- 原題
- A Christmas Carol
- 発表
- 1843年
- 初出
- 1843年12月19日、ロンドンのチャップマン・アンド・ホールから刊行
- 形式・長さ
- 小説・中編
- 手ごわさ
- すぐ読める
- 書棚
- ヨーロッパの文学
クリスマスを嫌うロンドンの守銭奴スクルージのもとに、ある晩、亡くなった共同経営者の幽霊が現れます。続いて過去・現在・未来の三人の精霊が順に訪れ、スクルージは忘れていた自分の姿と、このままでは迎える行く末を見せられます。一晩で読み切れる長さの、幽霊が出てくるクリスマスの物語です。
こんな人に
- 人は変われるのかを、物語で確かめたい人に
- 冬の夜に、短くて筋のはっきりした話を読みたい人に
- 映画や舞台で筋は知っているが、原作はまだという人に
あらすじ(ネタバレなし)
舞台はロンドン、寒いクリスマス・イヴの夕方です。年老いた商人エベネーザ・スクルージは金を貯めることしか頭になく、クリスマスを浮かれた人々の愚かな騒ぎだと思っています。貧しい人への寄付を頼みに来た紳士たちを追い返し、夕食に誘いに来た甥のフレッドも冷たくあしらいます。安い給金で雇っている事務員のボブ・クラチットには、しぶしぶ翌日の休みを認めます。
その夜、帰宅したスクルージの前に、7年前に死んだ共同経営者マーレイの幽霊が現れます。マーレイは生前の強欲が鍛えた重い鎖を引きずっており、同じ運命を避ける機会はこれが最後だと告げます。そして、これから三人の精霊がスクルージを訪ねると言い残して消えていきます。スクルージは、精霊に連れられて自分の過去や他人の家のクリスマスをのぞくことになります。
主な登場人物
- エベネーザ・スクルージ
- ロンドンの年老いた商人で、筋金入りの守銭奴。物語はすべて彼を中心に進む。
- ジェイコブ・マーレイ
- 7年前のクリスマス・イヴに死んだ共同経営者。鎖につながれた幽霊として現れる。
- ボブ・クラチット
- スクルージの事務員。薄給で働かされているが、家では大家族と明るく暮らしている。
- ティム
- クラチット家の末の息子。体が弱く、病を抱えながらも明るい少年。
- フレッド
- スクルージの甥で、亡くなった妹ファンの息子。クリスマスの夕食に伯父を誘いに来る。
- 三人の精霊
- 過去、現在、未来のクリスマスを見せる精霊。姿も話し方もそれぞれ違う。
見どころ・おもしろいところ
三人の精霊が見せるもの
過去の精霊は少年時代と若い日の恋を、現在の精霊はクラチット家や甥の家の食卓を、未来の精霊はある男の死の場面を見せます。時間の順に三つの場面を巡るので、筋は単純で追いやすく、精霊ごとに空気ががらりと変わります。
クラチット家の食卓
現在の精霊の章では、貧しいながら明るいクラチット家のクリスマスの食事が長く描かれます。スクルージがそれを外からのぞき、ティムの体を気にかけはじめるところに、彼の変化の兆しが見えます。
「無知」と「貧困」の子ども
現在の精霊は去りぎわに、衣の下から痩せこけた二人の子どもを見せます。その名は「無知」と「欠乏(貧困)」です。当時のイギリスの貧しい子どもへのディケンズの怒りが、ここにはっきり込められています。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
章の名前は「ステイヴ」
全体は5つの章に分かれ、ディケンズは章を楽譜の譜表にあたる「ステイヴ」と名づけました。題の「キャロル」に合わせた遊びなので、訳によって「第一節」などと書かれていても同じ区切りだと思えば大丈夫です。
過去の場面は飛び飛び
過去の精霊の章では、寄宿学校の少年時代、奉公先の舞踏会、恋人との別れと、場面が説明なしに次々と変わります。場面が変わるたびに年齢が進んでいると意識すると、スクルージの来し方がつながって見えます。
6週間で書かれた貧しい子どもの物語
1843年の初め、ディケンズはコーンウォールの錫鉱山で過酷に働く子どもを見て、強い怒りを覚えました。同じ年に出た児童労働の議会報告書にも衝撃を受け、はじめは貧しい子どものための政治的な小冊子を出すつもりでした。しかし、論文より心に届く物語のほうが広く伝わると考えを変え、クリスマスの物語を書くことにします。
当時のディケンズは連載中の『マーティン・チャズルウィット』の売れ行きが悪く、お金にも困っていました。10月に書きはじめた原稿は、わずか6週間ほどで完成しています。ロンドンの夜道を長い距離歩きながら、頭の中で物語を組み立てたと伝えられています。出版費用は自分で負担し、ジョン・リーチの彩色挿絵入りで12月19日に刊行されました。
初版はイヴまでに売り切れた
初版6,000部はクリスマス・イヴまでに売り切れ、翌1844年の終わりまでにさらに11の版が出ました。作家のサッカレーは、この本を国民への恩恵だと評しています。ただし豪華な装丁にこだわった分、ディケンズ自身の利益は期待よりずっと少なかったとされます。
刊行の翌年にはロンドンで舞台化が相次ぎ、ディケンズ自身も晩年まで127回にわたって朗読会を開きました。映画やテレビへの翻案はディケンズ作品の中で最も多いとされます。「スクルージ」という名は英語で守銭奴を指す言葉にもなり、オックスフォード英語辞典に載っています。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
未来の精霊は、誰にも悲しまれずに死んだ男の姿を見せます。家の品は雑役婦や葬儀屋に盗まれて売り払われ、遺体は誰にも見守られていません。さらにクラチット家では、ティムが亡くなり家族が悲しみに暮れていました。最後に連れて行かれた荒れた墓の墓石には、スクルージ自身の名が刻まれていました。
クリスマスの朝に目覚めたスクルージは、すっかり変わっていました。前日に断った慈善に多額の寄付を申し出て、クラチット家には名を伏せて大きな七面鳥を届け、午後には甥の家の夕食会に出かけます。翌日にはボブの給金を上げ、ティムにとって父親のような存在になりました。人々は彼を、クリスマスの祝い方を最もよく知る人と言うようになります。
よくある疑問
- 『クリスマス・キャロル』はどんな話?
-
強欲な老人スクルージが、クリスマス・イヴの夜に三人の精霊から過去・現在・未来を見せられ、心を入れかえる話です。
- どのくらいの長さ?
-
中編小説で、5つの章(ステイヴ)でできています。ディケンズの長編と比べるとずっと短く、一晩で読み通せる長さです。
- スクルージにモデルはいる?
-
はっきりしたモデルはわかっていません。奇人として知られた国会議員ジョン・エルウィスや、「グロスターの守銭奴」と呼ばれた銀行家ジェミー・ウッドがもとになった可能性が指摘されています。
- タイトルの「キャロル」とは?
-
キャロルはクリスマスに歌われる祝い歌のことです。題に合わせて、章も歌の譜表を表す「ステイヴ」と名づけられています。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
