さま」は原題の直訳?

原題のLe Petit Princeを直訳すると「小さい王子」になります。「星の王子さま」は最初の日本語訳を手がけたフランス文学者、内藤濯が考えた題名です。

どのくらいの長さ?

挿絵の多い、中編ほどの長さの作品です。作者は約3万語の原稿を半分ほどに削って仕上げました。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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