- 原題
- Братья Карамазовы
- 発表
- 1879年〜1880年
- 初出
- 雑誌『ロシア報知』1879年1月号〜1880年11月号に連載。1880年に単行本
- 形式・長さ
- 小説・大長編
- 手ごわさ
- 手ごわい
- 書棚
- ロシア文学
強欲で好色な父と、性格のまるで違う三人の息子が、遺産と一人の女性をめぐって激しくぶつかり合う話です。家族の争いはやがて事件に発展し、兄弟はそれぞれの立場で向き合うことになります。神と信仰をめぐる議論、恋愛、裁判までを詰め込んだドストエフスキー最後の長編です。
こんな人に
- 家族だからこそこじれる関係に覚えがある人に
- 神はいるのかという問いを一度は真剣に考えた人に
- 思想の対話も事件の謎解きも一冊で味わいたい人に
あらすじ(ネタバレなし)
ロシアのある地方の町。成り上がりの地主フョードル・カラマーゾフは、金と女にだらしなく、三人の息子をまともに育ててきませんでした。長男ドミートリイは激しやすい退役軍人、次男イヴァンは無神論を説く知識人、三男アレクセイ(アリョーシャ)は修道院で暮らす心優しい青年です。
ドミートリイは、母の遺産を父がごまかしていると信じ、さらに町の美しい女性グルーシェンカをめぐって父と張り合っています。一方で彼には婚約者カチェリーナがいて、その彼女を次男イヴァンが愛しています。親子と兄弟の間に恋と金の対立が幾重にも重なる状態です。
争いを収めようと、修道院の長老ゾシマの前で一家が顔を合わせますが、父の悪ふざけで会合は物別れに終わります。ドミートリイは父を殺すとまで口にし、アリョーシャは兄たちと父の間を行き来して和解の道を探します。そこへ料理人スメルジャコフの存在も絡み、家族の争いは取り返しのつかない方向へ進んでいきます。
主な登場人物
- フョードル
- 一家の父。フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフ。強欲で好色な地主で、息子たちを放っておいた。
- ドミートリイ
- 長男。ドミートリイ・フョードロウィチ。愛称ミーチャ、ミーチカ。28歳の退役軍人で、直情的。
- イヴァン
- 次男。イヴァン・フョードロウィチ。愛称ワーニャ。24歳の知識人で、無神論を唱える。
- アリョーシャ
- 三男アレクセイ・フョードロウィチの愛称。修道院で暮らす純朴な青年。作者の序文では主人公とされる。
- スメルジャコフ
- カラマーゾフ家の料理人。父フョードルの私生児と噂される。てんかんの持病がある。
- グルーシェンカ
- 本名アグラフェーナ・アレクサンドロヴナ・スヴェトロヴァ。父と長男が夢中になる奔放な女性。
- カチェリーナ
- ドミートリイの婚約者カチェリーナ・イワーノヴナ。愛称カーチャ。誇り高い令嬢で、イヴァンに愛されている。
見どころ・おもしろいところ
物語の中の物語「大審問官」
イヴァンがアリョーシャに語って聞かせる自作の物語詩が「大審問官」です。スペインの異端審問の時代に現れたイエスを思わせる人物を、老いた審問官が問い詰めます。単独で読まれ論じられることも多い章で、作品の思想的な山場の一つです。
兄弟三人の対照
情熱のドミートリイ、理性のイヴァン、信仰のアリョーシャと、三兄弟はまったく違う生き方を体現しています。同じ父の血を引く三人が、同じ出来事にどう反応するかを比べながら読むと、人物の厚みが見えてきます。
少年たちの物語
本筋と並んで、貧しい元二等大尉スネギリョフの息子イリューシャと級友たちの話が描かれます。アリョーシャは子どもたちの諍いに関わるうちに、少年たちと心を通わせていきます。重い本筋の合間に置かれたこの物語は、作品の印象を大きく左右します。
つまずきやすい所と、読み通すコツ
四部十二編とエピローグ
作品は4部(1〜3編、4〜6編、7〜9編、10〜12編)とエピローグからなります。第1部は一家の過去や人物紹介が多く、話がなかなか動きません。修道院での一家の会合あたりから流れが速くなるので、そこまでは紹介として読み進めてかまいません。
愛称で呼ばれる兄弟たち
