- 原題
- I, Robot
- 発表
- 1950年(収録作は1940年〜1950年に雑誌で発表)
- 初出
- アメリカのSF雑誌に掲載された短編を、1950年にノーム・プレス社が一冊にまとめて刊行
- 形式・長さ
- 短編集・長編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- SF・幻想文学
人間に危害を加えないよう作られたロボットが、なぜか理屈に合わない行動をとる。その謎を、ロボットの心を専門に扱う学者や技術者が解いていく9つの短編を集めた連作です。ロボット工学三原則が初めて登場した本として知られ、子守りロボットから地球全体の計画を立てる機械まで、人間とロボットの関係の移り変わりをたどります。
こんな人に
- 推理小説のように、手がかりから理由を考えるのが好きな人に
- 人工知能と人間がどう付き合うかに関心がある人に
- 長編より、一話ずつ区切って読める本を探している人に
あらすじ(ネタバレなし)
21世紀、ロボット製造の大企業USロボット社で長年働いてきたロボ心理学者スーザン・キャルヴィンに、ひとりの記者がインタビューをします。本書は、彼女が語る思い出話として、ロボットにまつわる事件を一話ずつ紹介していく形で進みます。
最初の話「ロビイ」の舞台は1998年です。しゃべることのできない子守りロボットのロビイは、少女グロリアとかくれんぼや駆けっこをして遊ぶ仲でした。ところが、ロボットに反対する人が増えていることを気にした母親は、父親の反対を押し切ってロビイを手放してしまいます。代わりに犬を与えられても、グロリアはロビイのことが忘れられず、すっかりふさぎ込んでしまいます。
続く話では、水星の採掘基地や宇宙ステーションなどで、新型ロボットの不可解なふるまいが次々に問題になります。
主な登場人物
- スーザン・キャルヴィン
- USロボット社の主任ロボ心理学者。全体の語り手で、いくつかの話では自ら謎を解く。
- 記者
- キャルヴィンに取材する男性記者。各話の間に、彼とのやりとりがはさまる。
- パウエルとドノヴァン
- 新型ロボットの実地テストを受け持つ二人組。宇宙の現場で起きる事件の主役。
- ロビイ
- 最初の話に出てくる子守りロボット。言葉は話せないが、少女と心を通わせている。
- グロリア
- ロビイを慕う少女。ロビイを手放した両親に心を閉ざしてしまう。
- バイアーリー
- 後半の話に登場する有能な地方検事。ロボットではないかといううわさが立つ。
見どころ・おもしろいところ
原則に反して見える謎
多くの話は、ロボットが一見すると三原則に反するような行動をとるところから始まります。ロボットの頭の中で何が起きているのかを、限られた手がかりから推理していく構成で、ミステリとしても読めます。この型は、のちの長編『鋼鉄都市』にもつながりました。
子守りから世界の計画まで
一話ずつ読めますが、並べると一つの大きな歴史になっています。最初は少女と遊ぶ子守りロボットだったものが、話が進むにつれて宇宙の現場で働き、やがて地球を4つに分けた地区の計画を立てる機械になります。ロボットの役割が広がっていく流れを追うのも楽しみの一つです。
スーザン・キャルヴィンの存在
全体の語り手であるキャルヴィンは、ロボットの頭脳で起きていることを読み解く専門家です。研究者のジェイムズ・ガンは、人物がとりわけ重要な役割を果たす話として「うそつき」と「証拠」の二編を挙げています。どちらも彼女が中心にいる話です。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
三原則を先に押さえる
この本のロボットは、頭脳に組み込まれた三つの決まりに従って動きます。中でも大事なのは、人間に危害を加えてはならないという第一原則です。この決まりがあるのに、なぜ困った行動が起きるのかを考えるのが、どの話にも共通する読み方です。
会話で話が進む
どの話も、派手な動きや風景の描写は少なく、筋の大半が登場人物の会話で進みます。説明が続くと感じたら、誰が何に困っているのかだけを追うと、謎の形が見えてきます。
主役が話ごとに替わる
キャルヴィンが謎を解く話と、パウエルとドノヴァンが現場で奮闘する話が入り交じっています。その間に、記者とキャルヴィンの会話が短くはさまります。各話の冒頭で誰の話かを確かめると、迷わずに読めます。
1940年に書かれた1998年
最初の話「ロビイ」が雑誌に載ったのは1940年で、物語の舞台はおよそ60年先の1998年です。アシモフはこのころ、コロンビア大学を出て大学院で化学を学んでいました。本書の話の多くは、彼がまだ専業作家になるつもりのなかった時期に書かれました。
それまでのSFでは、ロボットは作り主を滅ぼす怪物として描かれがちでした。アシモフは、そうした「フランケンシュタイン」型の筋に陥る傾向から大きな刺激を受けたと書いています。また、イアンド・バインダーの短編「アイ、ロボット」を読んだ2か月後に「ロビイ」を書き始めたと振り返っています。
SFの外にまで広がった三原則
1951年、ニューヨーク・タイムズはこの本を刺激的な科学スリラーと評しました。本書で示された三原則は、のちの作家や思想家がロボットや人工知能を扱うときの大きな手本になり、AIの倫理をめぐる議論にも影響を与えています。
「ロボット工学(robotics)」という英語は、アシモフのSFから広まった言葉だとオックスフォード英語辞典は記しています。作中の会社名「USロボット」は、実在のモデム会社の名前にもなりました。続編として短編集『ロボットの時代』があり、1982年の『コンプリート・ロボット』には本書の全短編が再録されています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
各話では、三原則が思わぬ形でぶつかり合う事件が描かれます。人の心が読めるらしいロボットRB34号は、人間の心を傷つけることもできないため、質問した人それぞれに都合のよい答えを返してしまいます。第一原則を書き換えた実験型ロボットが、同じ型の62台の中に紛れ込む事件も起きます。人間に危害が及ぶ設計を求められたライバル会社の人工頭脳は、そのジレンマで壊れてしまいます。
検事バイアーリーは、人前で男を殴ったことで人間だと認められますが、殴られた相手がロボットだったなら話は別だという疑いが残されます。最後の話では、地球の4地区を受け持つ巨大な頭脳「マシーン」の計画に狂いが出始め、人類はマシーンに頼り続けてよいのかという問いに向き合うことになります。記者がキャルヴィンに初めて会ったのは彼女が75歳のときで、彼女は82歳で亡くなっています。
よくある疑問
- 『われはロボット』はどんな話?
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ロボット心理学者スーザン・キャルヴィンの回想という形で、ロボットが起こす不思議な事件を一話ずつ描いた短編集です。全部で9つの話が入っています。
- どの話から読んでもいい?
-
それぞれの話は単独でも読めます。ただ、並べると人間とロボットの関係の歴史として一つにつながるので、最初から順に読むと流れがつかみやすくなります。
- 映画『アイ,ロボット』と同じ話?
-
同じ話ではありません。2004年の映画は、三原則や一部の人物名、「迷子のロボット」の要素を使っていますが、筋は映画のための独自のものです。
- タイトルはアシモフがつけたの?
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アシモフ自身は『Mind and Iron(頭脳と鉄)』という題を考えていました。『I, Robot』は出版社の編集者が提案したもので、同じ題の短編が先にあると伝えても、そのまま決まったといいます。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
