- 原題
- Do Androids Dream of Electric Sheep?
- 発表
- 1968年
- 初出
- 1968年にダブルデイ社から刊行
- 形式・長さ
- 小説・長編
- 手ごわさ
- ふつう
- 書棚
- SF・幻想文学
核戦争で荒れ果てた地球で、火星から逃げてきたアンドロイドを狩る賞金稼ぎリック・デッカードの一日を描く長編SFです。人間そっくりのアンドロイドと向き合ううちに、人間と機械を分けるものは何かという問いが揺らいでいきます。映画『ブレードランナー』の原作としても知られています。
こんな人に
- 人間らしさとは何かを考えるのが好きな人に
- 荒んだ街を一匹狼が歩く探偵小説の空気が好きな人に
- 映画『ブレードランナー』の原点を知りたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
世界大戦のあと、地球の大気は放射能に汚され、動物のほとんどが絶滅しかけています。本物の動物を飼うことは裕福さの証で、買えない人は本物そっくりの電気仕掛けの動物で我慢しています。多くの人は火星などの植民地へ移り、そこでは人間とほとんど見分けのつかないアンドロイドが召使いとして与えられています。
サンフランシスコ警察の賞金稼ぎリック・デッカードは、屋上で電気羊を飼っています。気の沈んだ妻イーランを慰めるため、いつか本物の動物を買いたいと願っています。そんな彼に、火星から逃げてきた新型ネクサス6のアンドロイド6体を「処理」する仕事が回ってきます。デッカードは、人間とアンドロイドを見分ける感情移入度の検査が新型にも通用するかを確かめるため、製造元のローゼン協会を訪ねます。
一方、同じ街の廃ビルには、放射能の影響で「特殊者」とされた青年イジドアが一人で暮らしています。孤独な彼のビルに、ある日見知らぬ女性が住みつきます。
主な登場人物
- リック・デッカード
- 主人公。サンフランシスコ警察に属し、逃亡アンドロイドを処理する賞金稼ぎ。
- イーラン
- リックの妻。夫婦仲はあまりよくなく、ふさぎこみがち。
- レイチェル・ローゼン
- アンドロイドを作るローゼン協会の社員で、重役エルドン・ローゼンの姪。
- ハリイ・ブライアント警視
- リックの上司。残ったアンドロイドを処理するよう彼に命じる。
- J・R・イジドア
- もう一つの筋の中心人物。電気動物の修理店で集配トラックを運転する青年。
- ウィルバー・マーサー
- この時代に広まっている宗教マーサー教の教祖。人々は装置を通じて彼と一体になる。
見どころ・おもしろいところ
人間を見分ける検査
人間とアンドロイドを区別するのは、相手への共感の度合いを測るフォークト=カンプフ検査です。衝撃的な質問をして、顔の赤らみや筋肉の動きを記録します。この検査を軸に、共感できるかどうかで人間を決めてよいのかという問いが、何度も突きつけられます。
本物の動物への憧れ
この世界では、虫一匹でも法律で守られ、生きた動物を持つことが何よりの誇りです。デッカードが電気羊を本物に替えたいと願う気持ちは、物語を動かす小さくも切実な動機になっています。生きた動物のカタログが出回る世界の姿に、荒れた時代の寂しさがにじみます。
二人の主人公が交互に進む
賞金稼ぎのデッカードと、社会から外された青年イジドア。二つの筋が交互に語られ、やがて一つの場所へ近づいていきます。狩る側とかくまう側、正反対の立場から同じ出来事が見えてくる構成です。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
見慣れない道具が出てくる
作中では、ダイヤルで自分の気分を設定するペンフィールド情調オルガンや、マーサーと一体になる共感ボックスが説明なしに使われます。どちらも、人が感情をどう扱っているかを見せる小道具だと考えると、読み流さずにすみます。
映画とは別物と考える
映画『ブレードランナー』を知っている人ほど、違いに戸惑うかもしれません。映画には電気羊が出てこず、人物や設定も大きく変えられています。映画の記憶はいったん脇に置いて読むのがおすすめです。
人間よりも人間らしい機械
ディックは、冷めた探偵が腐った世界を歩くハードボイルド小説の語り口を、意識してこの作品に取り入れています。物語のなかで、敵役のアンドロイドは主人公よりも人間らしく描かれています。それは人間のふるまいを映す鏡であり、人間らしさを失いつつある社会との対比になっています。
ディックは1972年の講演で、機械や電子装置に囲まれた環境がしだいに生きものに近づいていると語りました。批評家たちはこの講演と小説を結びつけ、技術が「生命」の理解をどう変えたかを問う作品として読んでいます。人間と動物との関係に目を向ける読み方もあります。
『ブレードランナー』とその後
1982年、リドリー・スコット監督が映画『ブレードランナー』として映画化しました。映画が世界的に成功すると、のちの版の一部では題名に『ブレードランナー』が添えられるようになります。2017年には続編の映画『ブレードランナー 2049』も作られました。
作品の評価は、映画の人気の陰に隠れがちだったと言われています。それでも1998年には、ローカス誌の読者投票で1990年以前の歴代SF長編のひとつに選ばれました。日本では1969年に翻訳が出て、この題名は数えきれないパロディを生むほど親しまれています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
デッカードは、ソ連の刑事を名乗っていたポロコフ、オペラ歌手ルーバ・ラフト、偽の警察署を率いていたガーランド警視を、賞金稼ぎのフィル・レッシュとともに次々に処理します。賞金で本物の山羊を買ったものの、アンドロイドへの共感が芽生えた自分に彼は揺らぎます。レイチェルもアンドロイドで、彼女と一夜を過ごしたデッカードは、彼女が賞金稼ぎに仕事をやめさせるよう作られていたことを知ります。
廃ビルではイジドアが残る3体をかくまっていましたが、デッカードはプリス、ロイとアームガードのベイティー夫妻を処理し、一日で6体という記録を作ります。帰宅すると、留守中にレイチェルが山羊を屋上から突き落として殺していました。荒野をさまよったデッカードは絶滅したはずのヒキガエルを見つけて持ち帰りますが、それも電気仕掛けでした。それでも妻は、そのカエルの世話をしようとします。
よくある疑問
- 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』はどんな話?
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核戦争後の地球で、逃亡したアンドロイドを追う賞金稼ぎが、人間とアンドロイドの違いがわからなくなっていく話です。
- 映画『ブレードランナー』との違いは?
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1982年のリドリー・スコット監督の映画は原作を大きく脚色していて、電気羊は登場せず、人物や設定も多く変わっています。デッカードが自分の仕事に疑問を持ち始める点は共通しています。ブレードランナーという言葉は原作には出てきません。
- タイトルの意味は?
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人間とアンドロイドの違いはどこにあるのかという作品の根本の問いを、素朴な問いかけの形にまとめた題です。この独特の題は、「〇〇は△△の夢を見るか?」という形の数多くのパロディを生みました。
- どのくらいの長さ?
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長編小説です。物語はほぼ一日の出来事で、デッカードの筋とイジドアの筋が交互に進みます。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