ドミートリイは「ミーチャ」、イヴァンは「ワーニャ」、アレクセイは「アリョーシャ」と、愛称で呼ばれる場面が多くあります。三男は本文でもほぼ「アリョーシャ」と呼ばれるので、アレクセイと同じ人物だと覚えておくと迷いません。
脇道の長い章を恐れない
第6編は、ほぼ全体が長老ゾシマの生涯と教えにあてられています。本筋から離れたように感じますが、作品の信仰の主題を支える章です。筋を急ぐときは軽く読み、あとで戻ってもかまいません。
息子の死と修道院の旅
ドストエフスキーは1878年4月に本作の最初のメモを書き始めました。その翌月、3歳の息子アリョーシャがてんかんで亡くなります。作者はその名を物語の主人公に与え、息子を失った悲しみはスネギリョフとイリューシャ父子の物語にも映されているとされます。
同じ年、ドストエフスキーはオプチナ修道院を訪れ、作品の多くの着想を得ました。長老ゾシマの伝記の部分には、そこで見つけた長老レオニードの伝記が生かされています。本作は『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』に続く、後期五大長編の最後の作品です。
50回読んだ哲学者
本作は多くの思想家や作家に読み継がれてきました。哲学者ウィトゲンシュタインは第一次世界大戦の従軍中も手放さず、最低でも50回は精読したと語っています。フロイトはあらゆる小説の中で最も壮麗なものと呼び、父殺しを論じた論文を書きました。アインシュタインも、全文学の最高峰だと語っていたと伝えられます。
日本では村上春樹が、人生で巡り合った最も重要な3冊の一つに挙げています。2006年から2007年にかけては新訳が古典としては異例のベストセラーになりました。映画は1958年のリチャード・ブルックス監督版、1969年のソ連のプイリエフ監督版などがあります。
結末まで知りたい人へ
ネタバレを含むあらすじを開く
ある夜、父フョードルが殺され、現場から逃げたドミートリイが父殺しの容疑で逮捕されます。不利な証言が重なるなか、イヴァンが問い詰めると、スメルジャコフは自分が殺したと打ち明け、イヴァンの考えに背中を押されたのだと言います。イヴァンは幻覚の悪魔と対話するほど追い詰められ、その夜スメルジャコフは自殺します。
裁判でイヴァンは、犯人はスメルジャコフで、そそのかしたのは自分だと叫びますが、カチェリーナがドミートリイの書いた父を殺すという手紙を示し、形勢は逆転します。ドミートリイは有罪となり、シベリア流刑20年を言い渡されます。エピローグでは脱獄の計画が語られ、イリューシャの葬儀のあと、アリョーシャが少年たちに語りかけるところで物語は終わります。
よくある疑問
- 『カラマーゾフの兄弟』はどんな話?
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放蕩な父と三人の息子の争いが大きな事件に発展し、兄弟がそれぞれの立場で向き合う話です。信仰と無神論の議論、恋愛、裁判が一つの物語に織り込まれています。
- どのくらいの長さ?
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4部12編とエピローグからなる大長編です。雑誌『ロシア報知』に1879年から1880年まで連載されました。
- 続編があるって本当?
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作者の序文によれば、本作は二部構成の第一部で、13年後を描く第二部が構想されていました。しかし作者が亡くなったため、続編は書かれていません。
- 主人公は誰?
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作者の序文では三男アリョーシャが主人公とされています。ただし実際に書かれた作品だけを見ると、長男ドミートリイを主人公とみる意見もあります。
出典
あらすじと解説は、上の資料と作品の本文をもとに編集部が書いています。表紙の絵はこのサイトで作った装丁で、実際の本の表紙ではありません。
