日本沈没

日本沈没小松左京
発表
1973年(昭和48年)
初出
光文社カッパ・ノベルスから書き下ろしで上下2巻同時刊行
形式・長さ
小説・長編
手ごわさ
ふつう

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ひとことで言うと

地殻の異変によって日本列島が海に沈むという危機を前に、科学者と政府、そして一人ひとりの日本人がどう動くかを描いた長編SFです。小松左京が9年がかりで書き上げ、上下巻あわせて385万部の大ベストセラーになりました。国を失うとはどういうことかを、正面から問いかけます。

こんな人に

  • 災害や危機に人と国家がどう向き合うかを考えたい人に
  • 科学的な理屈が積み上がっていく物語が好きな人に
  • 大勢の人物が動く群像劇を読みたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

197X年の夏、小笠原諸島の北にある無名の小島が、一夜にして海に沈みます。地球物理学者の田所雄介博士は、深海調査艇「わだつみ」の操艇者・小野寺俊夫らと日本海溝に潜り、海底を走る奇妙な亀裂と激しい泥の流れを見つけます。

まもなく伊豆半島の近くで地震が起き、天城山が噴火します。政府が開いた地震学者との懇談会に招かれた田所は、日本がなくなってしまうかもしれないと口にしますが、学者仲間に笑われるだけでした。

ところが、政財界を裏で動かす100歳の渡老人だけは、田所の説に関心を持ちます。渡は首相を呼び出し、日本列島の異変を極秘に調べる「D計画」を立ち上げさせます。田所、小野寺、海洋地質学者の幸長、情報科学者の中田らが集められ、調査が始まります。

主な登場人物

小野寺俊夫
深海潜水艇の操艇者。30代で独身。出世に興味がなく、海が好きで潜っている。
田所雄介
地球物理学者で「田所博士」と呼ばれる。学界では嫌われ者だが、海外での評価は高い。
幸長
大学の助教授で海洋地質学者。田所の右腕で、常識人として周りを気づかう。
渡老人
「箱根の老人」と呼ばれる100歳の黒幕。政官財を裏で動かし、D計画を支える。
中田一成
情報科学者で幸長の大学時代からの友人。独自の確率論で知られるD計画の一員。
首相
渡老人の力で首相になった60代の政治家。作中ではほぼ「首相」とだけ呼ばれる。
阿部玲子
ヒロインの一人。大手財閥の令嬢で、小野寺と見合いをさせられる。

見どころ・おもしろいところ

  1. 論文並みの地球科学

    日本を沈める理屈には、当時広まり始めていたプレート・テクトニクスの考えが使われています。作中の解説は、修士論文に相当すると言われたほどの密度です。この作品が、プレート・テクトニクスを多くの人に知らせる役目も果たしました。

  2. 国を失う民族というテーマ

    小松がもともと描きたかったのは、日本人が国を失い放浪の民になったらどうなるかという問いでした。列島の沈没はそのための舞台であり、地球物理学への関心は後からわいたものだと言われています。海外への脱出を考える場面に、その問いが色濃く出ています。

  3. 政治と科学の駆け引き

    確かな証拠がそろわないまま、科学者は危険を訴え、政府は国民に知らせるかどうかで悩みます。極秘のD計画が国家規模の計画に膨らんでいく過程は、政治小説のような緊張があります。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

主人公が章ごとに変わる

この作品は大勢の人物が動く群像劇で、章によって中心になる人物が変わります。小野寺と田所の二人を軸に、その周りに政治家や学者が集まる構図だと押さえておくと迷いません。

科学の説明は流してもよい

地殻やマントルの動きについての説明が長く続く場面があります。細部がわからなくても、何が起きつつあるかだけをつかめば、物語は十分に追えます。

昔の近未来として読む

舞台は執筆当時から見た近い未来で、まだなかった空港やトンネル、リニア新幹線の工事が描かれる一方、新幹線のビュフェなど懐かしい描写もあります。1970年代に想像された未来として読むと、ずれも楽しめます。

高度成長の終わりに出た警告

小松左京は1964年に執筆を始め、9年をかけてこの作品を完成させました。当初は何巻にもなる予定でしたが、出版社の求めで上下2巻に縮められています。題は小松自身は「日本滅亡」と考えていましたが、担当編集者の意見で『日本沈没』になりました。

刊行された1973年は、大阪万博に象徴される明るい未来への期待が終わり、オイルショックや激しい物価の上昇で社会が揺れていた年でした。関東大震災から50年の節目でもあり、作品は大きな災害への不安を呼び起こすきっかけにもなりました。

SFを広く届けた大ベストセラー

初版は上下巻3万部ずつでしたが、版を重ねて計385万部に伸び、「空前の大ベストセラー」と評されました。1974年には日本推理作家協会賞と星雲賞を受けています。一部の愛好家のものだったSFが、一般の読者に広まるきっかけになったとされています。

1973年と2006年に映画になり、テレビドラマ、ラジオドラマ、漫画、アニメにもなりました。アメリカでは1976年に3分の1ほどの抄訳が『JAPAN SINKS』の題で出ています。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

D計画の調査は、日本列島の近くでマントルの流れに急な異変が起きていて、最悪の場合2年以内に陸地のほとんどが海に沈むという結論に達します。京都、続いて東京が巨大地震に襲われ、富士火山帯の火山も次々に噴火します。田所は国民の反応を見るためにわざと情報を週刊誌とテレビにもらし、計画を去ります。

やがて沈没が10か月以内に迫ることがわかり、首相は国会で危機を公表します。国民を国外へ逃がすD-2計画が死に物狂いで進められ、日本人は続々と海外へ避難しますが、あえて国に残り列島と運命を共にする道を選ぶ人もいました。日本列島は四国から次々に海に沈み、最後まで残った北関東が大爆発を起こして、完全に消えます。

よくある疑問

『日本沈没』はどんな話?

地殻の異変で日本列島が海に沈むと知った科学者や政府が、国民を救うために奔走する話です。

本当に日本列島は沈没する?

現実には、プレートの動きが変わらない限り日本列島が沈むことはありません。作者の小松もそれを承知しており、作品は何十億年に一度の天変地異が今起きたらという仮定の話です。

続編はある?

下巻の最後には「第1部・完」と記され、世界に散った日本人を描く第二部が構想されていました。長く書かれませんでしたが、2006年に谷甲州との共著で『日本沈没 第二部』が出ています。

映画やドラマと原作は同じ話?

映画やドラマは何度も作られ、それぞれ設定が違います。たとえば2006年の映画では、時代設定が2007年に変わり、日本は最終的に沈没しない結末になっています。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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