動物農場

動物農場オーウェル
原題
Animal Farm
発表
1945年
初出
1945年8月17日、ロンドンのセッカー・アンド・ウォーバーグ社から刊行
形式・長さ
小説・中編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

ひどい農場主を追い出した動物たちが、すべての動物が平等な農場を自分たちの手で作ろうとする話です。ところが、革命を率いた豚たちが少しずつ特権を手にし、理想の農場は思わぬ姿に変わっていきます。ロシア革命とスターリン体制を、動物の寓話の形で描いた風刺小説です。

こんな人に

  • 理想を掲げた組織がいつの間にか変質していくのを見たことがある人に
  • 言葉で人をまるめこむ仕組みを知りたい人に
  • 短い寓話で歴史や政治の本質に触れてみたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

イギリスのある村にあるマナー農場。農場主のジョーンズ氏は酒に溺れ、家畜にろくに餌も与えません。ある夜、動物たちに尊敬される老いた雄豚メージャー爺さんが、人間こそが動物の敵であり、すべての動物は平等で自由であるべきだと説きます。動物たちは革命の歌を歌い、その日を待つようになります。

メージャー爺さんが亡くなると、若い雄豚のスノーボールとナポレオンが後を継ぎ、動物たちを率いてジョーンズ氏を農場から追い出します。農場は「動物農場」と名を改められ、納屋の壁には、動物は服を着ない、ベッドで寝ない、酒を飲まないといった七つの掟が書き出されます。

農場の運営は動物たちの集会で決められますが、読み書きを覚えた賢い豚たちが、自然と指導役に就いていきます。中でも、演説がうまく計画好きのスノーボールと、口数は少ないが根回しにたけたナポレオンの二頭は、あらゆる問題で意見が対立します。働き者の馬ボクサーたちは、豚たちを信じて懸命に働き続けます。

主な登場人物

ナポレオン
雄豚。革命を率いた一頭で、口下手だが狡猾。モデルはスターリンとされる。
スノーボール
雄豚。賢く演説が得意で、風車の建設を提案する。モデルはトロツキーとされる。
スクィーラー
ナポレオンの側近の若い雄豚。口がうまく、白を黒と言いくるめると評される。
ボクサー
力持ちで働き者の雄馬。疑問を持っても、もっと働けばよいと考える。
ベンジャミン
博識な雄ロバ。ボクサーの親友だが、どの派にもつかず傍観を続ける。
メージャー爺さん
老いた雄豚。動物主義の考えを最初に説く。モデルはレーニンとされる。
ジョーンズ氏
マナー農場の農場主。酒に逃げ、農場を荒れ放題にしていた。

見どころ・おもしろいところ

  1. 書き換えられていく掟

    革命の直後、納屋の壁には七つの掟が書かれます。物語が進むうちに、その文言がいつの間にか少しずつ変わっていきます。どの掟がどう変わったかに気をつけて読むと、権力がどう言葉を扱うのかが見えてきます。

  2. 動物一頭ずつに込めた寓意

    豚は指導者、犬は秘密警察、羊は決まり文句を繰り返す群衆というように、動物の種類ごとに社会の役割が重ねられています。ロシア史を知らなくても筋は追えますが、モデルを知ると場面ごとの皮肉がより鋭く感じられます。

  3. わかりやすい言葉の怖さ

    語り手の文章は平易で、子ども向けの物語のように読めます。一方で、ナポレオンやスクィーラーは言葉をねじ曲げて動物たちを納得させます。素直な語りとねじれた台詞の差が、作品の不気味さを生んでいます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

童話と思って油断しない

原題には「おとぎ話」という副題が付いていて、語り口もやさしく、すぐに読み終えられる長さです。ただし内容は政治の寓話で、後半は重い出来事が続きます。軽い気持ちで読み始めても、終盤の展開に備えておくと受け止めやすくなります。

動物の名前を整理する

豚だけでもナポレオン、スノーボール、スクィーラー、メージャー爺さんが登場します。豚と馬とロバの役割の違いを押さえておけば、ほかの動物たちは場面ごとに追えば十分です。

同盟国を風刺するという難題

オーウェルは本作を1943年11月から1944年2月にかけて書きました。当時のイギリスはソ連と同盟を結んでナチス・ドイツと戦っており、知識人の間ではスターリンへの評価が高まっていました。オーウェルはスペイン内戦でスターリン派の勢力と対立した経験から、その風潮に強く反発していました。

原稿は、オーウェルのいつもの出版社ゴランツをはじめ、英米の複数の出版社に断られます。フェイバー社で原稿を読んだ詩人T・S・エリオットも、文章をほめながら出版は見送りました。ようやく刊行されたのは1945年8月17日のことです。

冷戦期に広まった寓話

刊行当時の評価は分かれ、寓話という手法を古くさいと批判する書評もありました。一方でガーディアン紙は、少数が多数を支配することへの痛烈な風刺だと評しています。1946年にはアメリカでも刊行され、のちにタイム誌の英語小説ベスト100にも選ばれました。

冷戦期には、1952年から1957年にかけてアメリカの情報機関が、本書を積んだ風船を東欧の国々へ飛ばしたとされます。1954年にはアニメーション映画になり、1999年にはテレビ映画も作られました。日本では石ノ森章太郎による漫画版も出ています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

風車建設をめぐる対立の末、ナポレオンは手なずけた犬たちを使ってスノーボールを農場から追い出します。以後、失敗はすべてスノーボールの陰謀とされ、ナポレオンは反対する動物を粛清して恐怖政治を敷きます。豚たちは家に住み、酒を飲み、人間と取引を始め、そのたびに掟は書き換えられていきます。隣の農場主フレデリック氏の攻撃で風車は爆破され、懸命に働いたボクサーは体を壊すと、病院へ送ると偽って馬肉業者に売られてしまいます。

数年後、革命前を知る動物はわずかになります。豚たちは二本足で歩き、服を着るようになり、七つの掟は「すべての動物は平等だが、一部の動物はさらに平等」という一文に変えられます。農場の名はマナー農場に戻され、ナポレオンは近隣の人間たちと宴を開きます。窓の外から見つめる動物たちには、もう豚と人間の見分けがつきませんでした。

よくある疑問

『動物農場』はどんな話?

人間を追い出して平等な農場を作った動物たちが、指導者の豚の独裁のもとで、革命前より苦しい暮らしに追い込まれていく話です。

モデルになった歴史は?

オーウェルによれば、1917年のロシア革命から、スターリンが支配したソ連の時代までの出来事がもとになっています。ナポレオンはスターリン、スノーボールはトロツキーに重ねられていると読まれています。

どのくらいの長さ?

中編小説で、すぐに読み終えられる短さです。もとの題は『動物農場 おとぎ話』で、アメリカ版では副題が外されました。

なぜ出版を断られたの?

執筆当時、イギリスはナチス・ドイツと戦うためにソ連と同盟を結んでおり、ソ連を批判する本を出すことを多くの出版社がためらいました。いったん引き受けた出版社が、情報省の役人の助言で断ったこともあります。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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