時をかける少女

時をかける少女筒井康隆
発表
1967年(昭和42年)
初出
学習研究社の学年誌『中学三年コース』1965年11月号から『高1コース』1966年5月号まで7回連載。1967年に盛光社「ジュニアSF」シリーズの一冊として刊行
形式・長さ
小説・中編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

放課後の理科実験室でラベンダーの香りをかいだ中学3年生の芳山和子が、時間をさかのぼる力を身につけてしまう物語です。同じ一日をもう一度生きることになった少女が、二人の同級生と一緒に、その力の正体を探っていきます。何度も映画やドラマになってきた、時間旅行と青春を重ねた中編です。

こんな人に

  • 時間を巻き戻せたらと考えたことがある人に
  • 短い時間で読める、すっきりとしたSFを探している人に
  • アニメや映画で知った物語の原点にふれたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

中学3年生の芳山和子は、同級生の深町一夫、浅倉吾朗と一緒に理科室の掃除をしていました。ところが隣の実験室でラベンダーの香りをかいだ和子は、その場で気を失ってしまいます。

それから数日のうちに、和子のまわりで出来事が続きます。真夜中の地震で、吾朗の家の隣で火事が起こります。翌朝、吾朗と一緒に交通事故に巻きこまれそうになった瞬間、和子は前の日の朝に戻っていました。

同じ一日をもう一度過ごした和子は、一夫と吾朗にこの不思議な体験を打ち明けます。初めは信じなかった二人も、和子が地震と火事を言い当てたことで話を受け入れます。三人から相談を受けた理科の福島先生は、和子に起きていることに名前をつけ、真相を知るための手がかりを示します。

主な登場人物

芳山和子
主人公の中学3年生。やさしく面倒見がよい少女で、突然時間をさかのぼる力を持つ。
深町一夫
和子の同級生。背が高くやせていて、ぼんやりして見えるが落ち着いて頭がよい。
浅倉吾朗
和子の同級生。気が弱くそそっかしいが、かっとなりやすい。家は荒物屋。
福島先生
和子たちの担任で理科の先生。和子の不思議な体験を聞き、相談に乗る。
神谷真理子
教室で和子の隣の席になることが多い同級生。和子と男子二人の仲を気にしている。

見どころ・おもしろいところ

  1. 同じ一日をやり直す

    和子は、すでに一度過ごした日をもう一度生きることになります。地震も火事も知っている彼女だけが、周りと違う時間を抱えて動くことになります。後のハリウッド映画にも先がけた、同じ時間を繰り返す物語の早い例ともいわれます。

  2. 宇宙ではなく教室の時間旅行

    それまでの時間旅行の物語は、遠い時代や宇宙へ出かけるものが多くありました。この作品では、時間を移るのは数日前の学校と町のなかだけです。大きな冒険の代わりに、思春期の少女の心の揺れが中心に置かれています。

  3. 謎を解くミステリーの味

    和子は、自分の身に何が起きたのかを確かめるため、あの日の実験室に誰がいたのかを探っていきます。実験室でかいだラベンダーの香りという小さな手がかりが、謎解きの入り口になっています。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

映像作品と主人公が違う

2006年のアニメ映画の主人公は紺野真琴で、和子の姪という別の設定です。原作の主人公は芳山和子ひとりなので、アニメの印象で読むと人物や展開の違いに戸惑うかもしれません。

日付を追いながら読む

和子は過去へ何度か跳ぶので、いまが何日の何時なのかがわかりにくくなります。地震と火事の夜、事故の朝を目印にして、その前か後かを意識すると混乱しません。

中学生向けの学年誌に連載

この作品は、学習研究社の学年誌『中学三年コース』に連載が始まり、『高1コース』に移って完結しました。単行本は1967年、福島正実が編集した「ジュニアSF」シリーズの一冊として出ています。読者と同じ年ごろの中学生を主人公にした、少年少女向けの小説です。

筒井康隆の作品のなかでは、珍しく正統派の青春小説に近い一作とされています。登場人物の深町、浅倉、福島、神谷という姓は、翻訳家の深町眞理子や浅倉久志など、当時のSFにかかわった人たちから取られました。

繰り返し映像になった物語

1972年にNHKの「少年ドラマシリーズ」の第一弾として『タイム・トラベラー』の題でドラマになり、これが最初の映像化でした。1983年には大林宣彦監督、原田知世主演で映画になり、松任谷由実が作った主題歌も知られています。

2006年には細田守監督がアニメ映画にし、原作の後日談にあたる新しい物語を描きました。何度も映像化されて稼いでくれることから、筒井はこの作品を「孝行娘」と呼ぶことがあります。実写映画、ドラマ、舞台、漫画と形を変えながら、世代ごとに新しい読者や観客を得てきました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

時間を自分の意思で跳べるようになった和子は、四日前の実験室に戻り、そこに現れる人物を待ちます。現れたのは深町一夫でした。一夫は本名をケン・ソゴルといい、西暦2660年から来た未来人でした。未来では採れなくなったラベンダーから時間を跳ぶ薬を作るためにこの時代に来ており、和子たちが持つ一夫との思い出は、催眠術で植えつけたものだと明かします。

実際に一緒に過ごしたのは一か月ほどでしたが、その間に一夫は和子を好きになっていました。薬を完成させた一夫は、いつか別の人間として和子の前に現れると約束して未来へ帰ります。秘密を守るため、和子たちの記憶から一夫は消されますが、和子は心の底で、約束をした誰かを待ち続けます。

よくある疑問

『時をかける少女』はどんな話?

ラベンダーの香りをきっかけに時間をさかのぼる力を得た中学生の少女が、その力の正体を探っていく話です。

アニメ映画と原作は同じ話?

2006年の細田守監督のアニメ映画は、原作の約20年後を舞台にした新しい物語です。主人公は和子の姪の紺野真琴で、筒井康隆はこの作品を本当の意味での二代目と評しています。

実写映画の主人公は和子?

1983年の大林宣彦監督の映画は、原田知世が主演した作品です。2010年の谷口正晃監督の映画では、主人公は和子の娘という設定に変わっています。

どのくらいの長さ?

中編小説で、学年誌に7回に分けて連載されました。文庫では、ほかの短編と一緒に収められている版もあります。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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