モンテ・クリスト伯

モンテ・クリスト伯デュマ
原題
Le Comte de Monte-Cristo
発表
1844年〜1846年
初出
パリの新聞「ジュルナル・デ・デバ」に連載。あわせて全18巻の本として刊行
形式・長さ
小説・大長編
手ごわさ
すぐ読める

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ひとことで言うと

婚約披露の席で無実の罪で捕らえられた若い船乗りが、14年に及ぶ獄中生活を経て、謎の大富豪モンテ・クリスト伯爵としてパリの社交界に現れます。自分を陥れた三人の男に、富と知恵を使って一人ずつ迫っていく壮大な復讐の物語です。日本では『巌窟王』の題でも知られています。

こんな人に

  • 長い物語に浸って、何日もかけて読みたい人に
  • 張りめぐらせた伏線が一つずつつながる話が好きな人に
  • 正しい復讐とは何かを考えてみたい人に

あらすじ(ネタバレなし)

1815年2月、ナポレオンがエルバ島に流されていた頃のマルセイユ。若い船乗りエドモン・ダンテスは、船主のモレルから船長への昇格を約束され、婚約者メルセデスとの結婚も間近に控えていました。ところが、その出世を妬む会計士ダングラールと、メルセデスに恋する漁師フェルナンが、ナポレオン派の密使だという嘘の密告をします。

ダンテスは婚約披露の宴の最中に逮捕されます。取り調べた検事代理ヴィルフォールは一度は無実を認めかけますが、ある手紙の宛先を聞いて態度を変え、ダンテスを裁判もなしにマルセイユ沖の牢獄シャトー・ディフへ送ってしまいます。

暗い土牢で生きる気力を失いかけたダンテスは、隣の独房から穴を掘ってきたファリア神父と出会います。神父の推理によって、自分が誰にどうして陥れられたのかを知ったダンテスは、復讐を心に誓います。そして長い年月ののち、パリの社交界に謎めいた大富豪が姿を現します。

主な登場人物

エドモン・ダンテス
マルセイユの船乗りで主人公。のちに「モンテ・クリスト伯爵」など多くの偽名を使い分ける。
メルセデス
ダンテスの婚約者。ダンテスが投獄されたあと、フェルナンと結婚する。
ダングラール
モレル商会の会計士。ダンテスの出世を妬んで嘘の密告状を書く。のちに大銀行家になる。
フェルナン・モンデゴ
メルセデスの従兄弟の漁師。のちに軍で出世し「モルセール伯爵」と呼ばれる。
ヴィルフォール
マルセイユの検事代理。保身のためダンテスを牢へ送る。父はナポレオン派のノワルティエ。
ファリア神父
シャトー・ディフに囚われたイタリアの老神父。ダンテスに学問と財宝の在り処を授ける。
モレル
ダンテスの雇い主の船主。投獄されたダンテスを救おうと奔走した数少ない恩人。

見どころ・おもしろいところ

  1. 獄中で育つもう一人の自分

    無学な船乗りだったダンテスは、獄中でファリア神父から言葉や学問を教わり、別人のように変わっていきます。神父との出会いが物語の向きを決めるので、牢獄の場面は前置きではなく物語の土台です。

  2. 名前を変えて近づく伯爵

    伯爵は司祭、イギリス人の商社員、船乗りシンドバッドなど、場面ごとに別の名前と顔を使い分けます。誰がダンテスなのかを読者だけが知っているので、仇敵たちとの会話の一言一言に緊張が走ります。

  3. 四つの家族が絡み合う

    パリの場面では、モルセール家、ダングラール家、ヴィルフォール家、モレル家の親と子の二世代が登場します。親の世代の罪が子どもたちの恋や縁談に影を落とし、別々に見えた出来事が少しずつ一つにつながっていきます。

