- 原題
- Dune
- 発表
- 1965年
- 初出
- 雑誌『アナログ』に二つの連載として発表(1963〜1965年)。1965年にチルトン・ブックスから単行本
- 形式・長さ
- 小説・大長編
- 手ごわさ
- 手ごわい
- 書棚
- SF・幻想文学
水がほとんどない砂漠の惑星アラキスに領主として移り住んだ貴族の一家と、その息子ポールの運命を描く長編SFです。この星でしか採れない香料メランジをめぐって、皇帝と貴族の家々が争います。政治と宗教、そして砂漠の生態系が幾重にも絡み合う、世界で最も売れたSF小説のひとつです。
こんな人に
- 架空の世界を細部まで想像しながら読むのが好きな人に
- 権力争いと陰謀が入り組んだ物語に浸りたい人に
- 水や資源をめぐる問題を物語で考えてみたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
遠い未来、人類は宇宙に広がり、皇帝のもとで貴族の家々が惑星を領地として治めています。アトレイデス家の当主レト公爵は、皇帝の命令で、海の惑星カラダンから砂漠の惑星アラキスへ移ることになります。
アラキスは水が乏しく、巨大な砂虫が砂の下を行き来する過酷な星です。それでも、寿命を延ばし、宇宙を安全に航行するためにも欠かせない香料メランジが採れる唯一の惑星なので、ここを治めることは大きな富と危険を意味します。前の領主は、アトレイデス家と長く敵対してきたハルコンネン家でした。
公爵の息子ポールは、父の側近から戦いと政治を、母ジェシカから女性の結社ベネ・ゲセリットの鍛錬を学んで育ちました。未来を思わせる夢を見るポールは、出発の前に結社の教母から命がけの試験を受けます。公爵はこの領地替えが罠だと感づきながらも、命令に逆らえず、一家はアラキスへ向かいます。
主な登場人物
- ポール・アトレイデス
- 主人公。アトレイデス家の跡継ぎで、未来を予感させる夢を見る少年。
- レト・アトレイデス公爵
- ポールの父。アラキスの領主となり、砂漠の先住民フレメンを味方にしようと考える。
- レディ・ジェシカ
- 公爵の側室でポールの母。ベネ・ゲセリットの一員で、息子に心と体の鍛錬を教えた。
- ハルコンネン男爵
- アトレイデス家の宿敵ハルコンネン家の当主。アラキスの前の領主。
- スフィル・ハワト
- 公爵に仕えるメンタート。メンタートは膨大な情報を記憶し計算する訓練を受けた人間。
- 教母モヒアム
- ベネ・ゲセリットの教母で、皇帝の相談役。冒頭でポールに試験を課す。
- スティルガーとチャニ
- アラキスの砂漠に住むフレメンの人々。スティルガーはその一団の長。
見どころ・おもしろいところ
惑星まるごとの生態系
水が命より重いアラキスでは、巨大な砂虫から小さな生き物まで、乾いた環境に合わせて生きています。この作品は惑星規模の生態系を描いた最初の小説とも呼ばれます。水の扱いや砂漠での暮らし方の細かさが、架空の星を本物らしく感じさせます。
各章の頭に置かれた引用
どの章も、作中の人物であるイルーラン姫が書いた日記や歴史書からの抜き書きで始まります。物語を後の時代から振り返るような書きぶりなので、本文の出来事とのずれが気になり、先を読みたくなります。
コンピュータのない未来
この世界では、遠い昔の出来事によってロボットやコンピュータが姿を消しています。その代わりに、計算を担うメンタートや、心身を鍛え上げたベネ・ゲセリットのように、人間そのものの力が磨かれています。機械より人間の政治や信仰に目を向けるための設定です。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
冒頭から造語が続く
メランジ、フレメン、ベネ・ゲセリットなど、説明のないまま新しい言葉が次々に出てきます。原書には巻末に付録と用語集がついているので、わからない言葉が出たら引きながら読むと迷いません。
勢力の関係を先に押さえる
登場する集団が多く、最初は誰が誰の味方かがつかみにくい作品です。皇帝、アトレイデス家、ハルコンネン家の三者の関係を頭に置き、そこに結社や砂漠の民が絡むと考えると整理できます。
長さは三部に分けて読む
大長編ですが、三部構成になっています。第一部はもともと独立した連載として発表された部分なので、まずそこまでを一区切りとして読むと、長さに押しつぶされずにすみます。
動く砂丘の取材から生まれた物語
ハーバートは1950年代の終わりに、アメリカ・オレゴン州の海岸にある砂丘地帯を訪れました。そこでは政府が草を植えて砂丘の移動を止めようとしていて、この取材が生態系と砂漠への関心のきっかけになりました。ハーバートは、アラキスで水が乏しいことは石油など限られた資源のたとえでもあると語っています。
小説は、雑誌『アナログ』に二つの連載として発表されたあと、書き直されて出版社に送られました。しかし20社を超える出版社に断られ、最後に引き受けたのは自動車の修理マニュアルで知られるチルトン社でした。初版は売れ行きが振るわず、評判は口コミで少しずつ広がっていきました。
二つの賞と、難航した映画化
1966年にヒューゴー賞を受け、第1回ネビュラ賞にも選ばれました。何十もの言語に訳されて約2000万部が売れ、日本でも1974年に星雲賞の海外長編部門を受けています。「スター・ウォーズ」など後のSFに影響を与えたとされ、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の世界観にも影響があったと言われています。
映画化は長く難航しました。1970年代にはアレハンドロ・ホドロフスキー監督が準備を進めましたが、製作費が膨らんで中止になります。1984年にデイヴィッド・リンチ監督が映画にしたあと、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が前半と後半を二本の映画に分けて描きました。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
アラキスに着いた一家は、皇帝の精鋭部隊を伴うハルコンネン家に襲われます。侍医ユエの裏切りでレト公爵は捕らえられて死に、ポールとジェシカは砂漠へ逃れます。二人はフレメンに迎えられ、ポールは決闘に勝って「ムアッディブ」の名を得ます。ジェシカは命の水を飲んで教母となり、娘アリアを産みます。ポールは、ハルコンネン男爵が母方の祖父であることも知ります。
やがてポールは男には致命的な命の水を飲み、時と場所を見通す力を得て、結社が長く求めてきたクウィサッツ・ハデラックとなります。砂虫に乗ったフレメンを率いて皇帝と男爵の軍を破り、アリアは男爵を殺し、ポールはフェイド=ラウサとの決闘に勝ちます。皇帝は退位し、ポールは帝国を手にしますが、自分を崇めるフレメンの聖戦はもう止められないと悟ります。
よくある疑問
- 『デューン 砂の惑星』はどんな話?
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砂漠の惑星に移った貴族の息子ポールが、香料をめぐる権力争いに巻き込まれ、砂漠の民と運命を共にしていく話です。
- タイトルの意味は?
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Duneは英語で砂丘のことです。ハーバートは、この題に破滅を意味するdoomの響きを重ねたと語っています。
- 映画は小説のどこまでを描いている?
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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の一本目はおおよそ小説の前半を、続く二本目は後半を描いています。それより前の1984年には、デイヴィッド・リンチ監督も一本の映画にしています。
- 続編はある?
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ハーバート自身が『デューン 砂漠の救世主』など五つの続編を書いています。作者の死後は、息子のブライアン・ハーバートと作家ケヴィン・J・アンダースンが1999年から前日譚などを書き継いでいます。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
