ボッコちゃん

ボッコちゃん星新一
作者
星新一
発表
1971年(昭和46年)
初出
新潮文庫の自選短編集として刊行。表題作は同人誌『宇宙塵』1958年2月号が初出で、同年『宝石』5月号に転載
形式・長さ
短編集・長編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

数ページで終わる短い物語「ショートショート」を、星新一が自ら選んで50編を収めた自選短編集です。表題作は、バーで働く美しいロボットに恋をした客の話です。ロボットや未来の社会を題材にした寓話のような話が並び、最後の数行で景色が変わる物語を少しずつ楽しめます。

こんな人に

  • 長い小説を読み通す自信がまだない人に
  • 皮肉の効いた寓話や、意外な結末が好きな人に
  • すきま時間に一話ずつ読める本を探している人に

あらすじ(ネタバレなし)

『ボッコちゃん』は、星新一が初期の短編集『人造美人』と『ようこそ地球さん』から19編を選び、ほかの本の作品を加えて50編にまとめた自選集です。一編はどれも短く、ロボットや未来の社会などを題材にした、寓話のような物語が並びます。

表題作の舞台は近い未来のバーです。そこでは、女性の姿をしたロボット「ボッコちゃん」が客の相手をしています。とても美しいのですが、できるのは客の言葉をおうむ返しにすることだけです。それでも、そんな彼女に本気で恋をしてしまう男性客が現れます。

収録作の「おーい でてこーい」では、台風の翌朝、村の古い社が崩れたあとに、底の見えない深い穴が見つかります。呼びかけても石を投げても返事はなく、やがて人々はこの穴の使い道を思いつきます。

主な登場人物

ボッコちゃん
表題作に登場する、バーで客の相手をする女性型のロボット。言葉をおうむ返しにするだけ。
バーの男性客
表題作で、ボッコちゃんに本気で恋をしてしまう客。
エヌ氏
星作品の主人公によく使われる名前。話ごとに別の人物で、つながりはない。
利権屋
「おーい でてこーい」に登場する男。村に現れた穴を譲ってほしいと申し出る。

見どころ・おもしろいところ

  1. 名前も地名も出てこない

    星新一の作品には、具体的な地名や人名がほとんど出てこないのが特徴です。「百万円」とは書かずに「大金」と書くなど、時代や場所に縛られずに読めるよう工夫されています。古さを感じにくく、どの話も今日の出来事のように読めます。

  2. おうむ返しのロボット

    ボッコちゃんは、客の言葉を繰り返すだけのロボットです。この作品は1958年に書かれましたが、言葉を返すだけの対話プログラムELIZAが生まれたのは1964年で、批評家の大森望は星の先見性をたたえています。

  3. 未来を見通したような話

    「おーい でてこーい」は、作ったものの後始末を考えない人間の姿を描いています。のちに公害や環境の問題と結びつけて読まれましたが、星自身は書いた当時は公害という言葉もなかったと書いています。寓話として読むか、社会への警告として読むかで印象が変わります。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

一度に読みすぎない

一編が数ページなので、続けて読むと似た味の話が重なり、印象が薄れることがあります。一日に数編ずつ読んで、一つひとつの結末を味わうのが向いています。

最後の一行まで気を抜かない

筒井康隆は、星が後期になってラスト一行で価値を転換する形から離れていったと指摘しています。この本には初期の短編集から選ばれた作品が多く入っているので、途中で展開が読めた気がしても、終わりまで読むと別の顔が見えてきます。

同人誌から始まった表題作

表題作「ボッコちゃん」は、1958年にSF同人誌『宇宙塵』に発表されました。評判が高く、すぐに商業誌『宝石』に転載されて、前年の「セキストラ」に続く星の出世作になります。発表時の題は「人造美人」で、1961年に出た最初の作品集の題にもなりました。

その後、1971年に新潮文庫の自選集として『ボッコちゃん』が出て、これが星にとって最初の文庫の作品集になりました。星は時代に合わなくなった言葉を晩年まで直し続け、「電子頭脳」を「コンピュータ」に改めるなど、作品が古びないよう手を入れています。

長く読み継がれる入門の一冊

新潮文庫版は2022年11月の時点で129刷、265万部に達していました。表題作は1963年にアメリカのSF誌に英訳されて載り、のちにユーゴスラビアやインドにも紹介されています。

批評家の大森望は、表題作を日本SF史上もっとも有名な短編だろうと評しています。手塚治虫の漫画『W3』の登場人物の名前もこの作品にちなんでおり、NHKではCGアニメやドラマにもなりました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

表題作は、客の言葉を繰り返すだけのボッコちゃんに本気で恋をした男性客の、報われることのない絶望的な恋の物語です。どれほど思いを伝えても、ボッコちゃんは彼の言葉をそのまま返すことしかできません。

「おーい でてこーい」では、利権屋が穴を手に入れて「穴埋め会社」を作り、原子炉のかすや機密書類、伝染病の実験動物、都会の汚物まで、あらゆるものを穴に捨てさせます。都会はきれいになり、空は青さを取り戻し、人々はその空に向かって高いビルを建てていきます。ある日、建設中のビルの鉄骨の上で休んでいた作業員は、空の上から「おーい でてこーい」という声を聞きます。気のせいだと思った彼のそばを、小石がひとつ落ちていきます。

よくある疑問

『ボッコちゃん』はどんな本?

星新一が自分で選んだショートショート50編を収めた短編集です。表題作は、バーで働く美しいロボットとそれに恋をする客の話です。

ショートショートとは?

短編よりもさらに短い、掌編小説のことです。星新一は膨大な数のショートショートを書き、そのどれもが質の高いことから「ショートショートの神様」と呼ばれています。

なぜ最初は『人造美人』という題だったの?

表題作を含む短編集は『ボッコちゃん』の題で出る予定でしたが、1960年にダッコちゃん人形が大流行しました。便乗した安っぽい本と思われるのを星が心配し、『人造美人』の題で出しました。ブームが去ったあと、新潮文庫に入るときに本来の題に戻されています。

教科書に載っている話は入っている?

「おーい でてこーい」はこの短編集に収められています。この作品は英訳されて英語の教科書にも載りました。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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