つまずきやすい所と、読み通すコツ

パリに入ると人物が急増

伯爵がローマからパリへ移ると、四つの家族とその友人たちが一度に登場します。家族ごとにまとめて覚えると整理しやすく、上の人物表の名前を軸にすれば迷いにくくなります。

途中で9年が飛ぶ

前半のマルセイユの話のあと、物語は9年後の1838年のローマへ一気に飛びます。主人公の名前も見た目も変わっているので、伯爵がダンテスだと思って読み進めると戸惑いません。

大長編は区切って読む

新聞に1年半近く連載された作品で、本でも何冊にも分かれる長さです。投獄、脱獄と財宝、パリでの復讐という大きな流れを三つに分けて区切りごとに休むと、息切れせずに読み通せます。

新聞連載と実在の事件

この小説は1844年8月から1846年1月まで、パリの新聞「ジュルナル・デ・デバ」に18回に分けて連載されました。英語版の資料では、デュマの協力者オーギュスト・マケが共同で関わったと記されています。同じ時期にデュマは『三銃士』も発表しており、ともに代表作として並び称されています。

着想のもとは、パリ警察の記録係ジャック・プシェがまとめた「復讐とダイヤモンド」という犯罪記録です。デュマは1841年ごろ、ナポレオンの甥と小舟でモンテクリスト島を回った際、この島の名を題に入れた小説を書くと約束したとも書き残しています。物語の背景には、ナポレオンの退位から王政復古へと揺れたフランスの政治があります。

ヨーロッパ中が夢中になった連載

連載当時は、人々が朝食の席でも街角でもこの話ばかりしていたと伝えられています。批評家のジョージ・セインツベリは、発表からしばらくはヨーロッパで最も人気のある本だったと述べています。

ほぼすべての近代語に訳され、映画になった数は少なくとも29本とされます。キューバの葉巻の銘柄「モンテクリスト」もこの小説にちなむと言われます。日本では黒岩涙香の翻案『巌窟王』が1901年から萬朝報に連載され、のちに原作どおりの題で訳されるようになりました。

結末まで知りたい人へ

ネタバレを含むあらすじを開く

伯爵はフェルナンがギリシャで恩人アリ・パシャを裏切った過去を新聞に流させ、アリの娘エデが貴族院で証言します。失脚したフェルナンは妻子にも見捨てられ、伯爵の正体を知って自殺します。ヴィルフォールの家では後妻エロイーズが財産目当ての毒殺を重ね、さらに法廷で、かつて生き埋めにしたはずの不義の子ベネデットに過去を暴かれます。妻は息子を道連れに命を絶ち、伯爵に正体を明かされたヴィルフォールは正気を失います。ダングラールは財産を失って逃げた先で山賊に捕らえられ、悔い改めたところで許されます。

子どもまで死なせたことに迷いを覚えた伯爵は、恩人モレルの息子マクシミリアンと、死を装わせて救ったヴァランティーヌを再会させ、財産の一部を残します。そしてエデとともに東方へ旅立ち、物語は「待て、しかして希望せよ」という言葉で終わります。

よくある疑問

『モンテ・クリスト伯』はどんな話?

無実の罪で14年間投獄された船乗りが、莫大な財宝を手に入れて伯爵となり、自分を陥れた人々に復讐する話です。

『巌窟王』と同じ作品?

同じ作品です。明治時代に黒岩涙香が人名を日本風に変えて翻案し、『巌窟王』の題で新聞に連載しました。筋は原作とほぼ同じで、日本では長くこの題で親しまれてきました。

実話がもとになっている?

もとになった実在の事件があります。靴職人ピエール・ピコーが友人たちの嘘の密告で囚われ、のちに彼らに復讐したという話が、パリ警察の記録集に載っていました。デュマはこれを大きくふくらませて書いています。

どのくらいの長さ?

大長編です。新聞に1844年から1846年にかけて連載され、最初の単行本は全18巻でした。日本語訳も何冊かに分けて出されるのが普通です。

出典

あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。

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